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第17話 オークション幕間~小さな来訪者~
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「・・・・」
何をするのでもなく、私は窓の外を見つめていた。
外は既に漆黒の闇が支配している。
月明かりと街灯が光のコラボをして、夜空で美しいイルミネーションを作り出していた。
全開の窓からは、そよ風が吹き込み、初夏の生温い熱気を洗い流してくれている。
いやぁ、いい光景ねぇ~
まさか異世界に来てもこうやって”文明の灯”を拝みことが出来るとは思わなかったわ
心が洗われるわねぇ・・・
机の上のクッションにお姉さん座りをしながらしみじみと感慨にふける。
前世では当たり前のように見れた大都市の夜景がこんなに自分の心を揺さぶるとは思わなかった。
家に引き篭もざるを得ない今の私にとって、外界の景色一つ一つが得難い経験になっている。
こんな身体じゃなかったらねー
一人でも観光に行っているんだろうけど・・・
・・・・・・
観光か・・・もう随分してないな・・・
・・・・ふと、前世の事を思い起こす。
私の趣味は観光名所に行き、景色の良いところでランニングする事だった。
高校時代は”合宿”という名目で日本全国の景勝地を満喫したものだ。
懐かしいなぁ、合宿・・・
日本全国の山や海を駆け巡ったりしたわよね・・・
大自然の景観を前に風に当たる事ほど気持ちのいいものはなかった。
他にも皆で山にキャンプに行ったり、バーベキューやったりと合宿はとにかく楽しい思い出しかない。
顧問の先生がそこら辺理解ある人だったから、部費はもっぱらそういうものに費やすことが出来たのよね。
もちろん、我が陸上部がそれに見合う実績を上げていたからというのもあるけど。
なんと言っても我が校は”インターハイ女子陸上短距離走優勝校”という肩書を持っている。
学校側も、学校の名を大いに上げた陸上部の練習環境くらい大目に見るだろう。
私はそんな訳もあって、高校時代はとても充実する学校生活を送ることが出来ていた。
あの輝かしい日々。全てが順風満帆。青春の黄金時代。
もう、戻ることは出来ないのよね・・・
私は目線を下げ、思索にふける。
「・・・・・」
・・・ちなみに、そのインターハイで優勝した女子高生とは何を隠そう私のことだ。
高校時代の私は男女問わず人気があり、周りから頼りにされ、推薦で大学進学も決め、将来は陸上の選手にも期待されていた。
唯一悔いがあるとすれば、高校の3年間男っ気がなく「彼氏ほすぃ・・・」と呟きながら無為な私生活を送ったことだが、
それは卒業した後でいくらでも機会があるだろうと高をくくっていた。
まさに栄光のレールまっしぐら。将来が約束されていた美人女子高生!
・・・・
「はぁ・・・」
1人ため息を付いてしまう。
夜景を楽しんでいたはずなのに、なぜか悲しくなってきてしまった。
まあ、その女子高生が今はこんなところで小人やっている事を考えればため息も出てしまうわよね・・・
なんなのだろう、この急転直下っぷりは・・・
「・・・・・」
・・・・っといけない
「はい!やめやめ!」
パン!と私は頬を叩いて、自分に活を入れた。
昼間は筋トレやイメトレに時間を割いているし、夜は話相手のエノクがいるからこんなことはなかったんだけどね。
こう暗い時に一人で考え事をすると、考えがネガティブな方向に行ってしまう。
ネガティブな事を考えるのは悪いことではないと思うし、時には望郷の念に浸るのもいいだろう。
だけど、嘆いても意味がない。
・・・嘆くくらいなら、楽しまなきゃね!
人間万事塞翁が馬。
今が幸福か不幸かなんて結局人の心次第だということだ。
「・・・・よしっ!」
ネガティブな気分を払拭しようと、顔を上げて再び窓の外を鑑賞する。
カーラ王都の中心を見据えるとライトアップされた巨大なお城がある。
さらにその手前には万華鏡のように七色に発光する虹の塔がそびえ立って、浮島全体を光り輝かせていた。
こんな光景は前世でもお目にかかったことがない。
魔法が存在するファンタジーの世界ならではの光のアートと言っていいだろう。
こんな光景を見ることができて、自分が不幸だなんて言ってられないわよね。
本当、綺麗・・・
さっきまで若干ナーバスだった気分はあっという間にどこかに吹っ飛んでしまった。
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・
・・・ビュオーーー
ガタガタガタ・・・
私が王都の光の芸術にそんな感じでしばらく見惚れていると、風が吹き始め窓ガラスを揺らした。
カーラ王都は海とも呼べる巨大な大河と隣接しているため、夜は北東の方角に陸風が吹くらしい。
基本的に穏やかな風なんだけど、たまに突風が吹くから私は要注意とのこと(エノク談)。
ガタガタガタ!!
