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第5章 ガルバン帝国
エピローグ02
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「ところで、ぼくの世界はどうでしたか」
「ああ、すごく楽しかったよ。
食事を作ったり、掃除に洗濯。
すごく新鮮だった。
そして、こっちの世界の庶民の暮らしを満喫させてもらった。
ニャール王国の国民もこれくらい豊かで娯楽に満ちた生活をしてくれたらいいのにな。
それから、この国のように明日の衣食住を心配しなくていい国にできればいい」
そう、この異世界転移の物語は王子と乞食の物語だったんだ。
子供のころに読んだ童話だ。
何不自由なく育った王子が窮屈な暮らしに飽き、乞食の少年と入れ替る物語だ。
入れ替りによって王子は庶民の生活を知り、よりよい王になるという話。
すこし違うけど、そういうことだろう。
今回の場合、王様とおっさんだけどね。
もうそろそろ元にもどる時なのだろう。
これでやっとぼくもゆっくりできる。
コヨミと一緒に家に帰ろう。
ぼくはコヨミを抱き上げようとする。
コヨミたちはまだ意見交換をしているようだ。
コヨミを触ったとたん、コヨミの思念が流れ込んでくる。
「もうたくさんだにゃん。
この世界には〇ゅーるもカリカリもないにゃん。
こたつもないし、ストーブでぬくぬくもできないにゃん。
やっぱり元の世界がいいにゃん」
「家から出れないのはいやだにゃん。
森の中や原っぱを走り回りたいにゃん。
鼠とか鳥を捕まえて食べたいにゃん」
むこうのコヨミも不満をぶつける。
「そうでちゅね。
元の世界がいいでしゅね。
それなら、もどしてあげましょうね」
あの時の女神が猫たちに話しかける。
もしかして、この異世界転移は王子と乞食の物語じゃなくて。
都会のねずみと田舎のねずみの話だったのか。
でも、まあいいか。
退職後の平凡な毎日が大冒険の日々になったんだからな。
向こうの世界もなかなか楽しかった。
でも、もうたくさんだ。
ぼくもあれから5年、もっと歳をとった。
これからは年金でももらってゆっくり好きなことでもやっていこう。
元の世界にはいろいろな娯楽があるんだからな。
とりあえず、5年分の映画でも見ようかな。
「そろそろ元に戻る時間ですね。
本当にありがとう」
キャルロッテ王が手を出す。
ぼくはその手を握る。
「こちらこそ、いい経験をさせていただきました。
ありがとうございました」
ぼくもお礼をいう。
これでお別れだ。
「あ、そうだった。
言い忘れたことがある」
キャルロッテ王は最期に振り返る。
「なんでしょうか」
「いや大した事じゃないんだ。
君の世界で少し暇があったんで、Xとかいうのでつぶやいていたんだ。
そうしたら、なんか衆議院議員に立候補させられてね。
総理大臣に祭り上げられてしまったんだ。
いつも猫を抱いているから猫宰相とか言われてね。
まあ、あとはたのむ。
君ならできるよ。
あんな困難なところから国を立て直したんだからね。
簡単なことだろう」
さらっととんでもないことを言う。
「ちょっとまて!」
ぼくは王を呼び止める。
でも、光はだんだん薄れていって、景色が変わっていく。
ぼくは豪華な執務室に座っていた。
首相官邸ってとこなんだろう。
「そろそろ閣議の時間です」
秘書らしい人がぼくを呼びに来る。
せっかくゆっくりできると思ったのにな。
仕方ない。やれるだけやってみようか。
コヨミ、手伝ってくれるよな。
またキャットGPTさんの力を借りないといけないようだ。
コヨミはニャーと鳴く。
ぼくはコヨミを抱いたまま立ち上がり閣議室に向かうのだった。
了
「ああ、すごく楽しかったよ。
食事を作ったり、掃除に洗濯。
すごく新鮮だった。
そして、こっちの世界の庶民の暮らしを満喫させてもらった。
ニャール王国の国民もこれくらい豊かで娯楽に満ちた生活をしてくれたらいいのにな。
それから、この国のように明日の衣食住を心配しなくていい国にできればいい」
そう、この異世界転移の物語は王子と乞食の物語だったんだ。
子供のころに読んだ童話だ。
何不自由なく育った王子が窮屈な暮らしに飽き、乞食の少年と入れ替る物語だ。
入れ替りによって王子は庶民の生活を知り、よりよい王になるという話。
すこし違うけど、そういうことだろう。
今回の場合、王様とおっさんだけどね。
もうそろそろ元にもどる時なのだろう。
これでやっとぼくもゆっくりできる。
コヨミと一緒に家に帰ろう。
ぼくはコヨミを抱き上げようとする。
コヨミたちはまだ意見交換をしているようだ。
コヨミを触ったとたん、コヨミの思念が流れ込んでくる。
「もうたくさんだにゃん。
この世界には〇ゅーるもカリカリもないにゃん。
こたつもないし、ストーブでぬくぬくもできないにゃん。
やっぱり元の世界がいいにゃん」
「家から出れないのはいやだにゃん。
森の中や原っぱを走り回りたいにゃん。
鼠とか鳥を捕まえて食べたいにゃん」
むこうのコヨミも不満をぶつける。
「そうでちゅね。
元の世界がいいでしゅね。
それなら、もどしてあげましょうね」
あの時の女神が猫たちに話しかける。
もしかして、この異世界転移は王子と乞食の物語じゃなくて。
都会のねずみと田舎のねずみの話だったのか。
でも、まあいいか。
退職後の平凡な毎日が大冒険の日々になったんだからな。
向こうの世界もなかなか楽しかった。
でも、もうたくさんだ。
ぼくもあれから5年、もっと歳をとった。
これからは年金でももらってゆっくり好きなことでもやっていこう。
元の世界にはいろいろな娯楽があるんだからな。
とりあえず、5年分の映画でも見ようかな。
「そろそろ元に戻る時間ですね。
本当にありがとう」
キャルロッテ王が手を出す。
ぼくはその手を握る。
「こちらこそ、いい経験をさせていただきました。
ありがとうございました」
ぼくもお礼をいう。
これでお別れだ。
「あ、そうだった。
言い忘れたことがある」
キャルロッテ王は最期に振り返る。
「なんでしょうか」
「いや大した事じゃないんだ。
君の世界で少し暇があったんで、Xとかいうのでつぶやいていたんだ。
そうしたら、なんか衆議院議員に立候補させられてね。
総理大臣に祭り上げられてしまったんだ。
いつも猫を抱いているから猫宰相とか言われてね。
まあ、あとはたのむ。
君ならできるよ。
あんな困難なところから国を立て直したんだからね。
簡単なことだろう」
さらっととんでもないことを言う。
「ちょっとまて!」
ぼくは王を呼び止める。
でも、光はだんだん薄れていって、景色が変わっていく。
ぼくは豪華な執務室に座っていた。
首相官邸ってとこなんだろう。
「そろそろ閣議の時間です」
秘書らしい人がぼくを呼びに来る。
せっかくゆっくりできると思ったのにな。
仕方ない。やれるだけやってみようか。
コヨミ、手伝ってくれるよな。
またキャットGPTさんの力を借りないといけないようだ。
コヨミはニャーと鳴く。
ぼくはコヨミを抱いたまま立ち上がり閣議室に向かうのだった。
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