王様とただのおっさん。 入れ替ったら断頭台でした。異世界はキャットGPTとともに。

第5章 ガルバン帝国

比留間明夫46

　魔族の一団は戦車の前で止まる。
　その中からローブの魔術師っぽいのと、幼女が前に出る。
　さっきから先頭を歩いていたやつらの中の２人だ。
　たぶん、幹部なのか。
　位置からみて中央の狼の獣人がリーダーなんだろう。
　それと側近の一際大きなオーガ。
　その４人が中心とみられる。

　いきなり戦車の真上に魔法陣が現れる。
　アニメで極大魔法が撃たれるときに出るあれだ。
　赤い円のなかで見たこともない文字がぐるぐる回っている。
　さっきの進軍のときから戦車の中の兵士には脱出するように言ってある。
　いまのところ戦車は空だ。

　でも逃がせばいいって？
　戦車に攻撃をさせる必要はあるのかって？
　もし戦車が破壊されたら無駄になるって？
　確かにそうだ。
　戦車は量産できない。
　この５台の他には５台。
　半分の戦力だ。
　それが破壊されたら相当の痛手になる。

　しかし、魔族の魔法については知識がない。
　コヨミは元の世界の猫。
　元の世界の知識はもっているが、こっちの世界のことはわからない。
　それでも、いままで経験したことはわかる。
　ただ、魔族と戦うのは初めてだ。
　AIにはラーニングが必要なのだ。
　たぶんラーニングをしたらキャットGPTさんは有効な対策を立ててくれるはずだ。
　そのためには戦車の犠牲はしかたない。

　魔法陣から炎が放たれる。
　その炎は戦車を直撃する。
　戦車はそれを食らって燃える。
　そのまま、大爆発を起こす。
　中に火薬を積んでるんだから仕方ない。
　残されたのは戦車の残骸。
　兵士たちはちゃんと逃げられたみたいだ。
　その兵士はダオウルフさんの騎馬隊が保護している。
　運転や砲撃をできる人材は貴重だからね。
　機械はいくらでも作ることはできるんだけど、人は作ることはできない。

「なんとかなりそうかな？」
　ぼくはキャットGPTさんに問いかける。

「大丈夫にゃん。
　理解したにゃん」
　インプットは出来たみたいだ。
　キャットGPTさんは頼もしい返事を返すのだった。