【本編完結】ブーゲンビリアの花束を

戌依 寝子 (旧いろあす)

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ローダンセの花

39.ナンテン

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 振り返った主税と目が合って、胸がきゅんと跳ねた。
 心臓がドキドキする。多分、俺が後ろに居たって言うのにあんな凄い立ち回り見せられたせいだ。
 顔が熱くなって、思わず目を逸らした。
「ちょっとの差なんだよ」
 主税が言った。
 今まで意識してなかったその声が妙に甘く感じて、何でか知らないけど背筋が痺れた。
「いや、簡単に言うなよ」
 苦笑いで胡麻化して立ち上がった。
 やっぱダメ。調子が狂う。
 主税の視線から逃げるみたいに、椅子をダイニングテーブルに戻した。
 時計を見るといつもより少し早い時間だけど、もう一本映画を見る程でもない。
 でももう少し話したい。
 いや、これはそういうんじゃなくて、立ち回りをもっと詳しく聞きたいって意味で。
「主税、さっきの、もっと教えて」
 ソファに戻りながらそう誘うと、主税はデスクから立ち上がりながら困ったように俺を見た。
「いいよ。でも、酔っぱらっちゃ駄目だよ?」
 確かに。折角Lが直々に教えてくれるのを酔った頭で聞くのはもったいない。
 ソファの隣に座った主税は相変わらずけろっとしている。今日はそんなに飲んでないとは言え、酒が入った状態であんだけぐるぐる立ち回りして酔いは回らないわけ?
 コイツ、酔ったらどうなんの?
 いたずら心が芽生えて、半分くらいビールが残ったグラスを主税の前に押し付けた。
「じゃあ、俺の残ったやつ飲んで」
 それから口実をつけてどんどん飲ませてやる。
 主税は「え、あ、」なんて声を出しながらそのグラスを受け取った。
 俺はソファから立ち上がってキッチンへ向かう。
 ここは、俺の酒が飲めないのか作戦だ。
「俺、ウーロン茶貰うね。主税はまだ飲むだろ?」
 新しいビールを出して、俺は勝手に取ったグラスにウーロン茶を注ぐ。一口飲むとスッと少し酔いが冷めた気がした。

「じゃあさ、あの後1対2になった時、ちょっと飛んだのも意味あるの?」
 思案するみたいに「うーん」と考え込んだ目にはまだ知性が残ってる。
 コイツ、どんだけ強いんだよ。もう7.8.本は飲ませてるぞ。
「上と正面に居たでしょ?正面の射線切るのに柱に行くまでに、上からの射線を天井で切った、のかな?多分」
 それでもちょっと目がとろんとしてきている。でももうビールが無くなって、チューハイに切り替えたけどそれでも酒が足りない。まさかこんなに飲めるとは思ってなかった。俺の酒が飲めないのか作戦が失敗に終わってしまう。それに、俺が気付いた主税の立ち回りについての質問はのこり僅かだ。
 俺が必死で考えていると、主税から「ねぇ」と声がかかった。
「ん?なに?」
 どうしてこんなに飲ませるの?って?そりゃあアンタを酔わすためだよ。
 ソファにくったりと身体を預けて、とろんとした目のまま主税が俺を見た。
「かおるくんにとって、僕ってどういう存在?」
 ドキッとした。
 どういう存在?
 それは…。
 マッチングパーティーで会って、揶揄ってやろうと思って連絡先交換して、最初はそうだったけど意外に楽しくて普通に遊びたいと思って。
 でも、最近はちょっとおかしくて…。
 息が早くなって、主税の顔がまともに見れない。ちょっと赤くなって、いつもは険があるのに酔って力の抜けた目を見てしまったら、この関係が終わってしまうような気がする。
「ふ、普通に、映画友達、ゲーム友達って感じかなぁ。いい関係だなって思ってるよ?」
 そう言って恐る恐る顔を見ると、主税はちょっと困ったような、いつもの笑顔を浮かべていた。
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