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悪役からサポート役へのジョブチェンジは可能でしょうか?

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   主人公ってもうこの学園にいるのだろうか、そんなことを考えながらぼーっとクラス分け発表の紙へと向かっている。
 ローズクォーツの瞳に白い髪だったっけ?白い髪なんて目立ちそうなのに全く見当たらない。まあ周りが色とりどりカラフルだから逆に目立たないのかもしれないけれど。そもそもローズクォーツって何色?ローズだから赤?
 「あ、2年生は向こう側かな、じゃあリッキーとフィンリーはまたあとでね、行こうウィル」
 はい、と返事して向かおうとした矢先
 「きゃっ!」
 「わっ」
 ドンッ
 高い声と王子の焦った声がしてその後鈍い音がしたので目を向けると、そこには王子を押し倒している白い髪の女子生徒、む、これはもしや…?
 「大じょ、むぐっ」
 リッキーが話しかけようとしたので口を抑える。不満そうにこちらを見てきたが知らない。今良いところだから!黙れ!
 「いたたっ……って、ごめんなさい!!私が前を見ていなかったばっかりに!お怪我はありませんか?」
 「良いんだ気にしないで。僕が周りを見ていなかったせいでもある。君の方こそ大丈夫かい?」
 王子の上からは降りずに顔を赤くして喋る女子生徒。瞳の色は……、桜色?ローズクォーツなのかな?
 「お手をどうぞ」
 そう手を差し出すウィリアム様。穿った見方かもしれないが、早く王子から降りろと言っているように聞こえる。優しさと感じ取った主人公(仮)は頬を赤く染めながらウィリアム様の手を取って王子から降りた。
 とても絵になる光景、なるほど、主人公。
 「ありがとうございます!大丈夫です、頑丈なのでっ!本当にごめんなさい、今後気を付けるようにします!」
 そう一方的に捲し立てて顔を赤くしたまま去っていく主人公。びっくりしたような顔で固まる王子
 「嵐のような方でしたね」
 そうウィリアム様が言うと少し遅れて
 「ははっ確かに、面白い子だったね」
 と、そう返す王子の顔は優しい。こーれは運命ですね。おめでとうございます。心無しか入学祝いの看板が誇らしげに見えるや。あ、忘れてた。
 「ぷはっ、もうフィンリー急に何すんだよー!」
 「うるさい、空気を読まないリッキーが悪いね」
 「いやいやあの子困ってたじゃん困った人は助けなきゃ」
 「結果的に必要なかったじゃん、それよりクラス分けの表を見に行こう」
 「うーん、まあいいか。行こう」
 てか忘れてたけどリッキーも攻略対象者なんだっけな。まあいいか。もうこんな感じで王子かウィリアム様と主人公の恋を成就させるべくサポート役に徹しても良いんじゃないかな。ハッピーエンドになれば良くない?主人公可愛かったな。
 「うわーーーー!!!!おい!フィンリーと俺クラスまで同じなんだけど!」
 「ちょっと待って嘘でしょ」
 「俺嘘付かないって」
 「はあ」
 「はあってやめろよ俺も言いたいけど我慢してんの」
 それはもう言ってるのと大差ないだろ。はあ。
 「ちなみに教室の場所分かんないから少し助かった」
 「だと思ったよ、ほんとばかだよね」
 なんて言いながらも全員知らない人しかいない空間よりはうるさい奴でも知ってる人が居る空間の方で良かった、ほんの1ミリ助かった。

