妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜

橋本 悠

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第4章

第46話 グルドの素顔

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「えー、来週からは期末テストだ。このテストが終われば約2ヶ月の長期休みに入る。もちろん今回も点数が低かったやつには補習がある。しっかり勉強してくるように」

 中間テストの補習から約1ヶ月半が経ち、もう期末テストの時期が来た。
 エアリスの話を聞いた後、俺とエアリスは無事テストを合格し、普段の生活へと戻っていった。

「じゃあ今日はこれで終わりだ。気をつけて帰るように」

 サラン先生が教室を出ていくと、俺の席にエアリスが歩いて向かってきた。

「バッド!  今回のテスト勝負よ!」

「はいはい。そう言って毎回小テストでも負けてるでしょ?  今回は何賭けるんだ?」

「うるさいわね!  ……巨大パフェと行きましょ!」

「よし乗った。負けないからな」

「せいぜい頑張るといいわ!」

 そう言って立ち去っていくエアリスを眺める。
 あの補習が終わってからエアリスとの関係はとても良好だ。話もするしこうやってテストの対決なんかもしたりする。
 グルドやトムはこの関係性にとても驚いているようで……

「おいおい……最近お前あいつと仲良くないか?」

「うーん……そうかな。まぁ前よりはね」

「なんか俺嬉しいぜ!  エアリスの奴いっつもバッドの悪口ばっか言ってたからな」

「え、そうなのか!?」

 グルドとトムが座っている俺に話しかけてくる。毎回のようにトムは俺の肩に腕を巻き、ゼロ距離で話しかけてくる。

 てか悪口ばっか言われてた……の……?  ちょっとそれは悲しいな……はぁ……ま、仕方ないか。
 彼女の過去について詳しくは知らない。でも、知らないからって理解しない理由にはならない。

 そんなこんなで話しているが、いつもより元気の無い男がひとりいた。

「グルド……なんか元気ないな。どうしたんだ?」

 そう聞くとグルドは驚いたように「ち、違ぇよ!」と答えた。

「違ぇって何も否定してねぇだろ!  お前どうしたんだ?  もしかしてバッドがエアリスと仲良い事に……嫉妬……ぐへぇ!  何すんだよ!」

「うるさいトム!  ジュース奢れ!!」

 煽るトムに腹パンをかましたグルドが普段とは違う様子を見せ、先に教室を出ていった。

「グルドのやつ……意外とあーゆう所あるんだな!  素顔ってやつか!」

「あはは……そうだね。まだまだ知らないことだらけだ」

 グルドはきっとエアリスの事が……辞めておこう。私情に踏み込むほど俺は空気読めないやつじゃない。

 俺とトムは出ていくグルドを追いかけ、教室を後にした。

 ──────

「これで全部のテスト返したが、今回補習のやつはいなかった。みんなよく頑張った。明日1日授業をやって来週からは長期休みに入る。羽目は外すなよ」

 今回はしっかりトイレにも行き、無事期末テストは終了した。HRホームルームを終え、毎度のことながら足早に教室を出ていくサラン先生を見届けたあと、いつものように彼女が近付いてくる。

「バッド!  合計点は!?」

「352点だ。エアリスは?」

「……嘘でしょ!?  ぜったい勝ったと思ったのに……!!」

「何点か聞いてるんだよ」

「349点よ!  悪い!?」

「悪くは無いけど、まぁ巨大パフェ奢りだな」

「……明日の放課後仕方ないから奢ってあげる」

「はいはい。ありがとね」

 そんなこんなでエアリスはほっぺを膨らましシュナの席へと向かい、抱きついていた。そのエアリスを慰めるシュナと目が合い、ニコっ、と2人で目配せをする。

「てか、バッド点数高すぎないか?  俺なんて合計点183点だぞ!?」

「トムは毎回ギリギリだけど意外と耐えてるよね」

「当たり前だ!  やるときゃやる男だからな。あ、おーい、グルド!  お前は何点だったんだー?」

 遠くの席で1人で座るグルドを呼んだトムだったが、反応は無い。

「あれ……?  どうしたんだ?」

 俺とトムは逆にグルドの席へと向かい、声をかけた。

「どうしたんだ?  悪いものでも食ったか?」

「……352点って言ってたか?」

「……へ?」

「バッドの点数は352点って言ったか?」

「そうだけど……」

「……よし。よし!  俺は354点だ!  バッド!  俺の勝ちだよな!?  な!?」

 グルドはいきなり立ち上がり、俺の両肩をガシッとつかみ揺らしてきた。

「あーあーちょ、揺らすのやめて……」

「俺183!」

「お前には聞いてねぇ!!!」

 あー、なんか俺……勝手にライバル視されてない……?  

 正直なところ、エアリスにそう言う気持ちがあるかって言われたら完全なるノーだ。どちらかと言えば今は友達に近い関係性だ。恐らくエアリスの方もそう思ってるだろう。

 でも、グルドがここまでなるって……洗脳でもされたのか?  そんなに魅力的だったのか……?
 ……辞めておこう。後ろから視線を感じる。

「……すまん。ちょっと気が狂ってた」

「ほんとに狂ってるよまったく。なんでそんな俺に勝ちたかったんだ? 確かに部屋でも狂ったように勉強してたけど……」

「ちょっと話がある。2人とも食堂来れるか?」

 暗い表情のグルドに着いていき、俺たちは食堂のテーブル席に着いた。
 トムは気が付いたら1人で小盛パフェを頼み食べていた。

「で……話って?」

「バッド……お前さ……」

「……」

「エアリスと……付き合ってるのか?」

「ゲホッゲホッ!」

 むせるトム。意外と想定通りの質問に俺は嬉しくなってしまった。トムもそうだろう。

「なんだよそれ!」

 違うみたいだった。まぁいい。話を続けよう。

「別に……付き合ってるわけじゃないよ。そういう雰囲気も全くない。友達だよ」

「そうそう。バッドとエアリスは友達だぜグルド。安心して……ぐひゃ!」

 すごい勢いですねを蹴られたトムは悶絶して机に突っ伏した。そのまま会話は続く。

「そうだったのか……そうだったのか!  良かった……良かった?  ち、違ぇよ!?  別に俺がエアリスのことどう思ってるとかねぇし、でもバッドが付き合ってないから少し安心したとかそういうのもねぇし……」

「 別に隠さなくたっていいんだよ。俺はバカにしないし、俺にだってそういう風に思う人がいるんだ」

「……それってシュナか?」

「ううん違う。学校にはいないよ。だからさ、まぁ……俺にできることがあったら手伝うよ」

 俺は声を小さくして横にいるグルドに耳打ちをした。
 うんうん。こういうのやってみたかったんだよな。恋のキューピットってやつ?

「……頼んでもいいか?」

「もちろん」

「俺に……エアリスと話す機会をくれ!」

 俺は1年前期で1番重要なミッションを受けることとなった。

「脛腫れてるよ!  グルド!」

「お前は黙ってパフェ食ってろ」

「あはは……トムも大変だね……」

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