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ハルジオンの花
52.永遠の思い出 いつまでも続く喜び
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目が覚めて、少し仕事をして、シャワーを浴びる。
今日は土曜日だ。仕事はお休みにしよう。
彼の会社との仕事も随分落ち着いた。
今はテストと修正の真っ最中だろう。コードチェックのメールが時々来ているくらいだ。
これで、彼との繋がりは完全に断たれる。
僕の気持ちも、少しだけ落ち着いた。
まだ色々思い出して胸が苦しくなることもあるけど、以前感じていたような息苦しさは少しマシになって来た。相変わらずあの洋食屋さんには行けないけど。
それに、今では時々彼を思い出して心が温かくなることもある。
時間という薬が効いて来たんだろう。
彼とやったというのを思い出して目も向けれなかったゲームも最近少し手を出し始めた。いつの間にか新しいシーズンに切り替わっていて、僕はランクが落ちていた。
こうやって、時間は過ぎていくんだろうな。
僕はまた営業をかけて、新しい仕事をして、彼の会社と仕事をしたことを忘れていく。
不意に込み上げるこの息苦しさも忘れていく。
そうだと、いいな…。
デスクでコーヒーを飲みながら考える。
目を上げた先にあるカランコエは最近少し元気がなくて、ちょっと心配している。花屋さんに相談してみよう。
それで、迷惑をかけたお詫びをして、切り花も買おう。
それから。
…もうすることもないな。映画でも見よう。
カランコエの鉢を持ってエントランスに降りると、伸びをしながら空を見上げる奥さんを見かけた。
「こんにちは。いい天気ですね」
奥さんは僕に気付いてパッと笑顔になった。
それから僕の持ってる鉢植えをもってまたニッコリ笑う。
「お世話してくれてるんですね。綺麗に咲いてる」
そう、この花には随分助けられている。
見上げるたび、あの日を思い出して辛くなったこともあったけど、奥さんの暖かさが嬉しくてほったらかしにはできなかった。
世話をしていくにつれて愛着も沸いてきて、蕾が膨らんでいくのと合わせて僕の気持ちも少しずつ落ち着いて来た。
「なんとか。最近ちょっと元気がないように見えて、相談に」
そう言って鉢植えを渡すと、奥さんは僕を伴って店内へ入る。
「多分ね、追肥してあげたらいいですよ。あとはそろそろ水やりを減らしてください」
奥の棚から緑のボトルを持ってきて、それを薄めて根本に注ぐ。
なるほど、肥料の事なんかまったく考えてなかった。さすがはプロだな。
適切なアドバイスに嬉しくなりながら、店内を見渡した。
窓際には蓮の花にも似た赤い花が飾ってある。
また彼を思い出したけど、苦しくはない。大丈夫、彼を見て蓮の花を思い浮かべたことはもういい思い出になってるみたいだ。
「買っていかれます?今日のお花はヘリクリサムと言います」
奥さんが穏やかな顔で言う。
その花言葉に、ちょっと苦笑いしながら小さく頷いた。
花を活けて、カランコエと一緒にいつもの場所に置く。華やかだ。
それからまたデスクに戻ってサブスクを立ち上げた。相変わらず見たことある映画ばかりが並ぶ。
それから、思い出してお気に入り画面を開いた。
ぽつんと、彼と見た映画のサムネイルが一つだけ登録してある。
彼はこれを見てぽろぽろ泣いてたんだよな。強がって僕を睨みつけて、それから豪快に鼻をかんでた。
おかしくなってクスクス笑ってしまう。ちょっとだけ胸が疼いたけど、大丈夫、これももういい思い出だ。
少し迷ったけど、再生ボタンをクリックした。
今日は土曜日だ。仕事はお休みにしよう。
彼の会社との仕事も随分落ち着いた。
今はテストと修正の真っ最中だろう。コードチェックのメールが時々来ているくらいだ。
これで、彼との繋がりは完全に断たれる。
僕の気持ちも、少しだけ落ち着いた。
まだ色々思い出して胸が苦しくなることもあるけど、以前感じていたような息苦しさは少しマシになって来た。相変わらずあの洋食屋さんには行けないけど。
それに、今では時々彼を思い出して心が温かくなることもある。
時間という薬が効いて来たんだろう。
彼とやったというのを思い出して目も向けれなかったゲームも最近少し手を出し始めた。いつの間にか新しいシーズンに切り替わっていて、僕はランクが落ちていた。
こうやって、時間は過ぎていくんだろうな。
僕はまた営業をかけて、新しい仕事をして、彼の会社と仕事をしたことを忘れていく。
不意に込み上げるこの息苦しさも忘れていく。
そうだと、いいな…。
デスクでコーヒーを飲みながら考える。
目を上げた先にあるカランコエは最近少し元気がなくて、ちょっと心配している。花屋さんに相談してみよう。
それで、迷惑をかけたお詫びをして、切り花も買おう。
それから。
…もうすることもないな。映画でも見よう。
カランコエの鉢を持ってエントランスに降りると、伸びをしながら空を見上げる奥さんを見かけた。
「こんにちは。いい天気ですね」
奥さんは僕に気付いてパッと笑顔になった。
それから僕の持ってる鉢植えをもってまたニッコリ笑う。
「お世話してくれてるんですね。綺麗に咲いてる」
そう、この花には随分助けられている。
見上げるたび、あの日を思い出して辛くなったこともあったけど、奥さんの暖かさが嬉しくてほったらかしにはできなかった。
世話をしていくにつれて愛着も沸いてきて、蕾が膨らんでいくのと合わせて僕の気持ちも少しずつ落ち着いて来た。
「なんとか。最近ちょっと元気がないように見えて、相談に」
そう言って鉢植えを渡すと、奥さんは僕を伴って店内へ入る。
「多分ね、追肥してあげたらいいですよ。あとはそろそろ水やりを減らしてください」
奥の棚から緑のボトルを持ってきて、それを薄めて根本に注ぐ。
なるほど、肥料の事なんかまったく考えてなかった。さすがはプロだな。
適切なアドバイスに嬉しくなりながら、店内を見渡した。
窓際には蓮の花にも似た赤い花が飾ってある。
また彼を思い出したけど、苦しくはない。大丈夫、彼を見て蓮の花を思い浮かべたことはもういい思い出になってるみたいだ。
「買っていかれます?今日のお花はヘリクリサムと言います」
奥さんが穏やかな顔で言う。
その花言葉に、ちょっと苦笑いしながら小さく頷いた。
花を活けて、カランコエと一緒にいつもの場所に置く。華やかだ。
それからまたデスクに戻ってサブスクを立ち上げた。相変わらず見たことある映画ばかりが並ぶ。
それから、思い出してお気に入り画面を開いた。
ぽつんと、彼と見た映画のサムネイルが一つだけ登録してある。
彼はこれを見てぽろぽろ泣いてたんだよな。強がって僕を睨みつけて、それから豪快に鼻をかんでた。
おかしくなってクスクス笑ってしまう。ちょっとだけ胸が疼いたけど、大丈夫、これももういい思い出だ。
少し迷ったけど、再生ボタンをクリックした。
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