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第2章 S級冒険者炎王アッシュ

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 あの、鬼、いやランスロットさんが逃げたって。
 やばいな。
 俺ごとき瞬殺だろうな。
 でも、みんなのためにできる限りのことはやろう。
 ドラにもらった命、町や友達を守るために使おう。
 ぼくも前に出る。

「俺はアッシュ、B級冒険者だ」

「おまえがランスロットの弟子だって。
 少年じゃないか。やめておけ。命を粗末にするな」

「そういうわけにはいかないです。
 ぼくは町のみんなを守らないとならないんです」

「そうか。
 じゃあ、剣を合わせてやろう。
 ただ、俺は手加減はできないんだ」

「いいです。
 ぼくも本気で行きます」
 ぼくは剣を抜く。
 それに合わせてガウェインも剣を抜いて構える。

 ぼくは、間合いをとってガウェインの周りをまわるように動く。
 そうガウェインの隙をつくためだ。

「どこからでも打ち込んで来い」
 ガウェインも、ぼくの正面にくるように動く。
 
 それにしても、おかしい。
 なにがって?それはガウェインは隙だらけなのだ。
 ただ、安易には打ち込めない。
 それはランスロットさんと同じ作戦なのかも。
 ランスロットさんは一か所隙をつくっておいて、ぼくがそこを攻撃すると、それに合わせて打ってくる。
 つまり、罠をはるのだ。
 たぶん、戦略としては正しい。
 隙をつくることにより、相手の攻撃を制御する。
 どこに攻撃が来るかわかってたら、対処は簡単だ。

 でも、すごい。
 ガウェインの隙は一か所じゃないのだ。
 っていうか、隙だらけと言ってもいい。

 逆にどこから攻撃していいかわからない。
 やっぱ剣皇と言う名は伊逹じゃない。

 たぶん、さっきから見てたけど、この人の動きは速くない。
 だから、剣の力がすごいんだと思う。
 ぼくの武器はスピードくらいだ。
 とにかく、何か攻撃をしないと始まらない。
 ぼくは、小手と胴、面にできるだけ速い攻撃を繰り出すのだった。
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