妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜

橋本 悠

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第4章

第43話 補習

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 補習2日目。今日は世界史だ。サラン先生によるとエアリスは世界史もしっかり取れているらしい。彼女は何を落としたのだろうか。
 ま、今日も話せそうにないんだけどな。

「世界史はまだまだ範囲があるから……」

 こうして俺とエアリスは補習と言うよりかは、今後やる範囲の予習の授業を受けた。これはかなりありがたい。周りとのスタートの差ができるからだ。

「じゃ、明日は国語だな。エアリスはしっかり来るように」

「ちょ!  あんまり大きい声で言わないでよ先生!」

 サラン先生の言葉に焦る彼女。なるほど、エアリスは国語を落としたのか。なんか……意外だな。いや、そうでも無いか?
 でも、暗記科目が得意なのは意外だ。なんだかんだみんなできるんだなぁ。

 サラン先生は「すまんすまん」と軽く謝り、教室を出ていった。
 ふと彼女の方を見た。目が合う。睨まれた。
 俺はすかさず会釈し、目を逸らした。

 やっぱ怖ぇ……多分もう……関わることないだろうな……

「ねぇ」

「は、はひ!」

 俺は急に話しかけられ、声が裏返ってしまった。そして、エアリスは俺に質問をしてきた。

「あんたは……何落としたのよ」

「魔法史……だよ」

 少し恥ずかしそうに聞いてくる彼女に、俺は恐る恐る答える。なんだなんだ?  何をしてくるって言うんだ……!?

「そうなのね!  じゃ、私帰るから」

「え、あ、え、はぁ……?」

 彼女は何事も無かったかのように教室を出ていってしまった。
 何を期待していた訳でもない。なんなら、何も言わないでくれ、と思っていた。

 でもなんだろう。この感じ。すごく……もやもやする!
 俺は頭をわしゃわしゃ両手で掻き回し、その後大きくため息をついた。

「はぁ……俺も帰ろ」

 モヤモヤしながら俺も帰路についた。

 ──────

「はい、じゃあエアリス。この主人公の心情がわかる文章はどこだ」

「え、えっと……」

 国語の補習が始まった。そして、受けて見て思ったことがある。それは、本当にエアリスは国語が苦手ということだ。
 正直、国語はセンスで何とかなってしまうところも多い。俺はセンスが無い側の人間だ。だから、しっかり国語も勉強したのを覚えている。

「バッドは分かるか?」

「えっと、39ページの2行目からですか?」

「そうだ。正解だ」

 エアリスが恥ずかしそうに俯く。彼女はきっとプライドが高い。出来なかったり劣っていたりするのが嫌なタイプだろう。

 こうして、3日目の国語の補習が終わった。

 いつも通り帰る準備をしていると、珍しいことが起きた。

「ねぇ」

「は、はひ!!」

 エアリスが気付かぬうちに目の前居た。そして昨日と同じように声が裏返ってしまった。

「あんた……魔法史出来なかったのよね?」

「ま、まぁ……」

「国語は得意なんだよね……?」

「ま、まぁ……うん」

 エアリスが唇を噛む。まだ何も言ってないのに悔しそうにしている彼女を見て、俺は静かに待った。

「……協力。私は魔法史をあんたに教えてあげるから……国語教えなさい!」

 エアリスは顔をグッ、と近づけ俺に問いかけた。協力。そう言ってお願いした事は、勉強を教え合おう、と言ったことだった。

 正直なところ、俺に大きなメリットは無い。魔法史もあの腹痛さえなければ取れていたからだ。
 でも、メリットが全くないという訳でも無さそうだ。エアリスが初めて自分から起こしてくれたチャンス。ここは逃せない。

「俺でいいなら……教えるよ。エアリス魔法史得意……なの?」

「得意よ!  だって中間テスト100点だもの」

 ひゃ、ひゃくてん!?  さすがに凄いそれは……
 驚く俺を気にもとめず、彼女はまた話し始めた。

「言っとくけど……あんたを認めたとかそういう事じゃないからね!?」

「え、あ、あぁ……?」

「シュナがちょっとあんたのこと褒めてただけだし!  魔法も使えるようになってたし……だから協力よ!  明日の補習の後、図書館の自習スペースね!?  分かった!?」

 なんだかいつものエアリスとは違う雰囲気だが、俺は「分かったよ」と伝え、俺たちは寮へと戻った。

 俺が以前彼女言われた言葉。

 ───こいつがここにいるのが私は許せない。私やあのメガネみたいに魔力量に恵まれなくて、でもゴスイに来たくて必死に勉強して努力してきた私たちがバカみたいじゃない!!────

 今でもしっかり覚えてる。彼女のあの目、表情。怒り。この言葉が俺の中で小さなトラウマになっていた。

 俺が努力してなかった訳じゃない。最近はやっと実ってきた気がする。でも、分かる。彼女は俺より何倍も努力してきたんだ。
 きっと生前の俺を足しても足りないくらいの努力。

 俺は彼女とちゃんと仲良くなりたい。そして、俺の努力を認めてもらいたい。
 だからもっともっと頑張らなきゃ行けないんだ。
 俺よりも上にいる人に追いつくために、俺はその人たちより頑張らなきゃ行けないんだ。

 今回分かったことは、彼女も少しは俺のことを認めてくれているかもということだ。
 だから……まぁ、何をするとかないんだけどな。

 とりあえず、明日。図書館に行こう。




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