ギャルゲーのはずが攻略対象外男子に好かれてます。

12月

3

 バスから降りても俺は考えていた。

  面倒が嫌でずっと回避していたツケがここに来て回ってきたようだ。




「凪沙さっきから黙っているけど、大丈夫か？」

「あんまり大丈夫じゃない」

「具合悪いのか？」



バシッ、




 額に伸ばされた手が弾かれた。




「おはよう蘇芳」

「お、おはようございます」




 すこぶる良い笑顔ですね、雪平先輩。黒くなければ尚更良いのに。

 吉良をフルボッコにした件は後日先輩が俺と吉良に直接謝罪してきた。渋々嫌そうにではあったが、吉良も打ち身と打撲だけだったし責任を感じていたのでそれはそこで終結した。

 あの雪平先輩が吉良に謝るなんて、多分雨塚先輩が何か言ったんじゃないかとおもう。

 俺の中ですでに雨塚先輩は裏ボス認定されている。




「いやぁ、こんな寒いのに変な虫がいたからつい払いのけてしまったよ」

「へぇ…」




 朝から頭上で俺の平和を乱すのやめてっ（泣）

 吉良も先輩も互いに威嚇しないで、登校中の皆様に朝から好奇の目で晒し者って拷問ですか！？

 俺は知り合いじゃありません。やるなら2人だけでやって下さいよ。

 じりじり2人の意識がこちらから離れている間に逃亡を試みようとする俺。

 けれど、後もう少しで2人の届かぬ範囲外まできて、2人同時に捕まる。




「ぐぇ、」




 吉良には肩を、雪平先輩には自身が巻いていたマフラーで首を。思わず変な呻き声が漏れる。

 先輩殺す気ですか！！

 肩はともかく首はヤバイからっ、俺は息苦しさから逃れるため、自分の首に巻かれた紺色のマフラーを外そうとして、



（これって…）



 手を止めた。