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丸ニカタバミ

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対抗戦編

対抗戦と天木図書館

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年度末クラス対抗戦とは、伝統あるわが校で伝統ある行事である。表向きには、コース分けされる前にこの二年間の集大成見せるため模擬戦を行う。
実際には、クラスによって割り当てられた役割が違う。Bクラスは本当に二年間の集大成を出してできるために、Aクラスは他のクラスに追随を許さないことの証明ために、Sクラスは努力では追いつけない才能の差を見せつけるために、Cクラスは自分たちに戦闘はむいていない才能がないのだと思わせるために行う。その選手に私とさやが選ばれたのだ。要はさらし者になれということだ。「あなたたちの中でもトップクラスの人間でさえ手も足も出ないですよ。」と学校側としても言いたいのだ。
ただ、逆に言えば、できることを見せれば今からでも評価が変わる可能性がある。絶好の機会が私の手元に転がってきた、これに乗らない手はない。そう思い、私はここ数日間興奮が覚めやらない。
「……たい、ルミちゃん痛い。」
「ああ、ごめんなさい。考え事してた。」
背負い投げで見事にひっくり返ったさやが目の前いた。考え事をしていたせいで投げたというよりは落とした形になってしまった。これには、見ていた教師も激怒して安全性だのたるんでるだの一時間説教された。
「ごめんってば、さや。考え事しながら、投げたことは反省してるから。」
「許さないよ。ほんっとうに痛かったんだから、反省されただけで許せる問題じゃないよ。」
「うーん、じゃあどうすれば許してくれるのよ。」
いくら、私が悪いとはいえここまで怒られるとは思ってもみなかった。ただ、さやが許してくれそうな材料がおもいつかない。いったい、どうしたものか。
「そうだねえ……、中間テスト近いから……。じゃあ、私は寛大だからこの条件をのんでくれるならゆるしてあげよう。」
「その条件って…」
「ズバリ、天木図書館に行きたい。」
そうきたか。天木図書館とは、つまるところ私「天木ルミ」の家の書斎のことである。
書斎には、母と私が買い集めた本が大量に所蔵されている。始めてうちにきた人があまりの多さにつけた名前が天木図書館である。図書館といっても20㎡の部屋二部屋つぶしているだけだから常識の範囲だと思うけど、たぶん………。
結局、私が折れて家に行くことになった。
「わーい。夢にまで見た、天木図書館だ。」
さっきまでの怒りはどこに行ったのだろうか。まあ、家に呼ぶだけで喜んでくれるなら全然いいのだけど。というか、夢にまでってそんなに有名になっているのだろうか。気になったので聞いてみた。
「ねえ、私家に本がいっぱいあるなんてさやに言ったっけ。」
「ううん、言ってないよ。サツキちゃんとか、竜生君とか、あと巧君にも聞いてたんだ。ルミの家は本がいっぱいあってすごいんだって。巧君はともかく二人は最近は会うこともなくなったけど高等部の時はよく遊んだりとかしてたから。元気にしてるかな。あっ、おじゃましまーす。」
「ただいま。さあ、どうだろう。元気なんじゃない、私も最近会ってないけど……。」
そうか、そういうことだったのか。サツキと竜生、そして、巧の三人は幼馴染で昔からずっと一緒に遊んでいた仲だった。今ではとても遠い存在になってしまった。巧はBクラス、サツキと竜生はSクラスである。巧はよく合うが二人については住む世界が違う。待遇も実力もなにもかも。まあ、ここでしょげても仕方ないのでさやを部屋まで案内する。
「ほう、ここが例の図書館ですか。やっぱりすごいね、なんか見ただけでおなか一杯って感じ。ねえ、いろいろと見てもいい。」
「この部屋の中であればご自由に。」
「わーい」と言ってすぐにさやは大量の本と本棚の中に消えていった。私は学校の勉強は大丈夫だから本を探す必要はない。だから、さやが読んでいる間に読む本を探そう。なにがいいだろう、戦技系や異能学系、自己啓発に小説なんでも揃っているしある程度読んでしまっているからいざ探すとなると難しい。そうこう悩んでいる間に部屋の扉が急に開いた。
「あれ、ルミ。帰ってきてたんですね。わたし、リビングで寝ていたので気がつきませんでした。」
「ただいま、アキ。ごめんなさい、部屋が暗かったからてっきり出ているのかと。今日は友達が来ているの、悪いけどお茶の用意してもらってもいいかしら。」
「別に、それはいいですけど…。友だちってあれのことですか。」
アキの指をさしている方向を見ると本に埋まって手だけが飛び出しているさやらしきものの姿があった。
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