王様とただのおっさん。 入れ替ったら断頭台でした。異世界はキャットGPTとともに。

第2章 異世界へ転移

ビリジアンテ連邦国 アバドン議長02

　キャルロッテ王。
　会うのは初めてだが、なかなか感じのいい男じゃないか。
　先代のベルナール王とは全然違う。
　あいつはいけ好かないやつだった。
　偉そうで、頭が切れて、声が大きくて。
　それに比べ、キャルロッテは柔和だが鈍そうだ。
　自分の国を売ろうとするんだから、自信がないのだろう。

　それにしても、この会議に先がけて３国で話し合ったんだが、そこで分割方法について合意した。
　それと、キャルロッテ王を断頭台に送ることが決まった。
　しかし、この無害そうな男は殺さなくていいのではないと思う。
　たぶん、生かしておいても害にならないだろう。
　助命に力を貸すことで我が国に恩を感じるかもしれないな。
　とにかく、分割の話のあとだ。

　まずわたしがニャール王国の南部の分割統治について話をする。
　南部の農地を我が国が管理することにして、国民に仕事を与える。
　もちろん農奴としてこきつかうんだがな。
　それと技術者には出世の道を示しておいた。
　使いつぶす予定だがな。
　
　わたしは話を終わってキャルロッテ王を見る。
　あれ？
　あの生え際って不自然じゃないか。
　それに頭皮がすこしずれている気がする。
　たぶん鬘だな。
　往生際の悪いやつだ。
　ハゲくらいその歳になったら、どうでもいいんだがな。
　
　そのとき、膝の猫が暴れだす。
　会議に退屈したんだろうな。
　腕から抜き出てキャルロッテ王の身体を登ろうとする。
　胸を登り、肩の上に登る。
　鳥じゃないんだからな。
　だから、こんな重要な会議に猫なんて連れてくるべきじゃないんだ。

　それどころか、王冠に興味をもったみたいだ。
　王冠に猫パンチをする。
　その力で王冠がすこし回る。
　それがおもしろいのか猫は何度もパンチをする。
　そのたびに王冠がまわり、それについて鬘もまわる。
　やはり思ったとおりだ。

　そのうちちょうど１８０度まわった形になる。
　キャルロッテ王は何事もないように、髪の毛をかき分けて真剣に話を聞いている。
　それが、より面白い。
　わたしは笑いそうになるのをこらえる。

　その時、猫の強いパンチが決まる。
　そのとたん、王冠と鬘が飛ばされ、床に落ちる。
　キャルロッテ王の頭があらわになってしまう。
　そのとたん、わたしも我慢の限界となり、吹き出してしまうのだった。