92 / 102
番外編
2人の聖夜
しおりを挟む白い吐息が街の喧騒にかき消えていく。
沢山人が自分の目の前を通り過ぎていく様を1人眺めていると、2年を思い出し強い孤独感に苛まれてしまう。
(…早く来てくれないかな)
確認すれば待ち合わせに指定した時間まで、まだ15分程時間がある。
予想より早く用事が終わったはいいが、どこかで時間を潰すにも時間が中途半端で仕方なく待ち合わせ場所に来てしまった。
クリスマス用に着飾ったモニュメントの前には自分だけではなく、待ち人を待つ人々が集っている。
皆意中の人が来た途端幸せそうに駆け寄っていく姿見ていると、何故か不安で心が押し潰されそうな気持ちになる。
それを誤魔化すように俺はかじかんだ手に息を吹きかけ両手をさする。
来ないわけないのに、何でこんなに不安になるのか…。
(早く来いよ、バカ!!)
待ち合わせより早く来たくせに勝手に毒づくのはただのワガママだ。
今朝離れたばかりなのにあの温かさが恋しいと思ってしまう。たった1年で自分は随分甘やかされてしまったようだ。
「凪沙」
内心苦笑いを浮かべていると、息を切らし俺を甘やかした張本人がやってくる。
デジャヴを覚えるその姿に現金な俺の心の不安はあっさり何処かに消え去っていく。
「まだ時間あるんだからそんな走ってこなくていいのに」
やって来た恋人にわざとすげなく言ってやる。我ながら可愛いげのない言動だと思う。
俺に気づいて走って来てくれたのが、嬉しいくせに。
素直になれない自分が嫌になる。
自己嫌悪に沈み込みそうになるその手にふっと優しい温もりが触れた。
「ちょ、吉良」
「大丈夫大丈夫」
握られた手にここは外だと訴えたかったが、吉良は強引に恋人繋ぎにして歩き出す。
人目を気にして俯き加減で引っ張られていく自分に対し、吉良は幸せそうな表情を隠さず人混みを進んでいく。
こちらは恥ずかしくて仕方ないのに。
「…何か嬉しそうだな」
悔し紛れに呟けば当然だろうと微笑む恋人。
「やっとクリスマスを凪沙と2人で過ごせるからな」
あー、何でこのイケメンが可愛く見えるかな自分。外じゃなきゃ悶絶死ものだよ。
「凪沙、ケーキはどれにする?生クリーム?それともチョコ?」
「任せる」
「もし、口にクリームついたら舐め取ってやるからな」
「…言ってろ、バーカ」
悪戯っぽい含み笑いに握り締めた手に少しだけ力を込めた。
帰ったらこの手の温もり毎抱きしめて欲しいなんて思ってしまうのは、きっとこの甘ったるいクリスマスの空気に酔ったせいだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
季節外れにも大概にしろと言われそうな話ですいませんm(_ _)m
教えて頂いた曲を自分なりに文章にイメージしてみた話です。
吉良としては幼稚園時代の意趣返し的な意味合いも込められてます(笑)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
俺の指をちゅぱちゅぱする癖が治っていない幼馴染
海野
BL
唯(ゆい)には幼いころから治らない癖がある。それは寝ている間無意識に幼馴染である相馬の指をくわえるというものだ。相馬(そうま)はいつしかそんな唯に自分から指を差し出し、興奮するようになってしまうようになり、起きる直前に慌ててトイレに向かい欲を吐き出していた。
ある日、いつもの様に指を唯の唇に当てると、彼は何故か狸寝入りをしていて…?
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる