13 / 21
第1章 鎌倉
第13話 訣
しおりを挟む
やがて年が明け、弥生の末に平家一門は壇ノ浦にて滅びた。捕らえられた一門の大将、平宗盛らが鎌倉へと連れられて来るが、彼らは鎌倉へは入らずに腰越で待機し、やがて水無月に罪人として京へと戻される。同時に中将の君もまた、鎌倉を離れることとなった。
「千手の前、ご苦労でした。明朝、中将殿は南都に向かわれる。最後の沐浴とお世話を頼みます」
工藤祐経の言葉に千寿は黙って頷いた。
夜明け、鳴く鳥の声を千寿と中将の君はひっそりと聴いていた。
「ちじゅ、長く有難う。約束、頼みましたよ」
柔らかく微笑む中将の君に千寿は微笑み返した。
中将の君は軽く頭を下げ、背を向けると小部屋を出て行った。
それが千寿が中将の君を見た最後。
去って行く足音に千寿は琵琶の音を重ねた。
——愛しく思っています。さようなら。
口に出来なかった言葉を乗せて。
それから千寿は御所で変わらず御台所付きの女官として勤めた。
やがて、噂が入ってくる。中将の君、平重衡は罪人ゆえに京には入れず、その手前で妻と今生の別れをして自らの供養を頼み、法然上人から受戒を受けた後に奈良へ送られ斬首されたという。
「法然上人」
その名を聞いて千寿の顔が輝く。
——では、中将の君は救われたのだ。
千寿は懐から横笛を取り出した。
最後の夜に手渡された物。
「私が貴女に遺して差し上げられる物はこれしかない。でも吹いてはいけませんよ。いつか困った時に用立ててください。それまでは、貴女を護る物としてお側に」
やがて千寿は里に帰り、女子を産んだ。椿のように艶やかに美しい子。その子の世話を父母に頼み、自らはまた鎌倉に戻って琵琶を掻き鳴らす。その音色は人々を魅了し、宴においては欠かせぬ存在となった。でも千寿の心はまるで踊らなかった。
「千手の前、御所様が貴女の琵琶をご所望よ」
女官仲間に呼ばれ、琵琶を抱えて広間へと向かう。でも、入った途端、妙な胸苦しさを覚える。漂う風に、どこか刺々しい波を感じた。御所の隣に座していた御台所が口を開く。
「範頼殿の瘧の病(マラリア)が平癒したので、その感謝の宴よ。姫も貴女の琵琶を聞きたいと言っているの。お願い出来るかしら」
御台所の隣には、一人の幼い姫君が冷えた目で座していた。父に夫を殺された姫君。その目は部屋の中の何も見ていなかった。
千寿は黙って頭を下げると、撥を握って一掻きする。
——ボロン。
音が溢れ、風が揺らぐ。と共に、姫君が顔を上げて何かを目で追った。千寿の持つ琵琶の弦に弾かれて消えた何かを。
「魔除けの琴を弾いて欲しい」
中将の君の言葉が、ふと思い起こされた。
千寿は撥を握り直し、強く、激しく搔き鳴らし始めた。肌にビリビリと震えが走る。
この広間に充満している何か善くないモノ。想いなのか怨霊なのかわからないけれど、千寿の琵琶が発した波は、それらを弾き飛ばし砕け散らし、砂塵のような細かな粒へと変える。やがて千寿は撥を床に置くと、右手の指でそっと弦を撫で揺らした。音の波はそれら微かな粒を慰めるかのようにふわりと包んで風に乗る。そして、開け放たれた蔀戸から遠く天へと昇っていった。
姫君の目から涙が一筋、溢れ下るのが見えた。
——行かないで。
そんな声が聞こえた気がした。それは自分の声なのか、姫君の声なのか。
——ゴトッ。
琵琶が落ちた。拾おうと身を屈めた千寿は、そのまま琵琶の上に倒れ込んだ。
目の端に映る転がる琵琶。転がされた自分。あれは遠い過去の景色。幸せの始まりの……。
「千手の前!」
揺さぶられて目を開ける。御台所が自分を見下ろしていることに気付き、慌てて飛び退る。
「も、申し訳ございません」
「どこか具合が悪いの?」
「いいえ。急に目が眩んだだけです。すぐに治ります。大変失礼致しました」
そう言って胸を押さえる。その手に笛が当たった。
——ああ、と思う。
行かないで。私を置いて行かないで。
笛がそう言っている。苦しんでいる。
そうだ。誰にどう思われようと、何と言われようと付いて行けば良かったのだ。置いて行かないでと口にすれば良かったのだ。叶えられないと分かっていても、その想いすら封じ込めてしまったのは何故なのか。
翌朝、千寿は郷里に戻された。
暗い部屋で口に笛をあてがう。思いっきり息を吸い込んで笛へと吹き込む。でも、ヒョロリとしか笛は応えてくれなかった。
千寿は立ち上がり、外へ出た。目に映る高貴な青紫の色。川辺に咲き乱れる杜若の花。
中将様」
千寿は杜若の花に手を伸ばした。
が、 ぬかるみに足を滑らせ川へと落ちる。幼い頃から遊び、慣れた川。でも今日は足に力が入らない。溺れそうになる。顔を上げようともがいたら、懐から笛が擦り抜け、川の流れに乗った。
——待って、それは中将様の!
