上 下
153 / 188
第5章 ランドバルク王国王女イグレーヌ

イグレーヌ07

しおりを挟む
 どうして?
 ハサウェイは力を込める。
 剣が何かにぶつかっている感じなのか。
 それを力で押し戻そうとする。
 しかし、見えない壁はびくともしない。
 ハサウェイの腕の筋肉がもっと盛り上げる。

 いつの間にか、ランスロットの足元に猫ちゃんがいる。
 もしかして、これが魔法猫の力。
 助けてくれるって本当だったの?

「ランスロット、何をした」

「何もしてないぜ」
 ランスロットも何が起きているのかわからないみたいだ。

「ランスロット、斬れ」
 エヴァンスの言葉にランスロットは剣を振る。
 しかし、いつものランスロットの鋭さはない。
 半信半疑の剣戟。
 ランスロットにも、ハサウェイの剣がなぜ止まったかわかっていない。
 剣を止めたまま空いている胴を薙ぐ。
 鎧に覆われた部分だ。
 あんまり力を込めていない剣。
 それなのに、ハサウェイは吹っ飛ばされる。
 それは、全盛期のランスロットの剣の威力以上。

「どうしたんだ」
 ランスロットは自分の腕を見る。
 そして、何度か剣を振ってみる。

「たぶん、猫ちゃんがなにかしてるの。
 助けてくれるって」
 わたしはランスロットに教える。
 
「おまえが助けてくれるのか?」
 ランスロットは足元の猫ちゃんに話しかける。

「にゃん」
 猫ちゃんは返事をする。

「猫が助けてくれるんなら百人力だな」
 ランスロットは猫ちゃんを抱き上げる。
 猫ちゃんはランスロットの肩に登る。
 
「じゃあ行くぜ」
 ランスロットは前に走る。
 そこには、残りの黒騎士がいる。
 斧、槍、剣、得意な得物を構える。
 この人たちも悪魔の薬で強化されている。
 黒騎士たちはランスロットに襲い掛かるのだった。
しおりを挟む

処理中です...