・・・んっ、ちょっと、風が出てきたわね
一旦閉めるか・・・
机の横に設置されている窓のそばまで行く。
窓はドレーキップ式なので、簡単な押し引きだけで開閉が可能だ。
「・・・って何・・・・あれ?」
私が窓を閉めようとした時、青白く光る飛翔物が突如視界に入ってきた。
月明かりに照らされてゆらゆらと浮いているそれは、強風に煽られながら必死になって前に進もうとしている。
・・・羽が生えているわね。
もしかして、蝶々?
それとも町長かな?・・・私が町長です。って違うか。
くだらんボケを噛ましている場合じゃないわね。
もっとよく観察しようと目を凝らして対象を観察する。
・・・・・!?
羽が生えているのに、人の姿をしている・・・
大きさもたぶん私と同じくらい・・・
・・・・えっ!?まさか・・・・・
妖精!!!?
ビュオォォォォーーー!!!
私がその飛翔体の正体に驚いていると、一段と強い突風が吹いた。
妖精と思わしき者は突風に必死になって抗うが、あえなく吹き飛ばされてしまう。
・・・・・って、こっち来る!!?
窓の中に妖精が突っ込んでくる!!
「ちょちょ・・・・ちょっと!ぶつかるわよ!!?」
風に大きくあおられた妖精は気を失っているのか、こちらの声にピクリとも反応しない。
このままだと机の表面に衝突する!!
くそっ!しょうがない!
私はとっさの判断で妖精の着地点と思わしき場所まで全力ダッシュする!!
ダダダダダダ!!!!
ズザァァァーーーーーーーガシッ!!
「うわっっ!と・・・・」
妖精を受け止めた衝撃で私の身体も地面に押さえつけられる。
最後はスラディングキャッチでなんとか間に合った。
ふう・・・間一髪だったわね・・・
「・・・・・・」
妖精の反応はない。
その目は閉じられていて、意識を失ったままだ。
お姫様抱っこの状態で妖精をそのまま確認する。
・・・・・
金髪のショートヘアの女の子のようだ。
耳がちょっと尖っている所と、蝶々みたいな羽が生えている所以外は人間とほとんど変わらない。
目を瞑っていても可愛らしい女の子だということが分かる。
うわぁ、本当に妖精だわ・・・実在したんだ。
それに服を着ないというのは本当だったのね。
一応、”大事な所”はサラシみたいなの巻いて隠しているけど、ほとんど真っ裸と言ってもいい。
・・・・ちょっと触ってみてもいいかな?・・・いいよね?
私の好奇心がムクムクと芽を出してきた。
妖精の頬を触ってみる。
ぷに、ぷに・・・
うーむ、やわらかいな・・・たまご肌。
質感といい肌触りといい、人間と変わらないじゃない。
さわ、さわ・・・
ふむふむ・・・
この羽根もしっとりしていて悪くないわね・・・
羽根にもちゃんと体温があることが分かる。
すり、すり・・・・
うーん・・・
抱き心地も良いわねぇ・・・
それにこの子からなんかフローラルな花の香りがする。いい匂い・・・
妖精が起きないのを良い事に、その身体を好き勝手に弄り回す私。
どう考えても、所業が変態のおっさん(18歳)です。
本当にありがとうございました。
・・・・でも、止められない。
これが妖精の魅惑というやつなのかしら。妖精おそるべし・・・・
もぞもぞ・・・
私が妖精の身体を触っていると、彼女の身体が反応を示し始める。
おっ!もう、起きそう?
パチっ!
・・・あ、目、覚ました。
妖精の子と目が合ってしまう。
「・・・・・!?」
妖精の子は、私を見るなりその目を大きく見開いた。
「・・・大丈夫?怪我はない?」
出来るだけ優しく彼女に声を掛ける。
しかし、妖精の子は私の言葉に反応せず、右へ左へと首を振り状況を確認している。
突然の状況に困惑しているようだ。
まあ、驚くなっていう方が無理あるわよね・・・さっきまで外を飛んでいたんだから。
それが今はこうして、訳も分からず私に抱きかかえられている状況を考えれば驚きもするわ・・・
私はそんな感じで諦観していたんだけど、妖精の子はこの状態が耐えられなかったようだ。
ジタバタ!ジタバタ!
妖精の子が急に暴れだす!
私の手から逃れようと、手足を振り回して私の顔や身体を殴りつけてきた!
「ちょっと、痛い!・・・放すから暴れないで!」
私が妖精の子を放すと、彼女はピョン!と飛び起き、私から急いで距離をとる。
「ふぅーっ!・・・ふぅーっ!・・・」
言葉にならない声を発しながら彼女は私を睨みつけてきた。
こちらを酷く警戒しているようだ・・・
「こ、こんにちわ・・・ハロー・・・」
ニコッ!