でも、身体が思うように動かない。
ふと迷った。魔寄った。
——このまま溺れてしまえばいいのかもしれない。どうせ自分など、もう生きていてもしようがないのだから。
手の力を抜こうとした時、
——ヒュルリ~
笛の音が聴こえた気がした。
「中将様!どこ?」
身を起こして駆け出そうとした千寿だが、杜若の茎に阻まれて、その場に突っ伏す。
——いいですよ、いらっしゃい。共にゆきましょう。
優しげな声と共に差し出された白い手を握ろうと顔を上げたら、それは中将の君ではなく、人骨だった。
悲鳴を上げて振り払う。
——嫌だ、魔に取り憑かれたら中将様に逢えなくなる。
「南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」
心の中で必死に唱える。魔が差したことを陳謝する。でも、川底より伸びてくる白い手に足を掴まれそうになる。
中将様、助けて!」
心の中で必死に藍色の直垂を思い浮かべた。
——ピー!
甲高い音が鳴り響き、のしかかっていた重苦しさから解放される。音の鳴った方に目を向ければ、川の中洲に子どもが立っていて、拾い上げた笛に口を付けていた。
「中将様!」
ゲホゲホと噎せながら千寿は中空に向かって必死で訴える。
「貴方様でなければ。私は貴方様でなければ駄目なのです。どうか付いてゆくことをお許しください。置いていかないで!」
「千寿、しっかりしなさい!」
腕を引っ張られて気付けば、両親が千寿を川から引き上げてくれていた。
「可哀想に。鎌倉で余程酷い目に遭ったんだね。もう二度と行かなくて良いからね」
いいえ、と千寿は首を横に振った。
「行かなきゃ。琵琶を弾かないと」
天か地か、その狭間か。どこかにいるあの人に届くように。
でも千寿の目の前は暗くなっていき、音と光も全てどこかに吸い込まれていった。
——ジージー ジージー。
暗闇の中、虫が鳴いている。あれは中将様と共に聴いた虫の音。
「ちじゅ」
呼ばれて目を開ければ、見覚えのある太い柱に梁。馴れ親しんだ屋敷の自分の部屋の風景。その暗闇の中、蛍のように儚く煌めく涼やかな瞳が自分を見下ろしていた。
「中将様?」
手を伸ばすが、その指は空を掻くだけ。触れることは出来ない。起き上がろうとした千寿の額に白い人差し指がかかる。その人差し指は、ゆっくりと中将の君の口先で立てられ、彼はニッと悪戯な顔をして、しーっと千寿の言葉を止めた。
「御所様が仰っていた。田舎武士の娘もなかなか良いものですよ、と。情に厚く、一度決めたら、てこでも動かぬ。真にそうなのですね。お陰で私も御所様と同じく、東女に骨抜きにされてしまった」
「え?」
中将の君は目元を緩めた。やれやれ、と言わんばかりに肩を竦める。
「いいでしょう。貴女には借りばかりを遺してしまった。その償いを今度はさせていただきます」
「連れて行ってくださるのですか?」
千寿が問うたら、中将の君はそっと微笑んだ。
「ええ。確かに貴女の言う通り、地獄はなかった。ただ、自ら為したことの報いは受けねばなりません。長い時がかかりますよ。覚悟は宜しいですか?」
千寿は笑顔で頷いた。
「はい。喜んで」
その翌朝、千寿は二十四歳の短い生涯を終えた。その報せはすぐに鎌倉の御台所の元へと伝えられた。
千手の前は、重衡卿を慕うあまりに亡くなったと人々が噂したと吾妻鏡には記されている。
千寿の琵琶は娘へと引き継がれ、娘はその美貌と琵琶の腕ゆえに良縁に恵まれて生きる。でもその血の由縁は語り継がれることはなかった。
「千手の前、ご苦労でした。明朝、中将殿は南都に向かわれる。最後の沐浴とお世話を頼みます」
工藤祐経の言葉に千寿は黙って頷いた。
夜明け、鳴く鳥の声を千寿と中将の君はひっそりと聴いていた。
「ちじゅ、長く有難う。約束、頼みましたよ」
柔らかく微笑む中将の君に千寿は微笑み返した。
中将の君は軽く頭を下げ、背を向けると小部屋を出て行った。
それが千寿が中将の君を見た最後。
