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第1章 始まりの国
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「…さて、そろそろ出発しますか?」
葵が育った村に来てから数日間僕らは次の国に行くべく、準備を重ねてきた。
そして、今日。この村で過ごす最終日なのだ。
「うん。禅も魔法、教えてくれてありがとうね。百乃もご飯美味しかったよ。ありがとう。」
目の前で泣きじゃくってる少女、百乃の頭を撫でる。
僕には、妹がいないからよく分からないけど。妹がいたらこんな感じなのかなとか呑気なことを考える。
魔法は、結局のところ。上手くは使えなかった。でも、使い方など教えてもらったので1人で練習して使えるようにしようと思っている。
「龍心様。」
涙を拭い鼻をすすりながら百乃が僕のことを呼ぶ。
「どうか、葵のことをよろしくお願い致します。」
深々と頭を下げる百乃。本当に心の底から葵のことが愛しているのだろう。
「…迷惑ばっかりかけるような僕だけど。絶対、またここの国に戻ってきた時、葵の元気な姿を見せることを誓うよ。」
ニカッと笑うと、百乃は安心したような表情をした。
良かった。安心させることが出来て。僕に出来ることは少ないけど、出来るだけ。葵の主人として誇れるようになろう。
そんなことを心の中で思っていた。
……………………
「…案外。別れてみるとあっさりだね。」
「まぁ、毎回やっていることですので。毎回、寂しくはありますがね。」
意外と、寂しがり屋なんだなと1人で心の中に呟く。
「…さて、次の国に行く前に少し街へよってもよろしいですか?買いたいものがありますので。」
「…ここです。」
街の中の1番端っこのお店に武器販売・貸出という看板がぶら下がっていた。いよいよ、本当にゲームぽくなってきた。というよりも本気でゲームの中にいるみたいだ。
扉を開けるとカランカランという音が客である僕らが店の中に入ったことを知らせる。
「あぁ、葵か。」
僕らが入ると、突然。店の奥から随分といい男の人の声が聞こえた。
「京、久しぶりだね。いつもの貰えるかな。」
「あぁ、そうだと思って研いでおいたぜ。」
そう言って、店の奥から出てきた男の人…京さんは日本刀のような長い刀を出してきた。
良い声に似合う褐色の銀髪のダンディーイケメンだった。目はサファイアみたいな綺麗な色をしていた。
耳がとんがっていないところを見るとエルフではないだろう。
でも、ピアスの量が尋常じゃない。
パッと見でも片耳に10個くらいついてる。よく見ると、服の下にはタトゥーらしきものも見える。
ダンディーな分、凄まれたら怖いんだろうな。なんて呑気なことを考えていると葵に名前を呼ばれた。
「京、こちらは私の主。龍心様だ、」
「龍心くん、よろしく。俺は、京だよ。ここで鍛冶屋を1人で営んでるキメラさ。」
手を差し出されて握手をする。笑ってる姿を見ると、なかなか優しい人のようだ。
「京は、魔法使いによって作られた人間と黒猫のキメラなんです。」
「でも、魔法使い様が歳で亡くなってからはここで一人を謳歌してるってわけ。」
「…さて、いつもみたいにやってもらってもいいかな?」
「あぁ、そこの椅子に座ってくれ…。」
そう言うと、切れ味の良さそうなハサミを取り出してきた。
見ていると、ジャキジャキと葵の髪の毛を切り始めた。
そして、あっという間にさっぱりとした長さまで切ってしまった。
「龍心くんも座って。その野暮ったい前髪切ってしまおう。」
「…え?いや、いいですよ。僕は…。」
「遠慮しなくていいからほら。」
半ば強引に椅子に座らされる。
「いや、本当に…大丈夫なんで。」
「ほら、切るよ。」
そう言われて前髪に手を伸ばされる。僕は、思いっきりその手を叩いた。
しんっとした空気が痛い。
「…えっと…あの、」
僕は後ずさりをしながら言い訳を考えるも、いい言葉なんて思い浮かばない。
そして、僕は店から飛び出していった。
…………………………
村に戻るわけにも行かないし、とりあえず。街の中をふらふらと歩く。
京さんの手を叩いた手が震えていた。
前髪を切られるのが嫌な訳では無い。
前髪によって隠れている。汚い傷跡が嫌なのだ。
学校の同級生に、タトゥーと題しておでこに入れられた切り傷。
痛かったけど、それ以上に怖くて怖くて仕方なかった。
何度も何度も助けを求めて叫んだけど、誰も来てくれなくて。
痛むはずのない、傷跡がズキズキと痛んでくる。
僕はその痛みに耐えきれず、その場にしゃがみこむ。
ズキッズキッとこれは僕に向けての罰なんだと言わんばかりに痛む。
「…誰か…助けて…」
「…龍心様!!」
後ろから声が聞こえて、ぱっと頭をあげる。
葵だ。肩で息をしていてうっすらと汗をかいていた。
「すみません!私の考えが十分ではありませんでした。」
すごい勢いで頭を下げる葵。違う。謝るのは僕の方なんだ。
そう言わないといけないのに、心配してくれる人がいることの嬉しさでボロボロと涙がこぼれる。
