バレンタインってチョコの味？

バレンタインってチョコの味?

バレンタインデー。それは、女の子にとってとても大事な日。

思いを寄せる男の子にチョコを送る日・・・

「よし！成功。大成功！」

私は、手作りしたチョコの最高の出来に大声をあげてしまった。

あ、申し遅れました。私は相宮　詩穂（あいみや　しほ）と申します。

県立水野原高校（けんりつみずのはらこうこう）２年生です。

そして、今日は待ちに待った２月１４日。

そう、バレンタインデーです。

そして、渡す相手はただ一人、高校入学してからずっと片思いの櫻井　蓮君（さくらい　れん）君。サッカー部のエースでありながら頭脳明晰の完璧男子。

彼に渡すためにこの１年間お菓子作りに励んできた。

私は出来上がったチョコを丁重に包装する。

「お姉ちゃん。早くしないと遅刻するんじゃない？」

私に話しかけてきたのは妹の美穂。星鏡中学（ほしかがみちゅうがく）の２年生。

「ふふふ。今日のお姉ちゃんは違うのよ。美穂。」

そう、私は、朝偶然を装って蓮君に会い、さりげなくチョコを渡す。

大体の時間は把握できている。

「ふーん。」

興味なさそうに美穂は、キッチンを去った。

私は時間を気にし予定時間に家を出た。

——通学路

  以前に、ここで会ったことがあったから、きっとここで・・・

「・・・あぁ、確かにな。」

こっ・・・この声は、愛しの蓮く・・・

「あれ？詩穂じゃん。」

蓮君の声に反応し振り返った時に、馴れ馴れしい声が聞こえた。

「新一なんであんたがここに！？」

この馴れ馴れしく私に声をかけてきたのは、私の幼馴染である瑞月　新一（みつき　しんいち）

顔は蓮君に劣るもののめっちゃイケメンだけど、性格が蓮君とは天と地ほどの差。

「なんでって俺はいつも通り、蓮と登校してるからなぁ」

「あ、そっか、新一もサッカー部だったっけ。」

ほとんど蓮君を見ていたから、新一の事はあまり気にしていなかった。

そもそも気にする義理もないし。

「相宮さんがこの時間にいるのは珍しいね。」

それはそのはず、チョコを渡すために、時間さえも調節して出てきたのだから。

でも、新一が一緒なのが予想外。

私のチョコ渡しポイント１失敗。

——学校

朝は新一がいて失敗してしまったけど、まだまだ放課後がある、今日は部活がない日だから校門で待って渡せればきっと・・・

そう考えると、自然と笑みがこぼれる。

「・・・や・・・宮・・・相宮！！」

「は、はい！」

ガタガタ。

ふと声をかけられ私はハッと我に返り反射的に立ってしまった。

「いや、立てとは言っておらん。」

「あ、はい・・・」

私はそのまま座る。

「相宮、放課後ちょっと職員室に来なさい。」

「え？」

ちょっ・・・冗談じゃない。貴重な放課後がこんな先生に取られるなんて・・・

こうして私のチョコ渡しポイント２も失敗。

——放課後

「はぁ。こんなに時間を取られるなんて。」

結局チョコを渡すことはできず。

なんでこんなことに・・・何がいけなった？

いや・・・きっと何も誰も悪くない。すべて私の不注意せいだ。

いつも素通りする公園には、カップル達が集い彼女が彼氏であろう男の子にチョコを渡している。

今の私には一番心をえぐられる光景だ。

「（早く、この場から離れたい）」

そう思い視線を前に戻そうとすると、そこに見覚えのある顔が・・・

「蓮君！！」

「え？相宮さん」

カップル達の中に蓮君の姿を奇跡的に見つけた。

私のチョコ渡しポイントは意外なところで３つ目があった。

「珍しいね、いつもこの通学路通るんだ？」

私はこの機会を逃すことのないように蓮君に駆け寄った。

早く渡さなくちゃ。

「あの、蓮君・・・その・・・」

「ん？何？」

「あの！！」

「蓮ーごめん待った？」

私の声を遮るように一人の綺麗な女の人が蓮君に駆け寄ってきた。

この制服、私立星鏡学園（しりつほしかがみがくえん）の制服だ。

「璃子（りこ）いや、そんなに待ってないよ。」

「？その女の子は？」

璃子と呼ばれた女の人は私を見て首を傾げた。

「あぁ、同じクラスの・・・」

え、ちょっ・・・待て待て待て！！！私の嫌な予感を当らないで！！

「相宮さん・・・ね。私は蓮の彼女の三石　璃子（みついし　りこ）。蓮と同い年ってことは一個下ね。」

私の中でやっぱりという気持ちと外れてほしかったと言う気持ちが混ざり合った。

「それで、相宮さん。俺に何かあったんだっけ？」

「え？ううん。ただ、知っている顔が見えたから。それじゃね。」

「うん。また学校で。」

私は逃げるようにその場を去った。

——切縁橋（きりえんばし）

ちょっと考えれば分かることだった。蓮君くらいの人に彼女がいない訳がない。

自分のことだけ考えて馬鹿みたいにはしゃいで・・・

「もう、どうでもいいか・・・」

「あれ？詩穂か？」

私が橋の上で流れる川を見ていると、ふと名前を呼ばれ振り返ると新一が立っていた。

「新一。」

「お前、何泣いてんだよ。」

私は、蓮君にチョコを渡せなかった経緯をが話した。

「やっぱりな。朝のあの時間に会うなんておかしいと思ったんだよ。お前、いつも早い時間に教室にいたもんな。朝は俺がいたから、渡せなかった。んで放課後はあのハゲメガネに呼び出されて渡す時間が奪われ、さらに公園で渡そうと思ったら、彼女がいたと・・・」

「新一は知ってたの？蓮君に彼女がいたこと。」

「んーまぁ。部活のうわさ程度でな。あいつ、自分のことあんまり話さないからなぁ。」

「はぁ～やっぱり私馬鹿だ。」

「そんなに自分、責めんなよ。」

「・・・分かったようなこと言わないでよ。新一に私の気持ちなんてわかるわけないじゃない！」

「お、おい落ち着けって。」

「もう、私の事ほっといてよ！」

私は、カバンからチョコを取り出し、橋の下の川へ投げ捨てた。

「おまっ馬鹿！」

私が川へ投げ捨たあと、新一がブレーザーを脱いで川へ飛び込んだ。

「新一！」

私は、川沿いから橋を折り、上がってくる新一のもとへ駆け寄った。

「ひーさみぃーつめてぇー。」

「あ、当たり前でしょ、２月のこんな寒い日に川に飛ぶ込むなんて。馬鹿じゃないの！？」

私は持っていたハンカチで新一の濡れた顔や髪を拭いた。

「馬鹿はどっちだよ。お前これ大事に持ってたんだろ！？捨てるなんて。」

「だってもう・・・分かんないんだもん・・・なんか色々あって頭ぐるぐるしちゃって、どうしたら良いか分かんなくなって・・・持ってても意味ないもん。誰も上げる人なんて。」

「じゃあ、俺がもらってやるよ。」

ふいに新一が言って言葉に耳を疑った。

「え？でもぉ・・・」

「か、勘違いすんなよ。このチョコがもったいないからもらってやるだけだからな。それに、こんな事したら、お前の大切にしてた気持ちまで捨ることになっちまうだろうがそんなの、このチョコレートも可哀想だろ。だからもらってやるだけだからな。」

「う・・・うん。ありがとう。」

自然と目から涙が溢れ出てきた。

「お、おい泣くなって・・・」

私のチョコ渡しポイントは意外な形で成功した。

——３年後

「・・・」

「どうした詩穂？表札なんて見て。」

「うん。この表札見るのも今日で最後かなって思ってさ。」

表札には『瑞月　新一・相宮　詩穂』と書かれていた。

あの後、私達は付き合うことになり三年経ちました。

蓮君との気持ちもすっきり切り、明日私達は晴れて結婚します。

「早くしないと置いてくぞ。」

「ちょっと、待ってよー」

本当に大切な人は、自分で見つけなくてもきっとすぐ近くにいたりするもの。

新一は私に大切なことを教えてくれた。

だから、皆さんにもきっといるはずです本当に大切な人が。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ＥＮＤ