去って行く足音に千寿は琵琶の音を重ねた。
——愛しく思っています。さようなら。
口に出来なかった言葉を乗せて。
それから千寿は御所で変わらず御台所付きの女官として勤めた。
やがて、噂が入ってくる。中将の君、平重衡は罪人ゆえに京には入れず、その手前で妻と今生の別れをして自らの供養を頼み、法然上人から受戒を受けた後に奈良へ送られ斬首されたという。
「法然上人」
その名を聞いて千寿の顔が輝く。
——では、中将の君は救われたのだ。
千寿は懐から横笛を取り出した。
最後の夜に手渡された物。
「私が貴女に遺して差し上げられる物はこれしかない。でも吹いてはいけませんよ。いつか困った時に用立ててください。それまでは、貴女を護る物としてお側に」
やがて千寿は里に帰り、女子を産んだ。椿のように艶やかに美しい子。その子の世話を父母に頼み、自らはまた鎌倉に戻って琵琶を掻き鳴らす。その音色は人々を魅了し、宴においては欠かせぬ存在となった。でも千寿の心はまるで踊らなかった。
「千手の前、御所様が貴女の琵琶をご所望よ」
女官仲間に呼ばれ、琵琶を抱えて広間へと向かう。でも、入った途端、妙な胸苦しさを覚える。漂う風に、どこか刺々しい波を感じた。御所の隣に座していた御台所が口を開く。
「範頼殿の瘧の病(マラリア)が平癒したので、その感謝の宴よ。姫も貴女の琵琶を聞きたいと言っているの。お願い出来るかしら」
御台所の隣には、一人の幼い姫君が冷えた目で座していた。父に夫を殺された姫君。その目は部屋の中の何も見ていなかった。
千寿は黙って頭を下げると、撥を握って一掻きする。
——ボロン。
音が溢れ、風が揺らぐ。と共に、姫君が顔を上げて何かを目で追った。千寿の持つ琵琶の弦に弾かれて消えた何かを。
「魔除けの琴を弾いて欲しい」
中将の君の言葉が、ふと思い起こされた。
千寿は撥を握り直し、強く、激しく搔き鳴らし始めた。肌にビリビリと震えが走る。
この広間に充満している何か善くないモノ。想いなのか怨霊なのかわからないけれど、千寿の琵琶が発した波は、それらを弾き飛ばし砕け散らし、砂塵のような細かな粒へと変える。やがて千寿は撥を床に置くと、右手の指でそっと弦を撫で揺らした。音の波はそれら微かな粒を慰めるかのようにふわりと包んで風に乗る。そして、開け放たれた蔀戸から遠く天へと昇っていった。
姫君の目から涙が一筋、溢れ下るのが見えた。
——行かないで。
そんな声が聞こえた気がした。それは自分の声なのか、姫君の声なのか。
——ゴトッ。
琵琶が落ちた。拾おうと身を屈めた千寿は、そのまま琵琶の上に倒れ込んだ。
目の端に映る転がる琵琶。転がされた自分。あれは遠い過去の景色。幸せの始まりの……。
「千手の前!」
揺さぶられて目を開ける。御台所が自分を見下ろしていることに気付き、慌てて飛び退る。
「も、申し訳ございません」
「どこか具合が悪いの?」
「いいえ。急に目が眩んだだけです。すぐに治ります。大変失礼致しました」
そう言って胸を押さえる。その手に笛が当たった。
——ああ、と思う。
行かないで。私を置いて行かないで。
笛がそう言っている。苦しんでいる。
そうだ。誰にどう思われようと、何と言われようと付いて行けば良かったのだ。置いて行かないでと口にすれば良かったのだ。叶えられないと分かっていても、その想いすら封じ込めてしまったのは何故なのか。
翌朝、千寿は郷里に戻された。
暗い部屋で口に笛をあてがう。思いっきり息を吸い込んで笛へと吹き込む。でも、ヒョロリとしか笛は応えてくれなかった。
千寿は立ち上がり、外へ出た。目に映る高貴な青紫の色。川辺に咲き乱れる杜若の花。
中将様」
千寿は杜若の花に手を伸ばした。
が、 ぬかるみに足を滑らせ川へと落ちる。幼い頃から遊び、慣れた川。でも今日は足に力が入らない。溺れそうになる。顔を上げようともがいたら、懐から笛が擦り抜け、川の流れに乗った。
——待って、それは中将様の!
