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◇私の決意◇
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そして、転勤話から3日後。
私は遠方地への転勤を決め、一ヶ月後には転勤先の店舗近くのアパートへと引越した。
初めて足を踏み入れた新しい街。
初めての一人暮らし。
初めて一緒に働く同年代の仕事仲間。
転勤前の店舗とは比べ物にならないほど大きくて綺麗で真新しい店舗と、小型店にはなかった最新の備品が揃えられた売り場に高まる私の期待。
小さなお店で楽しく過ごしてはいたが、忙しくも退屈な毎日に、正直マンネリ感は感じていた。
だから、違う環境に身を置いてみるのも面白いかな?と軽い気持ちで動けたのも若さゆえか。
そしてもう1つ、私の背中を押した理由。
それは、人事課の人からの優しい言葉があったからだ。
「甘味ちゃーん!人事課から電話よー!」
お母さん的存在のパートの石松さんが、事務所の扉を大きく開き、トランシーバーがあるにも拘わらず、理美容品コーナーのカタログ整理をしていた私に向かって大声で叫ぶ。
「えっ?私ですか?店長あてじゃなくて??」
私は小走りで石松さんに駆け寄る。
「ううん。"甘味さん"って名指しやったよ」
初めて自分宛にかかってきた本社からの電話に、誰もいない事務所に急いで入り、店長のデスクに一台だけある電話機の受話器を手にとった。
「お待たせしました!甘味ですっ!」
「お疲れ様です。あのっ、……人事課の…"たかはし"と申します」
意外だった。
「あ、はい。お疲れ様です」
私の勝手な偏見なのだが、本社からの電話ときたら、きっと偉そうな話し方のおじさんか、高飛車なお局女性社員からの電話だと思っていた。
「お仕事中すいません。ちょっとだけ時間いいですか?もし忙しかったら、また後でかけ直しますんで」
その声の主は、明らかに若い男性。
電話口で恐縮そうに話す姿が想像でき、初めて話すのにとても好感が持てた。
「今は手が空いてるんで大丈夫です。えーと、どのようなご用件でしょうか?」
「甘味さんに転勤の話が人事課から出ていると思うんですが」
何の取り柄もない一般社員の私なんかにも丁寧な言葉遣いの"たかはしさん"に、考えるなんて言いながら、山本店長にさえ返事をせず、3日間もただ放置していた事を猛烈に反省。
「すみませんっ!早くお返事をしないといけないとは思ってたんですが、そのっ…なかなか決めきれなくて…。でも、今日中には店長に伝えようと思ってますのでっ」
その場しのぎと言われればそれまでだけど、迷っているのは本当の事。
「あ、いやいやっ。催促している訳じゃないんです。自分も、甘味さんの気持ち分かりますから。急な話だったし、それに遠すぎますよね。友達と離れるのも寂しいですもんね。…でもきっと、新しい環境で楽しい事や出会いが沢山あると思うんです」
柔らかなその口調は、私の不安な気持ちに寄り添うようだった。
それはまるで、友達のようで、親友のようで、初めて話したはずの"たかはしさん"に親近感すら感じてしまうほど。
「出会い…ですか。…そうですね。…たかはしさんの言う通りだと思います。だけど…」
私がここで不安な気持ちを漏らしてしまうと、たかはしさんを困らせてしまうのでは、と一瞬の迷い。
「だけど、もう一歩が踏み出せない?やっぱり不安ですか?」
その迷いすら汲み取ってくれるたかはしさんに、私は心の内を明かす。
「…はい。私みたいな田舎者が、そっちでやっていけるのかなって。あまりに都会すぎて馴染めるかなって」
「そうですよね。………でも、甘味さん。転勤の話、ゆっくりでいいから前向きに考えてくれませんか?転勤してきて不安な事があるなら、俺に相談してくれていいしっ」
見ず知らずの赤の他人に、何故ここまで親身になってくれるのか。
私は何故"たかはしさん"に、こんなに転勤を薦められているのか。
その理由は全く分からないにしろ、私の心は既に、"たかはしさん"にほだされかけている。
「フフッ。それじゃあ~。仕事で分からない事があったら、たかはしさんに相談に乗ってもらっちゃおっかな」
「あ、いや!……その、、、相談に乗りたいのは山々なんだけど、、、実は俺、ここに入社してまだ3ヶ月目なんですよね~」
「えー!!それじゃあ、私の方が先輩やん!!」
まさかすぎる返答に思わずタメ口が飛び出し、慌てて訂正する私。
「あ、失礼しましたっ!先輩じゃないですか!」
そんな私の失言に、たかはしさんは電話口でクククッと笑っている。
「でも、役には立たないかもしれないけど、話を聞くぐらいなら俺でも出来るから。不安がらず、こっちに来てほしい。…って、これじゃ、催促してるのと同じだなっ」
最初の柔らかな口調とは違い、徐々にフランクになりながらも懸命に説得してくれる姿勢が、私に遠方地への転勤を決断させた理由の一つ。
「分かりました。私、転勤します」
たかはしさんのおかげで迷いは吹っ切れ、自然と頬も緩む。
「本当に?!」
「はい。たかはしさんの押しに負けました。私、そっちに行きます」
「やった!!マジか!!ありがとう!!じゃあ、俺!早速、課長に伝えてくるからっ!甘味!またな!」
「へ?」
急な呼び捨てにその真意を聞こうにも、ガチャ!と勢いよく切られた受話器を呆然と見つめるしか出来ない私と、プープープーと鳴る電子音だけがその場に残った。
"甘味!"
