妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜

橋本 悠

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第4章

第44話 勉強会

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「はい、魔法が生まれた歴史は約1万年前。その時は?」

「えっと……火属性の魔法しかなかった」

「そう。でも、ある時世界を支配しようとしたものが現れたの。で? そいつは?」

「水属性の魔法を……使えた?」

「正解。火じゃ水に勝てない。だからどんどん魔法の種類が増えていったってわけ」

 補習4日目の魔法史の授業を終えた俺たちは今、図書館にて追試に向けての勉強会を行なっている。

「ま、万物の根源は火であるとだけ覚えておきなさい。他は基本補足だから」

「その言葉エアリスが考えたのか?」

「何よ、悪い?」

「いえ。悪くありません」

 エアリスの授業ははっきり言って、死ぬほど分かりやすかった。固い話だけじゃなく、興味を引くような補足を付け加え俺の知識の幅を増やしてくれた。

 正直、俺はもう勉強なんてしなくていいやと考えていたところがあった。
 でも……勉強って……おもしれぇ……!!

 それから約一時間、みっちり魔法史について教えてもらった。

「じゃ、そろそろ魔法史は終わりね」

「エアリス、ありがとう。すごく分かりやすかったし、魔法史がこんなに面白いって思ったこと初めてだよ」

「ど……! どういたしまして……ってそんなことどうでもいいから! 次……あんたの番……!」

 恥ずかしそうに国語の教科書を取り出す彼女を見て少しドキッ、としてしまう。いかんいかん、ギャップに持ってかれるところだった……
 俺は将来を決めた人がいるんだ! 忘れるな俺!

「う、うん。うまく教えられるかわからないけど……」

 こうして立場は変わり、俺が教えるターンになった。

「主人公の心情の読み取り方のコツは……じゃ、エアリスはご飯を奢ってもらったらどんな気持ちになる?」

「ありがとうとか嬉しいとか?」

「じゃ、水をかけられたら?」

「うざい! 最悪!」

「そう。それが心情だよ。それを探せばいいんだ」

「それじゃあ、この主人公のこのシーンの心情は……「父の嬉しそうな表情を僕は見ていた」ってところ?」

「そこだと父の心情になっちゃうかな」

「ぐぬぬ……」

 エアリスに国語を教えるのは至難の業だった。言語や世界史と違って解答例がいくつもある国語は特に教えるのが難しい。加えてエアリスは想像以上に国語が苦手だった。この学校の入学試験に国語はなかったとはいえ、なかなかのものだった。

 でも、教えることは嫌でなかった。彼女もできないなりにしっかり話を聞いてくれて、質問もたくさんしてくれた。そしてそれと同じくらいに間違いもしてくれた。
 人は間違えて伸びる。俺は痛いほど知っている。その調子だエアリス。

 それから、またまた約一時間ほど経過し、とりあえず勉強会は終わることになった。

「テスト大丈夫かな……」

「初めに比べて文章読めるようになってきてたしきっと大丈夫だよ。しかも国語は明後日だし、時間はあるから何かあったら俺に聞いてよ」

 俺がそう言ってからなかなか返事がこない。
 いやぁ……ちょっと馴れ馴れしすぎたかな……
 今回の件で少しは距離縮んだと思ったけど……流石に俺に聞いては早すぎたかぁ……

 気まずさで逃げ出したくなっていたその時だった。

「ありがとう……あ、あんたも……バッドも! なんかあったら私に聞いてちょうだい!」

「え、あ、うん。分かったよ」

 気づいただろうか。俺はしっかり気がついている。彼女が、エアリスが初めてと、名前を呼んでくれたのだ。奇跡か? 夢か?

「何よその返事……」

「い、いや、なんでもないよ」

「か、帰るわよ!」

 これは奇跡でも夢でもない……現実だ! やったなバッド!
 俺は寮に戻り速攻この話をグルドに伝えた。

──────

「はい、テスト配るから机の上片付けろー」

 追試初日。今日の教科は言語と世界史だ。これはどちらも得意科目。エアリスもだ。そんなわけで難なく1日目のテストは終了した。

「明日テスト終わったらすぐ採点するから少し帰り遅くなっちまうが許してくれ」

 そう言い残しサラン先生は教室を出ていった。
 帰りの支度をしていると、遠くから声が聞こえる。

「バッド……やっぱり今日も……」

 エアリスだ。彼女曰く、昨日復習をしたがいまいちだったらしい。

「うん。大丈夫だよ。行こうか」

 こうして俺たちは昨日と同じように図書館へと向かい、勉強会をスタートさせた。基本的に今日は自習みたいな感じにし、わからないところがあったら聞く、という感じで進めていった。
 そしてあっという間に約一時間が徒党としていた。

「ねぇバッド! 初めて過去問満点よ!」

「すごいなエアリス!」

 俺とエアリスは反射的にハイタッチをした。そして何故かどちらも気まずそうな顔をする。

「ま、まぁ今日はこのくらいにしとこうか」

「そ、そうね」

 なんとも言えない雰囲気のまま図書館を後にする。そして二人で寮に向かっている最中のことだ。

「ねぇ……バッド?」

「ど、どしたん?」

 沈黙の中いきなり話しかけられた俺は変に返事をしてしまう。
 そんなことお構いなしに、俺の斜め後ろを歩くエアリスは話を続ける。

「す、少し話があるの……この後空いてる……?」

 な、なんだこの展開は……!?
 焦って俺は振り向いた。

 目の前に立っているのは、頬を赤らめた、まさに女の子の顔をしたエアリスであった。



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