ギャルゲーのはずが攻略対象外男子に好かれてます。

12月

閑話休題 side雪平 去年のクリスマス①

 ーあの出会いは本当に偶然だった。

 
 来年は受験だから今のうちに遊びまくろうという友人達との待ち合わせに行くため、クリスマスのイルミネーションが煌めく街中を僕は1人歩いていた。

 浮き足立つ雰囲気の人々の流れは色鮮やかで家族や友人、恋人といった組み合わせとすれ違っていく。

 何気なく過ぎていく人の流れ。

 その中でポツンと、切り取られたように佇む少年。

 彼の姿が目に留まり足を止めたのは、ほんの好奇心。

 プレゼントが入っていると思われる袋を抱え、人混みの先を眺めている。

 待ち合わせをしているのなら、あんな目印もない道の真ん中にいるのは明らかに不自然だ。

 表情は良く見えないが決して良いものではない気がする。

 道行く人にぶつかり我に返ったのか、落とした袋を拾い上げ眺めていた方向とは違うこちら側へと歩き出す。

 俯きがちに近づいてくる少年の表情があまりに寂しそうで、無意識に僕は彼の進路方向に歩を進める。

トン、とぶつかったのは故意だった。

 しかし、前を見ていなかった少年は気付かず反射的に顔を上げ僕にすいませんと。

 黒髪の涼しげに整った容姿。彼に僕は見覚えがあった。

 入学当初、女子が美人な男子が入ってきたと色めき立っていた。珍しく副会長の雨塚も彼を気に入っていたので、何気に写真を見せて貰った事があったのだ。

 少年がそのまま立ち去ろうとした肩を僕は慌てて掴んだ。

 琥珀の瞳が寂しさで昏く染まり泣き出すんじゃないかと、放って置けなかった。

 肩を掴まれた少年は訝し気に僕を見る。

 彼は僕に向かって明らかに疑問符を表情にあらわにしているの対し、僕は内心落胆してしまった。