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第2章 S級冒険者炎王アッシュ

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 ぼくたちは先頭集団の中に入って砦につく。
 その間に鋼鉄の翼や紅の麒麟の人とも仲良くなる。
 とくにミリアは紅の麒麟の人にすごく気に入られたみたいだ。
 上級冒険者の人って、暁の虎と違ってすごくいい人が多い。
 力がある人ほど、謙虚な人が多い。
 ぼくもそうありたいと思う。
 まだ、それほどの実力もないんだけどね。
 ライオネルさんはぼくは強くなるよって言ってくれたけど、ライオネルさんみたいになるのはまだまだ先の話だ。

「アッシュ、ちょっと上に上って見てきてくれないか。
 おまえはまだG級だから、見張りでもやってくれたらいい。
 でも、見張りって大事な役目なんだからな」
 鋼鉄の翼の重戦士の人がぼくに仕事をくれる。
 ぼくは砦の壁をよじ登って塔の上に立つ。

「なかなか身軽じゃねえか。
 なんか見えるか」

「ちょっと待ってください」
 ぼくは砦の北を見る。
 目はいいほうだ。
 え、200メートルくらい向こうに何かいる。
 あれは、オーガの集団だ。
「オーガがいます…
 200メートルくらい先に」
「何匹だ」
「1、2、10、11、12、13、14匹です。
 中に大きな赤いのがいます」
「なんだって、赤オーガ。
 それは変異種だ。やばいな。
 とにかく敵は近い、すぐに準備しろ」

 みんなあわただしく動き出す。
 
「ぼくは…」

「しっかり見張ってろ。
 あともう一人行かす。
 偵察の仕事を覚えろ。おまえもおれらの仲間なんだからな。たのむぜ」
 ライオネルさんは、そう言って動き始める。

「ガゼルだ。C級のシーフだ。よろしくな」
「アッシュです。よろしくお願いします」
 小柄な男の人が上がってくる。
 それから、ミリアも。
 彼女も戦力外とされたらしい。
「思ったより近いな。
 それに変異種か。オーガがB級と言われるが、変異種ならA級もしくはS級だ。
 統制がとれているとなると、鋼鉄の翼でも止められるかどうかわからないぜ」
 ガゼルさんはオーガのほうを見て難しい顔をするのだった。

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