願えば初恋

わいあーる

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◇嘘つきはどっち?◇

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そんな若林ちゃんとの束の間の楽しい時間なんて一瞬で終わり、その後もすっかり砂東フロア長の接客の後処理に巻き込まれ、気付けばとっくに18時だ。

あの後の引き継ぎでも「文句は後で聞くから…」なんて言っておきながら、そんな暇さえ与えてくれず、次から次へと砂東フロア長の指示が飛んできて。 

手にはいまだに減らない何件もの伝票で、私は一人パンク状態。



「あー、もう!これも倉庫に持っていかなきゃ明日の出庫便に間に合わないよー!」

同級生でも、今はアイツの方が立場は上。

心配させないように若林ちゃんには突き返す!なんて強気な事を言ったが、上司からの指示が出れば従うしかないのがしがない平社員の性だろう。

だけど、自分の仕事が出来ない苛立ちと、遅番とはいえいまだにご飯休憩にすら入れていない状況に私の空腹レベルはMAXで。

「まったく!どれだけ売るのよっ!自分で処理出来るくらいにしといてよねっ!」

重い荷物が乗っている台車を押しながら、ブツブツと不満をもらす私の目線の先には愛しの休憩室。

「もー、疲れた!流石にちょっと休もっ!」

台車をいったん壁に寄せ、渇いた喉を潤す為休憩室へ私は足を向けた。




  ➖➖➖➖ガチャ!!➖➖➖➖


誰もいないだろうと高を括り、勢いよく休憩室の扉を開けた瞬間、激しく後悔そして湧々と込み上げてくる怒り。

こんな時間に休憩室で1人でご飯を食べていた男性。それは、お弁当を広げた砂東フロア長だ。

「静かに開けろよ。扉が壊れるだろ。お前はただでさえバカ力なのに」

久しぶりに会ったアンタが私の何を知っていると言うんだ?!

知ったような口を聞く砂東フロア長にズカズカと詰め寄り。

「はぁ?!失礼ね!てゆーか、何で自分だけちゃっかりご飯食べてるんですか?!」

「飯くらい食うだろ?朝から何も食ってねんだぞ」

「いや、いやっ。食うなとは言ってないんですよ!ただ、私より先に食べてるのが問題なんです!私は砂東フロア長の仕事の後処理で、まだご飯に行けてないんですけど?!」

「バカだな。それは、お前の要領が悪いだけだろ。隙見て食わねぇと倒れるぞ」

砂東フロア長は、正論とマイ箸を私に振りかざす。


「なっ!」

砂東フロア長の方が正論だとは分かっているが、何も言わず引き下がる私ではない。

だが、お腹が空きすぎて今は反論すら出来ない。

ここは一時、休戦だ。

「フンッ!まぁいいわよ!」

自販機まで向かい携帯電話をかざし、いつも買っているパックのいちごミルクを買う。

「まだそれかよ。変わんねーな」

そう言い鼻で笑う砂東フロア長。

「疲れた時の糖分補給はこれが1番早いのよ」

自販機の前でパックに付いているストローを取り出し、そのままプスッと穴に突き刺し、いちごミルクを口に含む。

「あの頃は言う程動いてねーだろ。自分の机でダラダラしてた癖に」

「うるさいわね。人のする事にごちゃごちゃ口を挟まないでよね!」

「分かったよ!てか、そんなん飲む暇があるんなら早く飯食えよ」

「明日出す荷物を倉庫に持ってったらすぐにご飯にします!」

こっちだって順序立てて仕事をしているんだ!と文句を言えば、砂東フロア長も黙って私の話を聞き入れるタイプでない事は知っている。

「腹が減ったら簡単に済む仕事も出来なくなるだろ」

「もー、しつこいって。ちょっとここ座るわよ」


砂東フロア長の前の席に座り、もう一口いちごミルクを口に含む。

私がわざわざ砂東フロア長の前に座った理由。

それは、砂東フロア長の目の前にある手作り弁当に興味を持ったから。

「ふーん」

コイツにも、こんな美味しそうな弁当を作ってくれる彼女がいるんだ。

そう思うと何だか笑えてくる。

あの砂東くんに女の影。

でもまぁ、この容姿でモテないわけないよな。

売り場にいても一際目立つ砂東フロア長は、女性従業員だけでなく女性客にも注目の的だった。

面白い!
これは彩花に報告せねば!

またまた情報共有と、私は一人ほくそ笑む。

「人の弁当見て何ニヤついてんだよ」

「いや、それ。…彼女の手作りなんでしょ?砂東フロア長も隅に置けないですね~」

ここぞとばかりに茶化す私に「違う。」と一言、砂東フロア長は冷ややかな視線を私に向ける。

「また、またー。隠さなくてもいいですって。その顔だけが唯一の取り柄なのにモテなくてどーするんですか。宝の持ち腐れですよ?私が砂東フロア長ならフル活用ですよ。あっ!まさかっ!皆にバレるとチヤホヤされなくなるから隠しとくんだ!相変わらず嫌な奴ー!」

遠慮なしに好き勝手に言い放ち、手に持っているいちごミルクを飲み干そうとした瞬間、ズボンのポケットに入れている携帯電話のバイブレーションに気付く。

携帯電話の画面を確認すると、勇里からの着信だ。
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