私は場の緊張をほぐそうと、妖精に愛想笑いをした。
「ふぅーっ!」
しかし、妖精は相変わらずこちらへの警戒を解こうとしない。
言葉を発さず、威嚇するかのように吐息を漏らしている。
ネコかあんたは・・・
妖精に無言でツッコミを入れる。
・・・そう言えば、妖精は言葉を話す事が出来ないんだったわよね。
エノクから聞いた話によると、妖精たちは知性も人間とほぼ同等だし、コミュニケーション自体は取ることが出来るという。
しかし、妖精同士の会話は魔力波による”念話”の為、普通の人間には彼女たちの会話は理解できない。
エノクのように翻訳魔法(トランスレーション)を持っているなら妖精の会話も理解出来るらしいけどね・・・
ただ、妖精は人間と同じ様に五感を持っているからこちらの声を聞くことは出来るらしい。
しかも、人間界に姿を表す妖精はこちらとコミュニケーションを取れるようにある程度人間の言葉や文字も理解出来るという。
なら、この子も私の言葉を理解できるはずよね・・・?
「・・・ねえ!あなた妖精でしょ?」
「私の言葉は分かる?」
妖精にそう問いかける。
「・・・・・」
だが、妖精はこちらを無言で睨みつけたままだ。
私の言葉になにも反応しない。
理解しているのかな・・・これ。
だけど、ダメ元で会話を続けてみるしかないわね・・・
そう考えた私は妖精への説得を続けた。
「そんな警戒しないで!私は何もあなたに危害を加えたりしないわよ」
「むしろさっきあなたを助けてあげたのよ?」
「この机に衝突しそうになってたあなたを私が受け止めたんだから」
「・・・・!?」
ピクッ!
私の今の言葉に妖精の目が大きく見開いた。
眉をしかめ、その顔に戸惑いの表情が浮かぶ。
反応した!?
ということは・・・
「・・・・私の言葉分かる?」
「分かるんだったら、頷いてみて」
「・・・・・」
私が妖精にそう問いかけると、妖精の緑色の瞳は私を真っ直ぐに捉えてきた。
その様子は私の言葉の真偽を測ろうとしているような印象を受ける。
「・・・・・」
「・・・・・」
・・・・妖精の子と私は見つめ合う状態になり、お互い無言の時間が流れる。
そして、しばらくそんな状態が続いた後・・・
コクッ・・・
彼女はこちらに厳しい視線を向けつつも、首を一回縦に振ってきた。
・・・おおっ!今頷いたよね!?
やっぱり分かるんじゃない!
妖精の女の子とコミュニケーションが取れると分かって、嬉しさがこみ上げてくる。
ファンタジー世界の代名詞、”妖精”と意思疎通できたなんて友達に100回自慢できる。
某SNSで呟いたら”いいね”を100万個貰えるかもしれない!
私がそんな感じで心の中で舞い上がっていると、妖精の方に動きがあった。
「・・・うん?」
彼女は口をパクパクしながら何かのジェスチャーをしている様だ。
私を指差して・・・首をかしげている・・・
なにを言いたいのかしら・・・?
再び沈黙の時間が流れる。
妖精の子はジェスチャーをした後、こちらを”ジーッ”と見つめてきている。
こちらの反応を伺っているようだ。
うーん・・・はっきり分からないんだけど、
でもまあ、私を指差しているんだから私の事を聞いてきていると考えるのが普通よね。
「えーっと・・・・私の事を聞いているの?」
コクッ
私の問いに妖精が頷く。
やっぱりそうか。
「私の名前はレイナっていうの。こう見えても人間なのよ」
「・・・・!?」
そのセリフを聞いて、妖精は再び大きく目を開いた。
疑念に満ちた視線を私に向けてくる。
その目は「はぁ・・・!?嘘だろう」とでも言いたげだ。
ジーーーッ
「・・・・・」
私は無言でその視線を受けていた。
敵意は先程より薄れたが、明らかに私のことをまだ信用できていない目線だった。
仕方ないけどね・・・
こんな小さい人間なんて見たことないだろうし。
でもまあ、時間を掛ければ信じて貰えるでしょ・・・
そう思案していた私に、妖精は再びジェスチャーをしてきた。
また、なんか言ってこようとしているわね。
なになに・・・
彼女は再び私を指差してくる。
そして、羽根をバタつかせ、その両手をめいいっぱいに広げ、つま先立ちになりながらバンザイの格好をした。
先程よりもジェスチャーの挙動が大きく動きがある。
・・・・・
分からん・・・
なんて言っているのか、全く想像がつかない。
ジェスチャーが大げさに動いている所をみると、なにか必死になって尋ねたいことなんだろうけど・・・
会ったばかりだから私の出自について聞いているのかもしれない。
一応確認してみるか。
「えーっと・・・・『あなたはどこから来たんですか?』って聞いている?」
フルフル
妖精は首を振る。
違うか・・・
さっき羽根をバタつかせていたから、もしかして・・・
「じゃあ・・・『あなたは空を飛ぶことが出来ますか?』って聞いてる?」
フルフル
また、妖精の子は首を振った。
これも、違うか・・・
えーいっ!色々質問を変えてみるしかないわね。
「『あなたはどうやって私を助けたんですか?』・・・とか」
フルフル
「『私を助けたあなたの目的は何ですか?』」
フルフル
「それなら・・・『ねえ、あなたちょっとバンザイしてジャンプしてみてよ!ジャンプ!』・・・は、どうだ!?」
フルフル
全部ハズレ・・・
ていうか、最後の質問は半ばヤケで聞いた質問だし。
うーん、何を聞こうとしているのかしら・・・ちょっと考えるか。
そのまましばしの間、下を見て考えこむ私。
そうしたら・・・・
スゥーーーー・・・・
妖精がいつの間にか窓から出ていこうとしてた!
