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第2章
第29話 過去より未来に
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お祝いの日から数日が経ち、入寮の日がやって来た。
「バッド……大きな休みには帰ってくるのよ?」
「うん。絶対帰ってくるよ」
「バッド。気をつけるんだぞ。変なやつには絡まれないようにな。あと、お金関係はもっと気をつけろよ……」
「分かったよ、お父さん」
「じゃあ……頑張ってね」
名残惜しそうに俺を見つめる両親の顔を見て、俺は嬉しかった。
俺を見届けてくれる人がいる。俺を応援してくれる人がいる。俺を……大切にしてくれる人がここにいる。
当たり前。一般的には当たり前かもしれない。でも、この幸せは俺にとって当たり前じゃなかったんだ。
「うん。頑張ってくる……」
堪えていたものが溢れ出してしまう。両親の前で俺は、ただただ泣きじゃくった。
この涙の意味はなんなのだろうか。家を出る悲しみだろうか。それとも、今目の前に両親がいることへの安堵だろうか。
正直こんなことどうでもいい。今はたくさん甘えられるのだから。
静かに見守るお母さん達。俺は2人に向かって飛び込んだ。
「お母さん……! お父さん……!」
何も言わず抱きしめてくれる2人の身体は、とても暖かかった。
しばらく経ち、俺の溢れ出る物もおさまり、いよいよ出発の時間となった。
「じゃあ……行ってきます!」
もう出すもん出しきった。ここに捨てていくものは無い。
次戻ってきた時、また捨てに来よう。
両親に見送られ、俺は外への扉を開いた。
──────
「ストローグさん。数ヶ月でしたが……お世話になりました!!」
ここはシュナの住む村。シュナも入寮するらしく、今日は一緒に行く事になった。
そして、今はストローグさんの家に挨拶に来ていた。
「なんだろうな、まぁ……寂しくなるな」
「なんですか? その顔」
「何でもねぇよ! 弟子って言うのが初めてだったからよ……ちょっと……な?」
少し悲しそうにするストローグさんを見て、俺は少し笑ってしまった。
「ははは! なんですかそれ!! 俺はずっとストローグさんの弟子ですよ。こっち戻って来たら絶対会いに来ます」
「……そうか! じゃあ早く行け!! 強くなってこい早く!!」
「ちょ! 感動の別れなのに、何催促してるんですか!!」
こんな会話が俺は大好きだった。初めはちょっと抜けてる人で、ダメダメな人とか思ってたけど。
今では死ぬほど尊敬できる師匠だ。
本当にあの時、いきなりのお願いに答えてくれてよかった。そして、あれがストローグさんで本当によかった。
「じゃあ……シュナの所行ってきます」
「あぁ。行ってらっしゃい。気を付けろよ」
あっさり別れの言葉を告げ、俺もあっさり家を出ていった。
これでいい。これくらいがちょうどいいんだ。
また会ってたくさんお話しよう。
俺はシュナの家へと向かって歩き出した。
──────
「シュナをよろしくね。バッド君」
「はい。ゴスイ誘ったからには責任持ちます」
「バッドは責任なんて追わないでいいんだよ。私が行きたかったんだから」
シュナとリュナさんと話しながら村の出口まで向かっていた。
リュナさんは「そこまでは」と言って、送ってくれることになった。
そして、村の出口。
「じゃあ……ここまでね」
「ありがとう、お母さん。行ってくるね」
意外とあっさりした別れに俺は少し驚いてしまった。俺もすかさず、リュナさんに挨拶する。
「俺もお世話になりました。色々良くしていただいて」
「いえいえ、バッド君こそいろいろとありがとね」
俺はふと、リュカさんの顔を見ると、目の周りがパンパンに腫れ上がっていた。
そしてチラッ、とシュナの方も見る。シュナも同じ様に目が腫れていた。
なるほど……もう出しきった後か。ここは触れないでおこう。
「シュナ……もう大丈夫か?」
「うん……また休み入ったら帰って来れるもんね……! よし! バッド、行こう!」
こうして俺とシュナは村の外に歩き出した。
この1年間、色んな人と出会って色んな人にお世話になった。
この色んな人は、生前会ったことない人も多かった。でも、この出会いのおかげで、俺の最悪の未来を変えることが出来たし、人生に彩りが増えた。
今、確実に俺は成長している。過去の俺よりもしっかり未来に進めている。
後はもう、どの最悪も見ない。そして、俺の最高を現実にする。
最悪だった俺の編集。これも忘れるな。ケイトは今も頑張ってるんだ。
でも……これは大きな進歩だ。変わる。これが分かっただけで、俺の目標は否定されていない。
「バッド……いよいよだね」
「うん……これからも頑張るぞ……!」
目の前にあるゴスイ魔法学校。俺の新しい物語はここからスタートする。
必ず変えてやる……2つ目の最悪も!!!
──────
「久しぶり、ケイト君」
「スペルさん、お久しぶりです」
「警察寮の生活は慣れたかな」
「初めは怖かったですけど……意外といい人ばかりで、思ったより早く慣れました」
「そうか。ならよかったよ。それで、今日はケイト君に話があってね」
「話って……なんですか?」
「非常に言い難いんだが……君の、両親が亡くなった。原因は不明だそうだ」
「……え?」
未来を変えたい。そう考える者もいれば、そうではない者もいる。
「バッド……大きな休みには帰ってくるのよ?」
「うん。絶対帰ってくるよ」
「バッド。気をつけるんだぞ。変なやつには絡まれないようにな。あと、お金関係はもっと気をつけろよ……」
「分かったよ、お父さん」
「じゃあ……頑張ってね」
名残惜しそうに俺を見つめる両親の顔を見て、俺は嬉しかった。
俺を見届けてくれる人がいる。俺を応援してくれる人がいる。俺を……大切にしてくれる人がここにいる。
当たり前。一般的には当たり前かもしれない。でも、この幸せは俺にとって当たり前じゃなかったんだ。
「うん。頑張ってくる……」
堪えていたものが溢れ出してしまう。両親の前で俺は、ただただ泣きじゃくった。
この涙の意味はなんなのだろうか。家を出る悲しみだろうか。それとも、今目の前に両親がいることへの安堵だろうか。
正直こんなことどうでもいい。今はたくさん甘えられるのだから。
静かに見守るお母さん達。俺は2人に向かって飛び込んだ。
「お母さん……! お父さん……!」
何も言わず抱きしめてくれる2人の身体は、とても暖かかった。
しばらく経ち、俺の溢れ出る物もおさまり、いよいよ出発の時間となった。
「じゃあ……行ってきます!」
もう出すもん出しきった。ここに捨てていくものは無い。
次戻ってきた時、また捨てに来よう。
両親に見送られ、俺は外への扉を開いた。
──────
「ストローグさん。数ヶ月でしたが……お世話になりました!!」
ここはシュナの住む村。シュナも入寮するらしく、今日は一緒に行く事になった。
そして、今はストローグさんの家に挨拶に来ていた。
「なんだろうな、まぁ……寂しくなるな」
「なんですか? その顔」
「何でもねぇよ! 弟子って言うのが初めてだったからよ……ちょっと……な?」
少し悲しそうにするストローグさんを見て、俺は少し笑ってしまった。
「ははは! なんですかそれ!! 俺はずっとストローグさんの弟子ですよ。こっち戻って来たら絶対会いに来ます」
「……そうか! じゃあ早く行け!! 強くなってこい早く!!」
「ちょ! 感動の別れなのに、何催促してるんですか!!」
こんな会話が俺は大好きだった。初めはちょっと抜けてる人で、ダメダメな人とか思ってたけど。
今では死ぬほど尊敬できる師匠だ。
本当にあの時、いきなりのお願いに答えてくれてよかった。そして、あれがストローグさんで本当によかった。
「じゃあ……シュナの所行ってきます」
「あぁ。行ってらっしゃい。気を付けろよ」
あっさり別れの言葉を告げ、俺もあっさり家を出ていった。
これでいい。これくらいがちょうどいいんだ。
また会ってたくさんお話しよう。
俺はシュナの家へと向かって歩き出した。
──────
「シュナをよろしくね。バッド君」
「はい。ゴスイ誘ったからには責任持ちます」
「バッドは責任なんて追わないでいいんだよ。私が行きたかったんだから」
シュナとリュナさんと話しながら村の出口まで向かっていた。
リュナさんは「そこまでは」と言って、送ってくれることになった。
そして、村の出口。
「じゃあ……ここまでね」
「ありがとう、お母さん。行ってくるね」
意外とあっさりした別れに俺は少し驚いてしまった。俺もすかさず、リュナさんに挨拶する。
「俺もお世話になりました。色々良くしていただいて」
「いえいえ、バッド君こそいろいろとありがとね」
俺はふと、リュカさんの顔を見ると、目の周りがパンパンに腫れ上がっていた。
そしてチラッ、とシュナの方も見る。シュナも同じ様に目が腫れていた。
なるほど……もう出しきった後か。ここは触れないでおこう。
「シュナ……もう大丈夫か?」
「うん……また休み入ったら帰って来れるもんね……! よし! バッド、行こう!」
こうして俺とシュナは村の外に歩き出した。
この1年間、色んな人と出会って色んな人にお世話になった。
この色んな人は、生前会ったことない人も多かった。でも、この出会いのおかげで、俺の最悪の未来を変えることが出来たし、人生に彩りが増えた。
今、確実に俺は成長している。過去の俺よりもしっかり未来に進めている。
後はもう、どの最悪も見ない。そして、俺の最高を現実にする。
最悪だった俺の編集。これも忘れるな。ケイトは今も頑張ってるんだ。
でも……これは大きな進歩だ。変わる。これが分かっただけで、俺の目標は否定されていない。
「バッド……いよいよだね」
「うん……これからも頑張るぞ……!」
目の前にあるゴスイ魔法学校。俺の新しい物語はここからスタートする。
必ず変えてやる……2つ目の最悪も!!!
──────
「久しぶり、ケイト君」
「スペルさん、お久しぶりです」
「警察寮の生活は慣れたかな」
「初めは怖かったですけど……意外といい人ばかりで、思ったより早く慣れました」
「そうか。ならよかったよ。それで、今日はケイト君に話があってね」
「話って……なんですか?」
「非常に言い難いんだが……君の、両親が亡くなった。原因は不明だそうだ」
「……え?」
未来を変えたい。そう考える者もいれば、そうではない者もいる。
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