突然、私をそう呼んだ"たかはしさん"
「どっかで聞き覚えがある声なんよねー」
人差し指を口に当て、「んー???」と頭をひねってみても、思い出しそうであと少しで思い出せない歯痒さ。
「え??誰やったっけなーー???たかはしさん、たかはしさん、、、」
でも、今も昔も"たかはし"という苗字の知り合いはいないはず。
だけど確かに。
「懐かしい感じがしたんやけどなー」
まだ耳に残るあの声に、昔そう呼ばれていた記憶はあるのに………
「甘味くん。人事課から電話やったんやろ?なんだって?」
その声に振り向くと、石松さんの大きい声が聞こえたであろう山本店長が売り場から事務所に戻ってきていた。
「あ、店長。えーと、転勤してきて欲しいって言われまして」
「人事課の人が?えー?!わざわざ甘味くんに?転勤候補者に本社の人間が直接電話するなんて初めて聞いたっちゃけど??」
「そーですよねー?私が転勤を決めたら"やった!"とか言ってたんで、ノルマがあったんですかね?」
「そんな訳ないやろー??」
「ですよね」
自分で言っといて、私はフフッと噴き出す。
「あっ!それはそうと。店長!改めて、私、転勤します!」
「そっか。甘味くんがおらんくなると寂しくなるね。若い人がいるだけで売り場に活気が出るっちゃんね。でもまぁ、甘味くんが決めた事やけん僕も応援するよ。一応、僕からも人事課に連絡をいれとこうかな」
「はい、お願いします!」
向こうに行ったら、会う機会はあるのかな?
それにしても、"たかはしさん"って面白い人だったな。
また、話せたらいいな…
でも結局は、"たかはしさん"と話したのはこれが最後で、こっちの店舗に配属された6年目の今でも顔すら知らないままだ。
私は遠方地への転勤を決め、一ヶ月後には転勤先の店舗近くのアパートへと引越した。
初めて足を踏み入れた新しい街。
初めての一人暮らし。
初めて一緒に働く同年代の仕事仲間。
転勤前の店舗とは比べ物にならないほど大きくて綺麗で真新しい店舗と、小型店にはなかった最新の備品が揃えられた売り場に高まる私の期待。
小さなお店で楽しく過ごしてはいたが、忙しくも退屈な毎日に、正直マンネリ感は感じていた。
だから、違う環境に身を置いてみるのも面白いかな?と軽い気持ちで動けたのも若さゆえか。
そしてもう1つ、私の背中を押した理由。
それは、人事課の人からの優しい言葉があったからだ。
「甘味ちゃーん!人事課から電話よー!」
お母さん的存在のパートの石松さんが、事務所の扉を大きく開き、トランシーバーがあるにも拘わらず、理美容品コーナーのカタログ整理をしていた私に向かって大声で叫ぶ。
「えっ?私ですか?店長あてじゃなくて??」
私は小走りで石松さんに駆け寄る。
「ううん。"甘味さん"って名指しやったよ」
初めて自分宛にかかってきた本社からの電話に、誰もいない事務所に急いで入り、店長のデスクに一台だけある電話機の受話器を手にとった。
「お待たせしました!甘味ですっ!」
「お疲れ様です。あのっ、……人事課の…"たかはし"と申します」
意外だった。
「あ、はい。お疲れ様です」
私の勝手な偏見なのだが、本社からの電話ときたら、きっと偉そうな話し方のおじさんか、高飛車なお局女性社員からの電話だと思っていた。
「お仕事中すいません。ちょっとだけ時間いいですか?もし忙しかったら、また後でかけ直しますんで」
その声の主は、明らかに若い男性。
電話口で恐縮そうに話す姿が想像でき、初めて話すのにとても好感が持てた。
「今は手が空いてるんで大丈夫です。えーと、どのようなご用件でしょうか?」
「甘味さんに転勤の話が人事課から出ていると思うんですが」
何の取り柄もない一般社員の私なんかにも丁寧な言葉遣いの"たかはしさん"に、考えるなんて言いながら、山本店長にさえ返事をせず、3日間もただ放置していた事を猛烈に反省。
「すみませんっ!早くお返事をしないといけないとは思ってたんですが、そのっ…なかなか決めきれなくて…。でも、今日中には店長に伝えようと思ってますのでっ」
その場しのぎと言われればそれまでだけど、迷っているのは本当の事。
「あ、いやいやっ。催促している訳じゃないんです。自分も、甘味さんの気持ち分かりますから。急な話だったし、それに遠すぎますよね。友達と離れるのも寂しいですもんね。…でもきっと、新しい環境で楽しい事や出会いが沢山あると思うんです」