「ちょっ!・・ちょっと!!音もなく急に飛び立とうとしないでくれる!!?」
「もう少し待っててよ!今考えている所なんだからさぁ!」
私は必死になって妖精を呼び止める。
彼女は空中で羽根をひらひらとさせながら、うんざりした顔で私を見下ろしてきた。
今すぐにでもここから出て行きたそうな感じだ。
こいつ・・・私とのやり取りに飽きやがったわね!?
冗談じゃないわ・・・!
あなたは私に用がないかもしれないけど、私はあなたに用があるのよっ!
人里に滅多に姿を表すことがない妖精との邂逅だ。
ここで彼女を逃したら私は何も得ることが出来ない。
私はどうしても彼女に教えてもらいたいことがあったのだ。
「・・・私はあなたを助けてあげたのよ!?」
「もう少しくらい私に付き合ってくれてもいいんじゃないの!!?」
懇願するように妖精に声を掛けた。
ここで別れたら、2度と合えないだろうから、私もなりふり構っていられなかった。
「・・・・・」
私のセリフを受けて妖精は凄い嫌そうな表情をする。
しかし、相手の良心に訴えるこの言葉は流石に効いたらしく、彼女はしぶしぶと舞い降りてきた。
・・・よしっ!なんとか引き留めることが出来たわね。
ただ、本番はここからだ。
「ねえ!もう一回さっきのやってみてくれる?」
「・・・・・」
「お願い!」
妖精はしばし躊躇していたが、再度私にジェスチャーをしてきた。
私は今度こそ理解してやろうと、その動向を注意深く見守る。
・・・・・
彼女は私を指差し、両手を花が開くように大きく広げた。
そして最後に、両の手のひらを上に向け、肩をすくめながら首をかしげた。
・・・・って、さっきと動きが全然違うんだけど!!?
妖精に心のなかでツッコミを入れる。
今回は羽根も別に動いていないし、つま先立ちもしていない。
首をかしげるなんて動作はさっきはしていなかった。
「ねぇ・・・一応確認だけど」
「今のって、さっきと同じことを聞いてきているのよね・・・?」
コクッ
妖精は私の問いかけに頷いた。
マジかぁ~・・・でもそれなら動きが違うけど同じものを表現しているってことよね?
ここに解決の糸口があると思うんだけどなぁ。
・・・うーん・・・でもやっぱり分からん。
ジトーーーーーーッ・・・・・
思案している間にも、妖精の訝しげな視線が私に突き刺さる。
妖精はまだかまだかと、腕を組みながら指を叩いていた。
うっ・・・・この沈黙の時間が重たいわね・・・
この子とコミュニケーションを取りたいだけなのに、これじゃ本末転倒じゃない・・・
こちらはただ、彼女と友達になりたいだけなのだ。
質問の答え探しにフォーカスしすぎているのかもしれない。
もっと明るい雰囲気で接して、友好関係を築くためにはどうすればいいか・・・
・・・・・
よしっ!それなら・・・!
「あっ!分かったわよ!」
私は一変して明るい声の調子で、ポンと手を打った!
声の調子に妖精もピクッと反応し、こちらを注視する。
「あなたの質問だけど、『あなたは美人で、おしとやかで、誠実ですか?』・・・って聞きたかったんでしょ?」
「・・・・」
妖精にウインクする。
「いやぁ、中々気づけなくてごめんねぇ~?」
「時間掛かったけど、答えはもちろん全部イエスよ!」
「・・・・・」
「私は、美人で、おしとやかで、性格もよくて、信頼もできる、とっても良い人間なの!」
「だから私とお友達になりましょ?」
「・・・・・・」
ニコッ!
私は天使の微笑みを見せながら、握手しようと手のひらを差し出した。
よしっ・・・!これで完璧!!
ズゥォォォォオオオオオオ・・・・!!
妖精がリフトオフした!
すごい速さで大気圏外に脱出しようとする!!
「待てぇぇぇい!!」
ガシッ!!
だが、私はすんでのところで妖精を捉え、飛び立とうとした彼女の背中に張り付いた!
ジタバタジタバタ!
妖精が必死になって私を振り払おうとする!
