ギャルゲーのはずが攻略対象外男子に好かれてます。

12月

4

 信じられない面持ちで先輩とマフラーを交互に見る俺。




「使わないと勿体ないでしょ」




 俺の反応を楽しむ先輩はやっと気付いた？と苦笑する。

 いや、だってこんな偶然ってあるんだろうか。




「そのマフラーがどうかしたのか？」

「知り合いが同じようなマフラーしてたから気になっただけ」




 訝しむ吉良に俺は態度に現れないように、大した事じゃたいと笑って首を横に振って見せた。

 俺の態度が気に入らなかったのか、吉良の眉間に険をはらむ。




「知り合いってー」

「あー、ほら2人がムダな時間とるから、予鈴ヤバイぞ」




 俺が言うが早いか予鈴のチャイムが鳴り響いた。走らないと遅刻してしまう。

 追求したい吉良の背を叩き走り出す。

 途中、雪平先輩を見やり様子を窺う俺と視線が合った先輩は口の両端は弧を描いて笑っているように見えたが、それは表現し難いものに見えた。

 どうして気づかなかったのか。

 当時の自分を思い出し申し訳なさが心の中に広がっていく。

 まさかあの時の人が先輩だったなんて。











 その日の放課後俺は先輩と話をしたくて、3年の教室に向かった。

 あのマフラーを俺に見せたという事は俺に話たいとう事だと思う。

 世間は狭いなんてよく言うが、まさかあれが雪平先輩だったとは。




「雪平は3組だぞ。廊下側の前から2番目だったかな」

「違うって、今は教卓から4番目だよ」

「わざわざ、ありがとうございます」




 皆さん村人Aとかそういう役割なんですか？

 事前に連絡はしなかったが、3年の教室棟に足を踏み入れた途端見知らぬ先輩の方々が俺を見かけては丁寧に教えてくれる。

 いい加減、愛想笑いで口元が引きつりそうなんですが。