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第3章
第37話 2つ目の最悪
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人が、いや、俺がいちばん辛いこと。それは、大切なものが無くなってしまうこと。
両親がいきなり亡くなる。妻がいきなり寝取られ、奪われる。
そして今、2度目の人生にして初めてのことが起きている。
それは───友達を失うこと。グルドを失い、シュナやトム、ヒュームを突き放してしまった。
無かったはずの現実が失われた今、俺の精神はもうズタボロであった。
変えようと努力はした。先生に頼み込んで個別で指導を頼んだ。でも、でも……魔法なんて使えなかった。
その時、個別指導中のサラン先生に言われたことを思い出す。
「今まで魔法を全く使えなかったやつが初めて使えた時はみんなこう言う。たまたま出来たって」
「はぁ……?」
「でもな、先生は思うんだ。そのたまたまは、努力したやつにしか来ない」
……俺が努力したって感じてるんなら。いや、俺は……俺は……頑張ったじゃないか。この1年。何もしなかったわけじゃないじゃないか。
しかも、今俺の目の前に現れてるのは紛れもなく、知らない未来だった。少し早めの2つ目の最悪。
「こんなところでもやってたのか、バッド」
「グルド……!」
未来は変わる。それはやっぱり嘘じゃなかった。
ここで変えなきゃ……グズグズしてられない。今ここでグルドに負けない。恐らく、それが今俺に出来る最善の行動だ。
隠れて魔力を身体に流す俺は、ふと、グルドの表情を見た。
「どうして……そんな顔するんだよ……」
彼の顔はいじめっ子の顔ではなく、俺が間違っていなければ、それはまさに友達の顔であった。
「どうして……か」
浅い返事をしたグルドに感情がドバドバと溢れてきた。
「どうして……俺を……いじめるんだよ!!」
「いじめ……そっか。バッド」
そうグルドが言い放った時、もう目の前に彼の姿はあった。
「……!」
ドカンっ!!!
明らかに校則違反レベルの魔力量で爆発魔法を使い、グルドは俺を吹き飛ばした。
寮の柱に激突した俺は、ドサッ、と地面に倒れ込んだ。
変わらなかった。これは俺の知っている未来。このまま、俺は俯きながら家に帰る。あぁ……あの日も休日に魔法練習しに来てたっけ……な。
「……魔法って、感情的になってる方が出やすいんだぜ」
このセリフ。生前も彼にそう言われ、俺は聞く耳を持たずに帰った。
でも、今の俺は反射的にグルドを見た。グルドの表情は友達を失ったような顔をした、俺に似ていた。
その表情を見ると、様々な記憶が思い出される。
──俺バカでアホだから上手いこと言えねぇし出来ねぇんだ。すぐ気に触ること言っちまうし……
── 例え校則を守ったとしても、誰かが傷付いたり、悲しんだり、最悪死んだり。そんなことするくらいなら破った方がマシだ。仲間を見捨てるような人間にはなるな。
── 俺以外みんなお前のこと……
魔法の校則違反を伝えるブザーが爆音で流れている。でも、俺とグルドの耳には入っていなかった。
思い出した。そして、分かったんだ。俺の何が間違っていたのか。
グルドは……グルドは……!! 俺をいじめていた訳じゃなかったんだ……!!
バカでアホだから下手くそだっただけだけで……本当は俺が1人にならないように……みんなからの哀れみの目を向けられないように……!!
生前もこうやって……でも俺は逃げたから……!
俺の被害妄想で……シュナやトムも……!
「なぁ……バッド。聞こえてるか? 魔法って感情的な方が……」
「聞こえてるよ。グルド」
そう言って俺は立ち上がる。そして、魔法指輪を付けている右手を前に伸ばした。
「ありがとう……グルド」
もう逃げない。
涙で前なんて見えなかった。でも、俺は右手に魔力を貯めた。指輪が小さく光り、俺の右手の目の前には波動が溜まっていた。
そして、俺はその波動をグルドに放った。
ドカンっ!!!!!