 なんと教室には主人公がいた。何で男爵令嬢なのに1番上のクラスなんだろう、主人公補正とかなのだろうか。リッキーとの接点を作るためかな。
 黒板に座席表が貼ってあったので見ると、隣の席がリッキーで多分位置的に僕の後ろの席が主人公だろう。
 「逆じゃない?」
 いや斜めの方が話しやすいのか?
 「何が?」
 「いや、なんでもないけど」
 「そっか、てか隣じゃん」
 何となくリッキーもそんな予感がしていたのかほとんど知らない人しかいないからかいつものように騒ぎ立てなかった。こいつが大人しいと変な感じだと思いながら席に向かった。
 「あ!さっきの子だ!本当に大丈夫だったの?」
 お、これは、どうだ?
 「さっきの……?多分大丈夫です」
 王子とウィリアム様との初対面と違って平然と返す主人公
 「ふぐっ」
 思わず笑っちゃったよ。リッキーのせいで変なやつだと思われる……。
 「何笑ってんだよ」
 「レオンハルト様とかのときと反応が違うから」
 「ああそういう……まあ明らかな王子とそうでないやつだと反応も変わるだろ」
 「レオンハルト様……王子……?はっ!さっきのって、さっきの!わ、忘れてください~!大丈夫です大丈夫ですよ」
 転んだのを見られたのが恥ずかしかったのか殿下のことを思い出したのか真っ赤になる主人公
 「何で?まあ大丈夫なら良いか、レオンハルト様は面白かったって言ってたぞ」
 と鈍感馬鹿な返事をするリッキー
 「ひ、ひえ~~恥ずかし~~。もう、そんなの聞きたくなかったですよ」
 「え、そっか、ごめんな…?」
 「ふくくっ」
 「はあ?今度は何が面白いんだよ」
 「だってすんごい気まずそう!リッキーが弱気で変!カッコつけてる?」
 「はぁ……?カッコつけてないし!」
 「うるさっ!変だけど静かな方が良いよ」
 リッキーが大きな声を出す度に周りの人達がびくっとしてて可哀想だ。僕は耐性が付いている方だけど中々慣れないよな。
 「ふふっお2人はとても仲が良いんですね」
 「「いや全然?!」」
   突然何を言い出すんだ。
 「そうなんですか?楽しそうなので。私は田舎育ちなもので学園に友達が居ないので羨ましいなと思って……」
 「知り合い程度の仲だよ。そういえば名前を聞いてなかったね。僕はフィンリー・アスター、よろしくね」
 「リチャード・カールソンだ。よくリッキーって呼ばれている。よろしくな」
 「私はジェシカ・カーミラと申します。フィンリー様、リッキー様、よろしくお願いします」
  やっぱりサポート役の方が向いてるかも。

 

   今日は初めての魔術の授業の日でとってもワクワクしている。ジェシカもそうらしく朝からずっとその話をしている。
 魔術が不得意なリッキーはあまり楽しくなさそうで面白い。
 「リッキーはあまりにも魔術が苦手で授業中に脱走するからよく家庭教師に怒られてたよね」
 「人には向き不向きってのがあるじゃん、俺は剣術が得意だからいーの!」
 「リッキー様は剣術が得意なんですね!凄いです」
 「だろ?将来俺は騎士団に務めたいんだ。そのために鍛錬を積んでるんだよ」
 おー、すごーいと純粋に拍手を送るジェシカに気を良くしたリッキーが胸を張る。腹立たしいな。
 「今魔術の話してたじゃん、聞いてないよその話」
 「言わせてくれよ」
 「そういえば、ジェシカは魔法を使ったことはあるの?」
 無視して話題を戻すとジェシカは不安げに答えた。
 「私は家が貧乏で両親共に魔法についてはからっきしなのでまだ何も知らない状態です、良い家族で大好きですけど。皆さんはお2人のように家庭教師から教わっているんですよね、付いて行けるか不安です」
 「そうなんだ」
 大好きだと言える家族がいることが少し羨ましかった。
 「まー大丈夫じゃないか?俺だってほとんどなーんも知らないし、フィンリーほどの魔法ばかなんて早々いないって」
 「魔法ばかって。まあそうかもね。あ、じゃあジェシカはまだ自分の属性も知らない?」
 「それは知ってます。入学前に水晶で確認しました。聖属性らしいです」
 聖属性か……へぇ……聖属性ね。対して僕は闇属性。魔法は好きで関する本を読んでいたから気付いてしまった。生まれも育ちも最初っから悪役って訳だ。僕は悪役でしか無かったんだ。どう頑張っても正義になんてなれやしないのだから悪役としてハッピーエンドにしてやるしかないんだ。
 「そっか、聖属性は謎が多いから特に大変かもね。早く使えるようになったら良いね」
 上手く笑えていただろうか。そんなのどうでもいいな、どうでもいい。
 「フィンリー?」
 「何?」
 「いや、なんでもない」
 視線を向けるとスピネルの瞳が困ったように宙をさまよったので急な孤独感と失望感にどうしていいか分からず適当な理由を付けて教室を出た。
 僕の頭では取り憑かれているかのようにいつか読んだ本の一節がグルグルと回っていた。

 聖属性は一見闇属性とは相反するもののように思われがちですが、私の見解としては聖がなければ闇は存在しない、はたまた逆で闇がなければ聖も存在しない、そんな具合であると思うのです。逆もまた然りですが、悪がいなければ正義もないのと同じです。聖と闇の場合はどちらが悪いとも私には言い切れません。謎が深いので決め付けるのはまだ早かろうと思います。よく分かってないという事実だけでこの2属性の2ページを終わらせてしまうのが勿体ないと思い駄文を連ねてしまった次第です。お目汚し失礼致しました。
 
 僕が闇魔法を使うことでジェシカも聖魔法が使えるようになりそれによってジェシカは男爵令嬢という身分だが国に重宝されるようになるのだろう。そうなれば世間の非難を浴びることなくレオンハルト様とジェシカは結婚してハッピーエンドってわけ。
 闇魔法を使えるようにならなきゃ。楽しみだなぁ。
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