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12月
10
しおりを挟む終業式の前最後の日曜日。後1週間で俺はこの街からいなくなる。
明日には学校中に転校が知れ渡り、そのまま新しい場所での生活の準備のため終業式まで学校を休むことになる。
待ち合わせ場所に指定したショッピングモールの一角で、俺は窓ガラスの向こう眼下に広がる世界をぼんやり眺めていた。
エンディングは目の前。もうすぐゲームは終わる。
頭の中で、先輩が言っていた言葉を思い出す。
(…俺のしたいこと)
店の中も外もクリスマスのイルミネーションや飾りで賑わう様は、去年の苦い想いを呼び起こす。
人の心はいつかは離れていく。取り残されるのは嫌だ。
そんな惨めさに耐えられる程、俺は強くない。
(面倒な気持ちは笑って流せばいい)
ゲーム前から諦めにも似た気持ちが自分の中で燻っていた事は確かで。
大丈夫だと笑って心を誰にもここに残さないようにしたかった。
…結局はそれは徒労になってしまう。
ゆっくり目蓋を閉じ想いを馳せて再び開く。
先輩のおかげで未だ枠にかじりついていた部分は吹っ切れた。後はどうとでもなればいい。
「凪沙」
俺の姿が見えて走って来ただろう幼馴染みは息を弾ませやって来る。
(本当に犬みたい)
俺はどちらかと言えば猫派なんだけどな。
見えない尻尾をブンブン振る大型犬も嫌いではないみたいだ。
「…遅い」
「そっちが早いんだろ待ち合わせ10分前だぞ」
文句を言いつつも先に着いてたなら連絡しろと頭を小突く吉良に、俺は面倒くさいと呟けば更にもう一発小突かれる。
大袈裟に小突かれた箇所を摩り睨む俺に、綺麗な水色の瞳が柔らかく笑んだ。
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