その大きな音と共に、グルドは吹き飛ばされ、反対側の寮の柱に衝突した。
「あ、ごめん……!!」
反射的に誤り、グルドの元に走り出す。
「怪我は!?」
「……」
反応のないグルドの目の前まで着き、倒れているグルドの前で腰を下げる。
「……はははは!! お前の変な魔力身体に流すやつパクったから大丈夫だ」
「それ……教えたっけ?」
「今見た」
「すご……」
そんな会話をしながら彼は立ち上がった。それに合わせて俺も立ち上がる。
2人とも何も話さず、ただただ校則違反を知らせるブザーが爆音で流れている。
「やればできるじゃん」
「……グルド! あの……今まで……ご、ごめ……」
「謝んのは俺にじゃねぇだろ。あと、謝んのは俺の方だ。上手くやれなくてすまん」
謝るのはグルドじゃない。その一言で我に返る。そうだ、そうだよ。本当に……その通りだよ……でも…
「謝る必要なんてないよ。グルドのおかげで……俺……気付けたから。でも、やっぱごめん」
「あ、お前今謝ったな!? 俺じゃないって言っただろ!」
「あははは! 別にいいじゃん俺悪かったんたまし」
「じゃあ俺も悪かっただろ! 先生に言われたけど上手く出来なくて困ってたんだよ」
「先生がなんか言ってたの!?」
そんな会話をしていると後ろから何か叫ぶ声が聞こえてきた。
「おい!!!! 誰だ高出力の魔法を使ったのは!!!」
「やべぇ……バッド。逃げるぞ!!」
「……うん!!!」
俺は友達と寮に向かって走り出した。
両親がいきなり亡くなる。妻がいきなり寝取られ、奪われる。
そして今、2度目の人生にして初めてのことが起きている。
それは───友達を失うこと。グルドを失い、シュナやトム、ヒュームを突き放してしまった。
無かったはずの現実が失われた今、俺の精神はもうズタボロであった。
変えようと努力はした。先生に頼み込んで個別で指導を頼んだ。でも、でも……魔法なんて使えなかった。
その時、個別指導中のサラン先生に言われたことを思い出す。
「今まで魔法を全く使えなかったやつが初めて使えた時はみんなこう言う。たまたま出来たって」
「はぁ……?」
「でもな、先生は思うんだ。そのたまたまは、努力したやつにしか来ない」
……俺が努力したって感じてるんなら。いや、俺は……俺は……頑張ったじゃないか。この1年。何もしなかったわけじゃないじゃないか。
しかも、今俺の目の前に現れてるのは紛れもなく、知らない未来だった。少し早めの2つ目の最悪。
「こんなところでもやってたのか、バッド」
「グルド……!」
未来は変わる。それはやっぱり嘘じゃなかった。
ここで変えなきゃ……グズグズしてられない。今ここでグルドに負けない。恐らく、それが今俺に出来る最善の行動だ。
隠れて魔力を身体に流す俺は、ふと、グルドの表情を見た。
「どうして……そんな顔するんだよ……」
彼の顔はいじめっ子の顔ではなく、俺が間違っていなければ、それはまさに友達の顔であった。
「どうして……か」
浅い返事をしたグルドに感情がドバドバと溢れてきた。
「どうして……俺を……いじめるんだよ!!」
「いじめ……そっか。バッド」
そうグルドが言い放った時、もう目の前に彼の姿はあった。
「……!」
ドカンっ!!!
明らかに校則違反レベルの魔力量で爆発魔法を使い、グルドは俺を吹き飛ばした。
寮の柱に激突した俺は、ドサッ、と地面に倒れ込んだ。
変わらなかった。これは俺の知っている未来。このまま、俺は俯きながら家に帰る。あぁ……あの日も休日に魔法練習しに来てたっけ……な。
「……魔法って、感情的になってる方が出やすいんだぜ」
このセリフ。生前も彼にそう言われ、俺は聞く耳を持たずに帰った。
でも、今の俺は反射的にグルドを見た。グルドの表情は友達を失ったような顔をした、俺に似ていた。
その表情を見ると、様々な記憶が思い出される。
──俺バカでアホだから上手いこと言えねぇし出来ねぇんだ。すぐ気に触ること言っちまうし……
── 例え校則を守ったとしても、誰かが傷付いたり、悲しんだり、最悪死んだり。そんなことするくらいなら破った方がマシだ。仲間を見捨てるような人間にはなるな。
── 俺以外みんなお前のこと……
魔法の校則違反を伝えるブザーが爆音で流れている。でも、俺とグルドの耳には入っていなかった。
思い出した。そして、分かったんだ。俺の何が間違っていたのか。
グルドは……グルドは……!! 俺をいじめていた訳じゃなかったんだ……!!
バカでアホだから下手くそだっただけだけで……本当は俺が1人にならないように……みんなからの哀れみの目を向けられないように……!!
生前もこうやって……でも俺は逃げたから……!
俺の被害妄想で……シュナやトムも……!
「なぁ……バッド。聞こえてるか? 魔法って感情的な方が……」
「聞こえてるよ。グルド」
そう言って俺は立ち上がる。そして、魔法指輪を付けている右手を前に伸ばした。
「ありがとう……グルド」
もう逃げない。
涙で前なんて見えなかった。でも、俺は右手に魔力を貯めた。指輪が小さく光り、俺の右手の目の前には波動が溜まっていた。
そして、俺はその波動をグルドに放った。
ドカンっ!!!!!
その大きな音と共に、グルドは吹き飛ばされ、反対側の寮の柱に衝突した。
「あ、ごめん……!!」
反射的に誤り、グルドの元に走り出す。
「怪我は!?」
「……」
反応のないグルドの目の前まで着き、倒れているグルドの前で腰を下げる。
「……はははは!! お前の変な魔力身体に流すやつパクったから大丈夫だ」
「それ……教えたっけ?」
「今見た」
「すご……」
そんな会話をしながら彼は立ち上がった。それに合わせて俺も立ち上がる。
2人とも何も話さず、ただただ校則違反を知らせるブザーが爆音で流れている。
「やればできるじゃん」
「……グルド! あの……今まで……ご、ごめ……」
「謝んのは俺にじゃねぇだろ。あと、謝んのは俺の方だ。上手くやれなくてすまん」
謝るのはグルドじゃない。その一言で我に返る。そうだ、そうだよ。本当に……その通りだよ……でも…
「謝る必要なんてないよ。グルドのおかげで……俺……気付けたから。でも、やっぱごめん」
「あ、お前今謝ったな!? 俺じゃないって言っただろ!」
「あははは! 別にいいじゃん俺悪かったんたまし」
「じゃあ俺も悪かっただろ! 先生に言われたけど上手く出来なくて困ってたんだよ」
「先生がなんか言ってたの!?」
そんな会話をしていると後ろから何か叫ぶ声が聞こえてきた。
「おい!!!! 誰だ高出力の魔法を使ったのは!!!」
「やべぇ……バッド。逃げるぞ!!」
「……うん!!!」
俺は友達と寮に向かって走り出した。
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