「ご・・ごめんって!暗い雰囲気を振り払おうとしただけじゃないの!」
「しょうがないじゃない!・・・こっちはあなたの言葉が分からないんだからさぁ~・・・」
「お願い!あともうちょい!ちょっとだけでいいからさぁ!」
暴れる妖精に必死になって懇願する。
「・・・・・」
妖精はそれを聞くと、暴れるのを止めこちらを振り返った。
ジロッーー、とこちらを見つめながら、人差し指をピンと立て首を傾けた。
なんかこれは直感的に理解できた。
”本当に?後1回だけだよ?”と言ってきているんだ。
・・・なんでこれは分かって、さっきのは分からないのよ!
「うん!後一回だけ!・・・ねっ?お願い」
「・・・・・」
コクッ・・・
妖精の子はしぶしぶという感じで頷いた。
それを見て私も妖精を放す。
ふぅ、なんとか首の皮一枚繋がった・・・
こうなったらもうあれしかないわね・・・
「・・・ねえ!あなたは人間の文字の読み書きは出来る?」
私がそう尋ねると、妖精は一瞬目をパチクリするも「コクッ」と頷いた。
「おお!本当に!?」
コクッ・・・
再度彼女は頷く。
それを見て私は「うしっ!」っと心の中でガッツポーズをした。
これで筆談に持ち込むことが出来る。
「じゃあ、ちょっとそこにいてね!」
「今、紙とエンピツひっぱり出してくるから!」
私はエノクの文房具が置いてある場所まで急いで行き、
計算やメモで使っているエンピツやノートの切れ端を引っ張り出した。
ノートの切れ端をくるくると丸め、エンピツを槍のように担ぎながらまた妖精の所まで戻ってくる。
「お待たせ、はい!」
「・・・・・」
妖精の子にエンピツを渡す。
そして、ノートの切れ端をレジャーシートを敷くような感じで妖精の前に広げた。
彼女はこちらがやりたい事を理解しているのか、素直にエンピツを受け取る。
「これで、あなたの聞きたいことを書いてみて?」
コクッ
妖精は私の言葉に頷いた。
そして、自分の身の丈と同じくらいのエンピツを肩に担ぎながら文字を書き始めた。
カキ・・・カキ・・・・
妖精はたどたどしくエンピツを紙の上に走らす。
その字は所々カクついていて、ミミズが紙の上を這っているような感じだ。
・・・でも、これだったらなんとか読めそうね。
えーっとなになに・・・
妖精がエンピツを走らせている横で私は文字を読み始めた。
”あ・な・た・は・ほ・ん・と・う・に・に・ん・げ・ん・?――――”
「・・・・『あなたは本当に人間』・・・て書いている?」
私が妖精に尋ねると、彼女は文字を書き続けながら「コクッ」っと頷いた。
さらに彼女は続ける。
”に・ん・げ・ん・は・も・っ・と・お・お・き・い・よ・?”
人間はもっと大きいよ?
・・・
「・・・ああ!なるほど!」
そこで私はポンッ!と手を打った。
さっきの妖精のジェスチャーが何を意味していたのかようやく理解した。
あの大きく手を広げるような挙動は人間の大きさを表していたんだ・・・
考えてみれば、あの流れからしたら私の正体を確認したかったに決まっているわよね。
妖精のダイナミックなジェスチャーに囚われて、その考えに至ることが出来なかった。
納得できた私は妖精に返事をする。
「私は本当に人間よ。ちょっと”特殊”な状態ではあるんだけど間違いなく人間」
「あなた達と同じくらいの大きさだけど、妖精でもないわ」
「ほら、私には羽生えてないでしょ?」
「・・・・」
そう言いながら妖精の前でくるりと回った。
妖精はその姿を見て、うーん・・・という感じで首を傾げていた。
彼女はまだ納得できていない様だ。
・・・意外に疑り深いわね、しょうがない。
弱みを見せるからあまりバッドステータスの事は言いたくないんだけど、
信頼してもらうためにはやむを得ないか・・・
「私の掛かったバッドステータスが”縮小化”なのよ」
「普通の人間の1/10の大きさになっちゃっているの」
「・・・・!?」
その言葉を聞いて、彼女は私を指差しながら驚きの表情を浮かべる。
そして、エンピツを取りまた紙の上に文字を書き始めた。
”ばっ・どす・てー・た・す!?”
”あなた・はずっ・と・その・すが・た・の・まま・な・の?”
バッドステータス!?
あなたはずっとその姿のままなの?
そう書いているっぽい。
「・・・そうよ。ずっとこの姿のまま」
「ちょっと衝撃的なんだけどね・・・」
「・・・・・」
若干声を落としながらそう返事する。
それを聞き妖精の子はまたエンピツを走らせた。
カキ・・・カキ・・・カキ・・・・
”よ・くい・き・て・いら・れた・ね”
「よく生きていられたね・・・か。それは自分でもそう思うわね」
「本当、あれは大冒険だったわよ・・・死ぬかと思ったし」
「・・・・・」
カキ・・・カキ・・・カキ・・・・
”なに・が・あっ・たの?”
・・・おっ!