柔らかなその口調は、私の不安な気持ちに寄り添うようだった。
それはまるで、友達のようで、親友のようで、初めて話したはずの"たかはしさん"に親近感すら感じてしまうほど。
「出会い…ですか。…そうですね。…たかはしさんの言う通りだと思います。だけど…」
私がここで不安な気持ちを漏らしてしまうと、たかはしさんを困らせてしまうのでは、と一瞬の迷い。
「だけど、もう一歩が踏み出せない?やっぱり不安ですか?」
その迷いすら汲み取ってくれるたかはしさんに、私は心の内を明かす。
「…はい。私みたいな田舎者が、そっちでやっていけるのかなって。あまりに都会すぎて馴染めるかなって」
「そうですよね。………でも、甘味さん。転勤の話、ゆっくりでいいから前向きに考えてくれませんか?転勤してきて不安な事があるなら、俺に相談してくれていいしっ」
見ず知らずの赤の他人に、何故ここまで親身になってくれるのか。
私は何故"たかはしさん"に、こんなに転勤を薦められているのか。
その理由は全く分からないにしろ、私の心は既に、"たかはしさん"にほだされかけている。
「フフッ。それじゃあ~。仕事で分からない事があったら、たかはしさんに相談に乗ってもらっちゃおっかな」
「あ、いや!……その、、、相談に乗りたいのは山々なんだけど、、、実は俺、ここに入社してまだ3ヶ月目なんですよね~」
「えー!!それじゃあ、私の方が先輩やん!!」
まさかすぎる返答に思わずタメ口が飛び出し、慌てて訂正する私。
「あ、失礼しましたっ!先輩じゃないですか!」
そんな私の失言に、たかはしさんは電話口でクククッと笑っている。
「でも、役には立たないかもしれないけど、話を聞くぐらいなら俺でも出来るから。不安がらず、こっちに来てほしい。…って、これじゃ、催促してるのと同じだなっ」
最初の柔らかな口調とは違い、徐々にフランクになりながらも懸命に説得してくれる姿勢が、私に遠方地への転勤を決断させた理由の一つ。
「分かりました。私、転勤します」
たかはしさんのおかげで迷いは吹っ切れ、自然と頬も緩む。
「本当に?!」
「はい。たかはしさんの押しに負けました。私、そっちに行きます」
「やった!!マジか!!ありがとう!!じゃあ、俺!早速、課長に伝えてくるからっ!甘味!またな!」
「へ?」
急な呼び捨てにその真意を聞こうにも、ガチャ!と勢いよく切られた受話器を呆然と見つめるしか出来ない私と、プープープーと鳴る電子音だけがその場に残った。
"甘味!"
突然、私をそう呼んだ"たかはしさん"
「どっかで聞き覚えがある声なんよねー」
人差し指を口に当て、「んー???」と頭をひねってみても、思い出しそうであと少しで思い出せない歯痒さ。
「え??誰やったっけなーー???たかはしさん、たかはしさん、、、」
でも、今も昔も"たかはし"という苗字の知り合いはいないはず。
だけど確かに。
「懐かしい感じがしたんやけどなー」
まだ耳に残るあの声に、昔そう呼ばれていた記憶はあるのに………
「甘味くん。人事課から電話やったんやろ?なんだって?」
その声に振り向くと、石松さんの大きい声が聞こえたであろう山本店長が売り場から事務所に戻ってきていた。
「あ、店長。えーと、転勤してきて欲しいって言われまして」
「人事課の人が?えー?!わざわざ甘味くんに?転勤候補者に本社の人間が直接電話するなんて初めて聞いたっちゃけど??」
「そーですよねー?私が転勤を決めたら"やった!"とか言ってたんで、ノルマがあったんですかね?」
「そんな訳ないやろー??」
「ですよね」
自分で言っといて、私はフフッと噴き出す。
「あっ!それはそうと。店長!改めて、私、転勤します!」
「そっか。甘味くんがおらんくなると寂しくなるね。若い人がいるだけで売り場に活気が出るっちゃんね。でもまぁ、甘味くんが決めた事やけん僕も応援するよ。一応、僕からも人事課に連絡をいれとこうかな」
「はい、お願いします!」
向こうに行ったら、会う機会はあるのかな?
それにしても、"たかはしさん"って面白い人だったな。
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