その様子を見て、また葵がオロオロと心配してくれる。
僕は、謝りながらもまた涙を流していた。
葵が育った村に来てから数日間僕らは次の国に行くべく、準備を重ねてきた。
そして、今日。この村で過ごす最終日なのだ。
「うん。禅も魔法、教えてくれてありがとうね。百乃もご飯美味しかったよ。ありがとう。」
目の前で泣きじゃくってる少女、百乃の頭を撫でる。
僕には、妹がいないからよく分からないけど。妹がいたらこんな感じなのかなとか呑気なことを考える。
魔法は、結局のところ。上手くは使えなかった。でも、使い方など教えてもらったので1人で練習して使えるようにしようと思っている。
「龍心様。」
涙を拭い鼻をすすりながら百乃が僕のことを呼ぶ。
「どうか、葵のことをよろしくお願い致します。」
深々と頭を下げる百乃。本当に心の底から葵のことが愛しているのだろう。
「…迷惑ばっかりかけるような僕だけど。絶対、またここの国に戻ってきた時、葵の元気な姿を見せることを誓うよ。」
ニカッと笑うと、百乃は安心したような表情をした。
良かった。安心させることが出来て。僕に出来ることは少ないけど、出来るだけ。葵の主人として誇れるようになろう。
そんなことを心の中で思っていた。
……………………
「…案外。別れてみるとあっさりだね。」
「まぁ、毎回やっていることですので。毎回、寂しくはありますがね。」
意外と、寂しがり屋なんだなと1人で心の中に呟く。
「…さて、次の国に行く前に少し街へよってもよろしいですか?買いたいものがありますので。」
「…ここです。」
街の中の1番端っこのお店に武器販売・貸出という看板がぶら下がっていた。いよいよ、本当にゲームぽくなってきた。というよりも本気でゲームの中にいるみたいだ。
扉を開けるとカランカランという音が客である僕らが店の中に入ったことを知らせる。
「あぁ、葵か。」
僕らが入ると、突然。店の奥から随分といい男の人の声が聞こえた。
「京、久しぶりだね。いつもの貰えるかな。」
「あぁ、そうだと思って研いでおいたぜ。」
そう言って、店の奥から出てきた男の人…京さんは日本刀のような長い刀を出してきた。
良い声に似合う褐色の銀髪のダンディーイケメンだった。目はサファイアみたいな綺麗な色をしていた。
耳がとんがっていないところを見るとエルフではないだろう。
でも、ピアスの量が尋常じゃない。
パッと見でも片耳に10個くらいついてる。よく見ると、服の下にはタトゥーらしきものも見える。
ダンディーな分、凄まれたら怖いんだろうな。なんて呑気なことを考えていると葵に名前を呼ばれた。
「京、こちらは私の主。龍心様だ、」
「龍心くん、よろしく。俺は、京だよ。ここで鍛冶屋を1人で営んでるキメラさ。」
手を差し出されて握手をする。笑ってる姿を見ると、なかなか優しい人のようだ。
「京は、魔法使いによって作られた人間と黒猫のキメラなんです。」
「でも、魔法使い様が歳で亡くなってからはここで一人を謳歌してるってわけ。」
「…さて、いつもみたいにやってもらってもいいかな?」
「あぁ、そこの椅子に座ってくれ…。」
そう言うと、切れ味の良さそうなハサミを取り出してきた。
見ていると、ジャキジャキと葵の髪の毛を切り始めた。
そして、あっという間にさっぱりとした長さまで切ってしまった。
「龍心くんも座って。その野暮ったい前髪切ってしまおう。」
「…え?いや、いいですよ。僕は…。」
「遠慮しなくていいからほら。」
半ば強引に椅子に座らされる。
「いや、本当に…大丈夫なんで。」
「ほら、切るよ。」
そう言われて前髪に手を伸ばされる。僕は、思いっきりその手を叩いた。
しんっとした空気が痛い。
「…えっと…あの、」
僕は後ずさりをしながら言い訳を考えるも、いい言葉なんて思い浮かばない。
そして、僕は店から飛び出していった。
…………………………
村に戻るわけにも行かないし、とりあえず。街の中をふらふらと歩く。
京さんの手を叩いた手が震えていた。
前髪を切られるのが嫌な訳では無い。
前髪によって隠れている。汚い傷跡が嫌なのだ。
学校の同級生に、タトゥーと題しておでこに入れられた切り傷。
痛かったけど、それ以上に怖くて怖くて仕方なかった。
何度も何度も助けを求めて叫んだけど、誰も来てくれなくて。
痛むはずのない、傷跡がズキズキと痛んでくる。
僕はその痛みに耐えきれず、その場にしゃがみこむ。
ズキッズキッとこれは僕に向けての罰なんだと言わんばかりに痛む。
「…誰か…助けて…」
「…龍心様!!」
後ろから声が聞こえて、ぱっと頭をあげる。
葵だ。肩で息をしていてうっすらと汗をかいていた。
「すみません!私の考えが十分ではありませんでした。」
すごい勢いで頭を下げる葵。違う。謝るのは僕の方なんだ。
そう言わないといけないのに、心配してくれる人がいることの嬉しさでボロボロと涙がこぼれる。
その様子を見て、また葵がオロオロと心配してくれる。
僕は、謝りながらもまた涙を流していた。
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