王様とただのおっさん。 入れ替ったら断頭台でした。異世界はキャットGPTとともに。

第5章 ガルバン帝国

比留間明夫43

　ガルバン帝国軍が続々と国境の砦の前に集まっている。
　まるでスペクタル映画でみた光景だ。
　それにしても敵が多すぎねえ？
　本当に大丈夫なの？キャットＧＰＴさん？
　いくらぼくでも街道の途中に戦車を派遣して邪魔するとか考えたんだけど、キャットＧＰＴさんは何もしなくていいっていう。
　本当に？ちょっと壊れてたりしないよね。
　どうやっても無理とかないよね。

　いろいろ問いかけるけど、キャットＧＰＴさんの回答は変わらない。
　なにもしないでいいにゃん。
　今回は一気に叩き潰す必要があるらしい。
　局地戦に勝ってもなんの意味もない。
　ここで戦争を終わらせないと、泥沼化するってことみたいだ。
　そのためにここにすべての戦力を集中している。
　戦車や大砲、近代兵器部隊、ほとんどをこっちに集めている。
　王都防衛に少し残してきただけだ。

　キャットＧＰＴさんによると向こうも同じみたいだ。
　帝王の戦をみせてやるってことらしいけど。
　同じことやってもこっちは兵力で無茶苦茶劣ってんだけど。
　でも、ぼくが考えるよりもキャットGPTさんに任せたほうがいい。
　兵法とか勉強したこともないし、戦場に出たのはこっちの世界にきてからなんだからな。
　ぼくもなんか考えたくなるけど、これは人の命がかかっているんだ。
　いままでもキャットGPTさんのいうとおりにしてうまくいってきた。
　ぼくの素人考えに人命をかけるわけにはいかない。
　もちろん、キャットGPTさんのいうとおりにしても犠牲者は出る。
　それについてはぼくが受け止めてやる。
　ぼくの長所は任せられることだと思うから。
　どんな仕事だって自分ひとりでできるものではない。
　それを自分でやろうとするといろいろな歪みが出てくる。
　だから、ぼくは仲間を徹底的に信じる。
　そして、信じた限りは結果に対して責任をとる。
　ぼくはそうやってきた。
　こっちでも同じだ。

「キャルロッテ王、敵は次々と準備をしています。
　櫓を組んで砲台や投石機を設置しています。
　完成するまでに戦車で壊したほうがいいのではないでしょうか」
　こちらにも軍師はいる。
　だから、いろいろな考えを述べてくる。
　しかし、ぼくが考えることを超えてはいない。
　常識的な考え方だ。
　キャットGPTさんに問いかけても、方針をかえる必要はないという。
　
　とにかく、もうすぐだ。
　これが終わったら、こっちの世界でもゆっくりできるのだ。
　キャットGPTさんから指令が来る。
　近代兵器と騎馬隊の準備をしておくみたいだ。
　ぼくは部下たちにそれを伝える。
　そして、ぼくも配置につかなくてはならない。
　ぼくはこよみを抱いたまま、ぼくの持ち場に向かうのだった。