41 / 125
本編
喫茶店
しおりを挟む
平日のお昼時の喫茶店にいる。
よほど暇なお店なのかおやつ時のこの時間にしてはガラガラだ。まあ、平日だからというのと喫茶店に行く人口が減ってきているというのが理由だろう。まあ、証拠はないけど。
どうして、こんな平日のおやつ時に喫茶店にいるかというとバイトの早上がりのせいだ。おれのバイト先も暇だったのだ。
せっかく早く上がれたし読みかけの本もちょうどたまっていたので、読んでしまおうという算段だ。
「面白い人みっけ」
「どういう、意味ですか先輩」
声のするほうをみると案の定先輩がいた。
「前に座っても」
「どうぞ」
先輩はすぐ席に座る。
「すいません、ブレンド一つ」
「ホットかアイスどちらにいたしますか」
先輩は「ホットで」と答える。
「最近よく合いますね」
「そうね」
「お待たせいたしました」と店員さんがコーヒーを置く。
先輩はどうもと言ってコーヒーを飲む。
つい、まじまじと口元を見てしまう。
「どうしたの」
「いっ、いえ」
つい、顔をそむけてしまった。
大学時代からいつも調子を狂わせられる。
まあ、いいや。それよりも、聞きたいことを聞いてしまおう。
「先輩、もしかして…」
「もしかして?」
「僕のことストーキングしてませんよね」
いつも会うタイミングが良すぎる。というか、タイミングが良すぎて怖い。
「ははははっ」
先輩がおなかを抱えながら笑いだす。しかも涙を流しながらだ。
そんなに、おれはおかしなことを言っただろうか。
「ごめん、あまりにも真面目な顔をして聞くものだから面白くて」
「そんなに変なこと言いましたか」
「いや、どんだけ自意識過剰なのって思って」
自意識過剰って言われても恐ろしいほどタイミング良く合えば誰だってそう思う。
それに、今は物騒な世の中だ。SNSで住所特定から行動パターンを推測することだってあるぐらいだ。何があるかわからない。
「ごめんごめん。ほんとうに偶然なの」
さいですか。まあ、信用はできないけど。
「あっ、その顔は信じてないでしょ」
「そっ、そんなことは…」
「あるでしょ」
「はい、信用できません」
先輩は、「素直でよろしい」といってどこか満足げだった。
「ほら証拠」と言って見せられたのは喫茶店の二階にある塾の職員証だった。これでは、さすがに嘘とはいえない。そういえば、先輩が教員志望者向けの授業をとっていたことを思い出した。
「まあ、ストーキング行為はしてないけど予測はしてるかな」
「えっ、今なんて言いました?」
今なんか、不穏なことを言っていた気がする。
「いや何も言ってない」と言いながらコーヒーを飲む。
「まあ、ちょうどよかったです。先輩に伝えておきたいことがあったので」
そして先輩に上井から聞いた話も合わせてすべて伝えた。
「なるほど。それで、わたしはどうすればいいの」
「別に、僕からお願いすることはなにも。ただ、本人が聞きたいというなら全部教えてあげてください」
「本当にいいの?」
「本人が知りたいというならかまいません」
本人が、知りたいのであればおれが止めることはできない。
先輩は何か考え事をしているようだ。
「中仁は冷たいのね」
「えっ…」
「だってそうでしょ。真実を知れば姪っ子ちゃんは間違いなく傷つく。それなのにあなたは、止めようとしない。だから私は冷たいといったのよ」
「それはそうかもしれませんけど…」と返すので精いっぱいだった。確かにそうかもしれないと思ってしまったからだ。
でも、おれは腹を決めた。いまさら、その決意が揺らぐことはない。
「それでも、話してください」
「わかった」
おれは「ありがとうございます」と言って頭をさげる。
「ただし、お願いを聞く代わりに条件があるわ」
「なんですか」
「もし真実を話したら私とよりを戻して」
「…わかりました」
よほど暇なお店なのかおやつ時のこの時間にしてはガラガラだ。まあ、平日だからというのと喫茶店に行く人口が減ってきているというのが理由だろう。まあ、証拠はないけど。
どうして、こんな平日のおやつ時に喫茶店にいるかというとバイトの早上がりのせいだ。おれのバイト先も暇だったのだ。
せっかく早く上がれたし読みかけの本もちょうどたまっていたので、読んでしまおうという算段だ。
「面白い人みっけ」
「どういう、意味ですか先輩」
声のするほうをみると案の定先輩がいた。
「前に座っても」
「どうぞ」
先輩はすぐ席に座る。
「すいません、ブレンド一つ」
「ホットかアイスどちらにいたしますか」
先輩は「ホットで」と答える。
「最近よく合いますね」
「そうね」
「お待たせいたしました」と店員さんがコーヒーを置く。
先輩はどうもと言ってコーヒーを飲む。
つい、まじまじと口元を見てしまう。
「どうしたの」
「いっ、いえ」
つい、顔をそむけてしまった。
大学時代からいつも調子を狂わせられる。
まあ、いいや。それよりも、聞きたいことを聞いてしまおう。
「先輩、もしかして…」
「もしかして?」
「僕のことストーキングしてませんよね」
いつも会うタイミングが良すぎる。というか、タイミングが良すぎて怖い。
「ははははっ」
先輩がおなかを抱えながら笑いだす。しかも涙を流しながらだ。
そんなに、おれはおかしなことを言っただろうか。
「ごめん、あまりにも真面目な顔をして聞くものだから面白くて」
「そんなに変なこと言いましたか」
「いや、どんだけ自意識過剰なのって思って」
自意識過剰って言われても恐ろしいほどタイミング良く合えば誰だってそう思う。
それに、今は物騒な世の中だ。SNSで住所特定から行動パターンを推測することだってあるぐらいだ。何があるかわからない。
「ごめんごめん。ほんとうに偶然なの」
さいですか。まあ、信用はできないけど。
「あっ、その顔は信じてないでしょ」
「そっ、そんなことは…」
「あるでしょ」
「はい、信用できません」
先輩は、「素直でよろしい」といってどこか満足げだった。
「ほら証拠」と言って見せられたのは喫茶店の二階にある塾の職員証だった。これでは、さすがに嘘とはいえない。そういえば、先輩が教員志望者向けの授業をとっていたことを思い出した。
「まあ、ストーキング行為はしてないけど予測はしてるかな」
「えっ、今なんて言いました?」
今なんか、不穏なことを言っていた気がする。
「いや何も言ってない」と言いながらコーヒーを飲む。
「まあ、ちょうどよかったです。先輩に伝えておきたいことがあったので」
そして先輩に上井から聞いた話も合わせてすべて伝えた。
「なるほど。それで、わたしはどうすればいいの」
「別に、僕からお願いすることはなにも。ただ、本人が聞きたいというなら全部教えてあげてください」
「本当にいいの?」
「本人が知りたいというならかまいません」
本人が、知りたいのであればおれが止めることはできない。
先輩は何か考え事をしているようだ。
「中仁は冷たいのね」
「えっ…」
「だってそうでしょ。真実を知れば姪っ子ちゃんは間違いなく傷つく。それなのにあなたは、止めようとしない。だから私は冷たいといったのよ」
「それはそうかもしれませんけど…」と返すので精いっぱいだった。確かにそうかもしれないと思ってしまったからだ。
でも、おれは腹を決めた。いまさら、その決意が揺らぐことはない。
「それでも、話してください」
「わかった」
おれは「ありがとうございます」と言って頭をさげる。
「ただし、お願いを聞く代わりに条件があるわ」
「なんですか」
「もし真実を話したら私とよりを戻して」
「…わかりました」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる