炎上バブル

花本かおり

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課長

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毎日のように長時間残業をこなしていたある日の事、その日はとても珍しく21には退社できた日だった。会社出入り口にタイムカードをかざして打刻。駐車場を歩いて自分の車のキーをポケットから出した、ちょうどその時だった。
「ちょっと待て」
後ろを振り返ると課長の姿。
「どうかしたんですか」
私が訪ねると課長は乱れた息を整えて私の顔を見て言った。
「支社の方からシステム障害が起きたと連絡が来た。明日からリリースされるシステムだから、今日中になんとかしないといけない。お前も手伝ってくれ」
予想外の事態に私は急いで課長の後について、会社に戻った。そして自分のタイムカードをカードリーダーにかざそうとしたその時だった。課長が手を伸ばして、私の手を止めた。
「実は労働基準監督署が調査に来ている。悪いが、残業時間が多いお前はタイムカードを切らないでもらう。代わりに俺のを使う」
その言葉に、思わず自分の耳と、課長の人間性、更には会社の体制のすべてを疑った。
「そんな…じゃあ、私は無給で残業するということですか」
絶望に近いものを感じながら、私が聞くと
「みんなやってる、仕方ないだろ」
その一言を乱暴に吐き捨て、「ほら、行くぞ」と行って私の先を歩き始めた。

 その日は結局、午前1時まで対応に追われました。疲れよりも先に、課長と会社に対する怒りが勝り、どうしようもなかった。
 ほかの会社でもこのような、上司からの直接的なサービス残業を強いられているのだろうか。そんなことを思いながら課長と一緒に会社を出た。

 課長が車に乗って駐車場を後にしたのを確認して、私は大きなため息をついて、会社の横を流れる梓川を眺めた。

 残業代がわるときちんと出ている会社、それだけで会社に認めてもらえているような気がしていた。それで私は救われていた。けれど今日の一件で、とても絶望した。ただのコマのように扱われたような気がして、涙が溢れてきた。

 私、なんのためにこんな課長のいる会社で、その人の下で、頑張っていたのだろうか。

 ただ静かに、いつもと変わらずに流れる梓川。
 私をそっと、慰めてくれているようだった。
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2018.11.04 ユーザー名の登録がありません

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