こっちに結構興味を持ったっぽい。
少しは信用してもらえたということかな?
これだったら、逃げられずに済みそうね。
「・・・ねえ!話す前に私もあなたの事を教えてよ」
「・・・・!?」
急に質問を返されて、妖精の子はピクッとした。
私はそのまま話を続ける。
「いい加減、お互い”あなた”だとよそよそしいでしょ?名前教えてよ」
「・・・」
「私の名前はレイナ。レ、イ、ナ」
「あなたは?」
「・・・・」
彼女は突然の問いかけに目をパチクリさせていたが、
やがて「コクッ」と頷くと再びエンピツを走らせた。
”り・りー”
「リ・リー・・・」
「・・・あなたの名前はリリーというのね?」
コクッ
妖精が私の問いかけに頷く。
「よろしくね!リリー!」
私はそう言って、彼女の前に再度手を差し出した。
「・・・・・」
リリーはしばらく私の差し出した手を呆然と見ていたが、やがておずおずと手を出してきた。
ギュッ!
私はそれを自分からしっかりと掴みにいく。
「よろしくっ!」
ブンブン!
握った手を勢いよく振る。
それに合わせリリーの顔は前と後ろに流されるまま揺れた。
顔をしかめて迷惑そうな顔をする彼女。
だけど、これでいい。
これでお互いの壁を一つ壊せた気がする。
ふぅ・・・ようやくこれで本題に入れるわね。
「リリー、実はね、あなたに教えて欲しいことがあるの・・・」
「・・・?」
晴れてリリーの”友達”になった私はさっそくお願いを試みる。
「ん・・何?」という感じで彼女は首をかしげた。
「リリーの能力を私に見せて欲しいの!」
「お願い!!」
パンッ!と両の手のひらを合わせて彼女に懇願した。
・・・
エノクの話によると、妖精は”とびきり運を向上させる能力”を持っているらしい。
妖精はそれ自体がとても重宝されている存在だ。
その愛くるしい姿から愛玩動物として”その筋のコレクター”に常に狙われているという。
しかし、彼女たちを実際に捕えたという話はほとんど聞かない。
妖精はその能力を使って、目前に迫っている危機を事前に回避する術に異常に長けている。
それこそ”未来予知”でもしているんじゃないかっていうくらい彼女たちは勘が鋭く、
悪意を持って彼女たちを捕まえる、もしくは危害を加えようとすると、その前にさっと姿を消してしまうらしい。
もし、その能力をセカンダリースキルとして覚えることが出来ればこれほどサバイバルで頼もしい能力はないだろう。
私にとっては是が非でも覚えたい能力だった。
「・・・・・」
リリーは懇願する私の姿をしばし傍観する。
そして、何を思ったのか再びエンピツを持って文字を書き始めた。
おっ・・・♪
文字で教えてくれるということかな?
どれどれ・・・・
私は期待に胸踊らせながら、彼女の書き出した文字を読んだ。
”えぇー いや・だー・め・ん・ど・くさ・い”
・・・・・
おい・・・!マイフレンドよ!
親友の頼み聞けんのか、お主は!
「・・・そ、そんなこと言わずにさ」
「私達”友達”でしょ?ちょっとぐらい見せてくれてもいいじゃない、・・・ね?」
「・・・・・」
私は諦めずにリリーに食い下がるも、彼女はそれを見るなり私の目の前に急に人差し指を立ててきた。
突然の行動に今度は私が驚かされる。
「え・・・なに?」
呆然とする私の前で、チッチッチと指を左右に振らした後、彼女は再び文字を書き始める。
”た・だ・じゃ・いや・だ”
・・・さらに唖然とする私。
書き終わった彼女は私を尻目にそっぽを向き、フフンと笑った。
どうも私が下手に出ていることに優越感を感じているようだ。
ニヤニヤと笑みを浮かべ、腰を低くしながら頼み込んでいる私を見下ろしてきやがった。
・・・こ、この子わぁ・・・!
妖精ってこんな高飛車な性格なの!?
ちょっと・・・いや・・・かなりイメージと違うんですけど!!?
ニヤニヤ
「うぐぐ・・・・」
妖精のニヤついた視線を受けながら悶える私。
た・・・ただじゃ嫌だってなに?
妖精の癖に対価を要求するってどういうこと!?
「ただじゃ・・・嫌なの・・・?」
恐る恐るリリーに尋ねてみる。
コクッ
え・・・
まさかとは思うけど・・・
「まさか、お金寄こせって言ってるの・・・?」
コクッ
えぇぇええええ!?
よりによってお金かい!!?
人間の通貨なんて何に使うのよあんたは!!?
まさかの妖精の頷きに私は大いに驚いてしまった。
カキ・・・カキ・・・カキ・・・
澄ました表情でリリーはまた何か文字を書き始める。
強張った表情でそれを眺める私。
”き・ん・か・ちよ・だい”
・・・金貨ちょうだい?
1万クレジット寄こせって事!?