でも、身体が思うように動かない。
ふと迷った。魔寄った。
——このまま溺れてしまえばいいのかもしれない。どうせ自分など、もう生きていてもしようがないのだから。
手の力を抜こうとした時、
——ヒュルリ~
笛の音が聴こえた気がした。
「中将様!どこ?」
身を起こして駆け出そうとした千寿だが、杜若の茎に阻まれて、その場に突っ伏す。
——いいですよ、いらっしゃい。共にゆきましょう。
優しげな声と共に差し出された白い手を握ろうと顔を上げたら、それは中将の君ではなく、人骨だった。
悲鳴を上げて振り払う。
——嫌だ、魔に取り憑かれたら中将様に逢えなくなる。
「南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」
心の中で必死に唱える。魔が差したことを陳謝する。でも、川底より伸びてくる白い手に足を掴まれそうになる。
中将様、助けて!」
心の中で必死に藍色の直垂を思い浮かべた。
——ピー!
甲高い音が鳴り響き、のしかかっていた重苦しさから解放される。音の鳴った方に目を向ければ、川の中洲に子どもが立っていて、拾い上げた笛に口を付けていた。
「中将様!」
ゲホゲホと噎せながら千寿は中空に向かって必死で訴える。
「貴方様でなければ。私は貴方様でなければ駄目なのです。どうか付いてゆくことをお許しください。置いていかないで!」
「千寿、しっかりしなさい!」
腕を引っ張られて気付けば、両親が千寿を川から引き上げてくれていた。
「可哀想に。鎌倉で余程酷い目に遭ったんだね。もう二度と行かなくて良いからね」
いいえ、と千寿は首を横に振った。
「行かなきゃ。琵琶を弾かないと」
天か地か、その狭間か。どこかにいるあの人に届くように。
でも千寿の目の前は暗くなっていき、音と光も全てどこかに吸い込まれていった。
——ジージー ジージー。
暗闇の中、虫が鳴いている。あれは中将様と共に聴いた虫の音。
「ちじゅ」
呼ばれて目を開ければ、見覚えのある太い柱に梁。馴れ親しんだ屋敷の自分の部屋の風景。その暗闇の中、蛍のように儚く煌めく涼やかな瞳が自分を見下ろしていた。
「中将様?」
手を伸ばすが、その指は空を掻くだけ。触れることは出来ない。起き上がろうとした千寿の額に白い人差し指がかかる。その人差し指は、ゆっくりと中将の君の口先で立てられ、彼はニッと悪戯な顔をして、しーっと千寿の言葉を止めた。
「御所様が仰っていた。田舎武士の娘もなかなか良いものですよ、と。情に厚く、一度決めたら、てこでも動かぬ。真にそうなのですね。お陰で私も御所様と同じく、東女に骨抜きにされてしまった」
「え?」
中将の君は目元を緩めた。やれやれ、と言わんばかりに肩を竦める。
「いいでしょう。貴女には借りばかりを遺してしまった。その償いを今度はさせていただきます」
「連れて行ってくださるのですか?」
千寿が問うたら、中将の君はそっと微笑んだ。
「ええ。確かに貴女の言う通り、地獄はなかった。ただ、自ら為したことの報いは受けねばなりません。長い時がかかりますよ。覚悟は宜しいですか?」
千寿は笑顔で頷いた。
「はい。喜んで」
その翌朝、千寿は二十四歳の短い生涯を終えた。その報せはすぐに鎌倉の御台所の元へと伝えられた。
千手の前は、重衡卿を慕うあまりに亡くなったと人々が噂したと吾妻鏡には記されている。
千寿の琵琶は娘へと引き継がれ、娘はその美貌と琵琶の腕ゆえに良縁に恵まれて生きる。でもその血の由縁は語り継がれることはなかった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する
花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家
結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。
愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。
〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー
i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆
最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡
バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。
数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる