妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜

橋本 悠

文字の大きさ
38 / 49
第3章

第36話 悪魔の1週間

しおりを挟む
 今、俺は午後の授業を終え、図書館にいる。
 とりあえずここで時間を潰そう。

 こうなったら、どうすれば2つ目の最悪から逃れられるか考えるしかない。
 2回目と言っても、怖いものは怖い。この悪魔の1週間。じゃあ、どうすればいいのか。

 ……やっぱ魔法……か。いや……はぁ……

 正直言って、今更魔法を使えたからってどうなるんだ。この一週間で魔法を習得したところで、何か変わるのか?

 ……そんなこと考えても仕方がないか。

 俺はとりあえず図書館で魔法について調べることにした。4階建ての超広い図書館には、この世の全ての本があるんじゃないかってくらいの量の本があった。

 魔法について乗っている本のブースに行き、いくつか本をとって空いている席に着いた。

 意外と授業で教えてもらうことばっかりだなぁ……これもサラン先生が言ってたし……

 期待はずれであった。きっともっと色んなことが書いてある物もあるだろう。しかし、人語以外で書かれているものも多く、俺は全く多言語を読めなかった。そのせいでこの図書館の3割程しか力を使えていなかった。

 ……まぁ、行くとこもないしここで時間潰すか。

 本を戻そうと席を立ったその時だった。

「ヒューム……?」

「バッドか。こんなところで珍しいな」

 本を抱えたヒュームが隣の席に座ってきた。クラスの中では、今のところ1番気まづく無い彼に俺はほっとしてしまった。

 本を戻さずにもう一度席に着いた俺は彼に話しかけた。

「なぁ……ヒューム。魔法って……どうやったら使えるんだ?」

 その質問を聞いた瞬間。ヒュームは少し険しい表情になり、口を開いた。

「多分、バッドの今しようとしていることは間違っているよ。いや……もう間違ってしまったが正しいかな」

 俺のしようとしていることが間違っていた。どういう事だ?  魔法を使おうとしていること自体違うって言うのか?

「それって……どういうことだ?」

「……それは自分で考えた方がいい」

 そう言い捨て、ヒュームは本を持ち離れた席に座ってしまった。また、俺は突き放されてしまった。

 間違っている。何が間違っているのか分からない。正解が分からないのに……間違いが分かるわけないだろ……!

 どこにぶつけたらいいかも分からないこの怒りに苦しめられながら、俺は図書館の閉館時間まで本を読み漁った。

 閉館時間から消灯時間まで約2時間。俺は食事を済ませ、寮の裏にあるスペースで魔法の練習をした。このスペースだけは魔法の仕様が許可されているが、地面や壁の破壊、簡単に言えば高威力のものは禁止とされている。

 まぁ、魔法が使えるわけもない俺は、ただただ消灯時間までの時間を潰すためだけにここにいたようなものだった。

 そして、消灯時間ギリギリになり、寮に戻りあとは寝るだけ。グルドと同じ部屋なのは本当に辛かった。でも、部屋ではあまり絡んでこなかったからそれは不幸中の幸いであった。

 いじめっ子と言うのは周りに人がいるから、見られているからいじめるのだろうか。

 そして次の日。俺はまた朝からグルドに絡まれる。

「よぉ、昨日も魔法使えてなかったな」

 その言葉を愛想笑いで受け流すが、周りの人達は誰も俺たちの方を見向きもしなかった。

 そしてそのまま昨日と同じような時間が過ぎ、午後になった。俺は昼休みの時、サラン先生に行って1週間、午後の授業を休む意志を伝え、さらに無理を言って授業後に個別で指導をしてくれないかと頼んだ。

 ここで離脱すれば、もっとグルドのいじめは酷くなるかもしれない。でも、こうせざるを得なかった。俺の精神は午後の授業に出れるほど、もう体力は残っていなかった。

 そのお願いに先生は「平日1時間位なら」と、快く承諾してくれた。本当に先生には頭が上がらない。

 言いたいことがあるとするならば、グルドのいじめに気が付いていないのか、はたまた無視しているのか分からないが、その件には全く触れてこない所だ。でも、そんな事はいい。

 先生に1時間指導してもらい、昨日と同じように時間を潰して寮に帰った。

 同じような日が3日間続いた。精神的にいじめられ、午後の授業は行かず、先生に個別指導をしてもらう。この3日間、死ぬほど長く感じ、そして、辛かった。

 別にまだ暴力を振るわれた訳では無い。でも、周りからの目線や、気を使う行為が俺の精神をむしばんだ。

 そして、さらに数日が経ち、俺が魔法でグルドに吹き飛ばされるであろう休日の前日の朝。

「なぁ?  今日も午後の授業来ねぇのか?  てか最近コソコソなんかやってるよな?」

「ま、まぁ……」

 俺は小さく答えた。そして、グルドはもう一度口を開く。

「……魔法、使えるようになったのか?」

 普段よりも小さく、どこか優しい声でそう聞いてきたグルドに、俺はもちろんNOと答えた。

「ははは!!  だろうな!!!」

 何も変わっちゃいなかった。そのまま今日も一日が過ぎた。
 明日、恐らく俺へのいじめは終わる。そして、このままだと……2度目のチャンスも終わる。

 ……結局何も出来なかった。先生に個別で教えてもらったのに何も得られなかった。いや、少しは魔力を魔法に変えるコツは分かったかもしれない。でも、出すことは出来なかった。

 明日は休日で先生の個別レッスンは無い。もう……終わり……

 ……じゃないだろ。何諦めてんだよ……最後まで足掻けよ……!!  足掻け……よ……

 入学当初を思い出す。あの時の、学校に毎日行きたいと思えた日々を。

「どうして……どうしてみんな……!!」

 量の裏のスペースで俺は泣き崩れた。その時だった。

「こんなところでもやってたのか、バッド」

「グルド……!」

 俺の知っている未来とは別の未来が現れた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...