ねぇよ!そんなもん!!
1万クレジットがあれば、豪邸建てられるわい!(←大げさ)
なめた口聞いてくれるじゃない!お嬢ちゃんよぅ・・・
そっちがその気なら私にも考えがあるわい!
私は下を向き、いかにも気落ちした感じで言葉を呟く。
「金貨ねぇ・・・今手持ちが無いのよねぇ・・・」
「・・・・・」
それを聞いたリリーは「ふぅー」という感じで手のひらを上に向けて首を振った。
話にならないとでも言いたいらしい。
私は気にせず言葉を続ける。
「リリーにはお礼として、凄いこと教えてあげようと思ってたんだけどねぇ・・・残念だなぁ~」
ピクッ!
「・・・ほら、さっき私に聞いてきたことあるでしょ?」
「私が大冒険して、今こうして生きているって話」
「凄かったのよぉ・・・他の人間達に捕まっちゃったり、ネコに食べられそうになっちゃたりしたんだからぁ」
ピクッピクッ!
「空も飛ぶことが出来ない私がその危機をどうやって乗り越えてきたか」
「”友達”にならその武勇伝教えて上げることが出来たんだけどなぁ・・・」
「あ~残念だなぁー・・・」
チラッ・・・
私がリリーの様子を横目に見ると、
彼女はなにか物欲しそうに手をモジモジと弄っていた。
ふっふっふ・・・
その様子を見て私は心のなかでニヤリと笑う。
「どこかにお金を要求しないで、能力を気前よく見せてくれる”友達”いないかなぁ~」
「・・・・・」
途中からさも、その場に他に誰もいないかのように振る舞う私。
さらに独り言を呟き続ける。
「ああ!こんな凄い体験談もう2度と語ることは出来ないかも知れない・・・!」
「これを聞いてくれる私の”友達”はどこにいるの!?」
「はぁ・・・私はもう諦めるしかないのかしら・・・」
そう言ってガクッと項垂れた。
もはやこれまでと、諦観の雰囲気を出しながら、私はリリーの方に向き直った。
罪悪感を言葉にたっぷりと込めながら詫びの言葉を口にする。
「リリー・・・引き止めて悪かったわね・・・」
「私はお金を持っていないし、あなたの要求に答えることは出来ないわ・・・」
「短い時間だったけど、ありがとうね・・・楽しかった・・・もう行っていいよ」
「・・・・・!?」
突然の別れを告げられて、リリーはその目を大きく見開いた。
流石にこの急な展開に驚いているようだ。
彼女はその場で呆然と私の挙動を見つめている。
別れの言葉を告げた後、私は床に伏せ「よよよ」という感じで崩れ落ちていた。
・・・・・
クイクイ・・・
袖を引っ張る感触があった。
それにつられ私は顔を上げる。
「・・・・・」
モジモジと身体をくねらせ、私から目線を逸らして赤面しているリリーの姿がそこにあった。
「あれ・・・リリー?どうしたの?」
「・・・・・」
「もう、行っても良いんだよ?」
彼女は私の言葉にフルフルと首を振ると、エンピツをとってまた文字を書き始めた。
”お・か・ね・い・ら・な・い”
「えっ!・・・いいの!?」
さも、相手から驚きの提案を受けたかのように私は反応する。
コクッ
カキ、カキ・・・・
”ぼ・う・け・ん・の・は・な・し・お・し・え・て”
「冒険の話をしたら、能力見せてくれるの・・・?」
コクッ・・・
・・・・よしっ!勝った。交渉成立!
私は喜びをおくびにも出さず立ち上がると、
やれやれという感じで彼女に言葉を返す。
「仕方ないわねぇ・・・」
「”友達”にそこまで言われちゃ、私も話すしかないかなぁ。あの大冒険を!」
「・・・・・」
私は天上の夜空に浮かぶ星々をうつろな目で仰ぎ見て、過去へと思いを馳せた。
リリーはそんな私をじっと凝視して言葉の続きを待っていた。
「・・・そう」
「あれは私がまだ18歳になったばかりの頃だったわ・・・・・」
壮大な戯曲でも語るかのように、私は自分の冒険譚を語り始めた・・・
・
・
・
「・・・・・それは突然に襲いかかってきた!」
「運命を司る3柱の女神が私を見放し、死神が迫りくる恐怖を私は感じていた・・・」
戯曲「小人になった女子高生」は最高潮の盛り上がりを見せていた。
机の上の舞台女優になった私は、月明かりのスポットライトを浴びて迫真迫る演技を披露している。
「・・・まさに絶体絶命のピンチだった!もはや万事休す!!」
「このままでは魔獣キャットに追いつかれて私は食べられてしまう!」
「この身は八つ裂きにされ、見るも無残に土に帰すことになるだろう・・・」
「私はそう覚悟した・・・」
「・・・・・」
観客であるリリーは固唾を飲んで私の進行する劇を見守っている。
彼女は私が見せる大仰な台詞回しや振り付けの度に興奮し、羽根をパタパタと震わせていた。
どうやら観客の反応は上々のようだ。
「・・・その時だった!!」
「前方から輝くような光とともに門が開いたのよ!」
「・・・・!?」
「絶望の淵から逃れる唯一の一手・・・・私はそれに全てを掛けた!」
「・・・私は最後の力を振り絞り、その門に飛び込んでいった・・・!!」
「・・・・!!」
リリーは前かがみの姿勢で食い入るように私を見つめていた。
パタパタパタ!と先程よりもさらに速い速度で羽根を羽ばたかせ、机の上に小さな乱気流を巻き起こす程だ。
「どうなるの!?どうなるの!?」と彼女の心の声が聞こえてきそうなくらいの反応ぶりを示している。
私はそんな彼女の反応を見てニヤリと微笑むと、劇の最後を飾るべく締めのセリフを述べた。
「・・・”小人になった女子高生”第1章 完!!」
私はそう力強く終劇を宣言した。
「・・・・・!!???」
パタッ・・・
リリーの羽音が止まった。というか時が止まった。
彼女にとってはまさに青天の霹靂のような終劇だっただろう。
幽霊でも見たような顔をしている。
私はそんな彼女に振り向くと、フリルのワンピースをひらひらさせながら深々とお辞儀をする。
「お客様・・・本日のご来場誠にありがとうございました!」
「第2章以降の公演は後日また執り行う予定でございます!」
「・・・またのご来場心よりお待ち申し上げております」
「・・・・!!!???」
リリーはもう訳が分からないばかりに、私に詰め寄ってきた。
そして、私の胸元を両手で掴むと勢いよく揺さぶってくる!
プンプン!
ぷくーっと頬を大きく膨らませ、怒りの感情そのままにぶつけて来た。
フグかあんたは・・・
「・・・どうしたのリリー?」
「劇はこれで終わりよ。楽しくなかった?」
私はなだめるようにリリーに言ったが、彼女はそれに納得いかなかったようだ。
私からすぐさま離れてエンピツを取ってくると、殴るように文字を書いた。
”こ・れで・お・わ・り・!?・つ・づ・きは!・?”
「第1章はこれで終わりよ。続きを上映するかはリリー次第・・・」
「・・・・!」
先程までの軽いノリが嘘のように、私は冷淡にそう言い放った。
私の変わり身の早さにリリーもギョッ!っと驚く。
「・・・この意味は分かるわよね?」
「さっ、約束。今度はリリーが私に見せる番よ」
「・・・・・・」
コクッ・・・
・・・私が冗談で言っているのではない事を彼女も悟ったのだろう。
彼女は少しションボリしながらも頷き、私からそっと離れた。
少し冷く言い放っちゃったかな・・・
私も本当はこんな交換条件みたいな形で迫ることはしたくなかった。
だけど、しょうがない。これはお遊びでやっているのではないのだから。
冷血と言われようが、利己的と言われようが、死んだらそれでお終いだ。
自分の今後の生存が掛かっていた。
もし今後、冒険の旅に出たら私ははっきり言ってモンスターの捕食対象でしかない。
弱肉強食の死の世界で身を守る術がないのなら、即、死に繋がる。
―――私は”絶対に”彼女に能力を見せてもらう必要があった。
私が将来的に”生き残る為”に彼女達妖精の能力がどうしても必要になってくる。
加えて言うなら、リリーと今回限りの付き合いにもしたくなかった。
セカンダリースキルを覚えるためにはその能力を十二分にイメージする必要があるから1回で覚るのは難しいだろう。
彼女には私のイメージを完璧にするまで何度も足を運んでもらうことが望ましい。
今回限りで、はいさようならという形にはしたくなかった。
さぁ!見せてもらうわよ・・・
あなたの能力を・・・!!!
先程まではリリーが食い入るように私の劇を鑑賞していたが、今度は私が彼女を凝視する番だった。
リリーは私から少し距離を取ると、月明かりが照らす窓際で佇む。
そして、目を瞑り天を仰ぐと、言葉にならない声で何かを静かに口ずさみ始めた。
「・・●・★・▲・□・・・」
ヒュォォォ・・・
静かな風が彼女に纏わり付いていく。
金髪のショートヘアがさらさらと揺られ、羽根がそれに合わせゆらゆらと動き、リリーはフワリと浮き上がる。
そのまま焦点が定まらない朧気な目つきで彼女は空中をたゆたい始めた。
「・・・・・!」
光?・・・あれは何?
リリーの周りに青白い光が集まってきている。
青白い光の粒が風と共にどこからともなく現れ、彼女の周囲に薄い衣を形成していく。
それはあまりにも薄く、ゆらゆらと風に揺れている為、存在を視認するのが難しいほどだ。
月明かりに照らされて躍動するその幻想的な光景に私は目が離せなかった。
・・・これが・・・妖精の能力!
・
・
・
・
・
To Be Continued・・・
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