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第1章
第20話 最後の話
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「これで最後なんだけど……いいかな」
「はい。大丈夫です」
「最後はバッド君。君に聞きたくてね」
「は、はい」
「そんな身構えなくて大丈夫だよ。ケイト君のお母さんやお父さんを助けた時、何か気になったこととか、変わった事はあったかな」
俺が家に入って何かおかしかったこと……変わったこと……か。
「えっと……あ、そういえば。お母さんとお父さんのいた部屋に魔力結界のようなものが貼っていました。恐らく、内側から開けられないようになってたと思います。魔法とかも内側からじゃ通用しなさそうでした」
「魔力結界……か」
「はい。多分ですけど……ケイトの物じゃなかったです」
「どうしてそう思ったんだい?」
「魔力量です。ハッキリとは分かりませんけど……今考えてみればあのレベルの結界2つはケイトの魔力量じゃ無理だと思います。彼女もかなりの魔力量だと思いますが、それ以上に」
魔力結界。あの時はなんとも思わなかったが、今思えば不自然だ。あれは確実に殺すための結界だろう。
ケイトがあそこまで用意周到とは思えないし、なんなら仕掛けた様子もなかったと思う。
普段のケイトの魔力とは、感じ方も少し違う気もした。
「……ありがとうバッド君。実は僕も気になることがあってね」
「はい……?」
「その結界の話で少し現実味が増してきたよ」
「と、言うのも?」
「ケイト君の裏で手を回している者がいるかもしれないということだ」
ケイトの裏で……手を回してる……?
「誰なんですか! そいつは!!!」
「落ち着いて! バッド君!」
俺は本能的に叫んでしまった。身体中が痛む。でも、そんなことどうでもいい位に俺は疲弊していた。
「あ……ごめんなさい」
「大丈夫。無理もない。でも、まだ断定出来たわけじゃないんだ」
「どうしてそう思ったんですか?」
「まず、動機だ。お父さんに恨みがあるのなら家を、しかも、大切なお母さんごと燃やすことは無かったんじゃないかな」
「確かに……そういえば、ケイトは家の中にお母さんは居ないと思っていました」
「それについても本人に聞いてみたよ。でも、回答があんまりパッとしなかったんだ。いないと思ってたの一点張りでね」
「じゃあ……誰かがケイトに嘘をついてお母さんも一緒に殺させようとした……?」
「まだ断定は出来ないがその可能性もあるって所だ」
「ライトさんは何も言ってなかったんですよね?」
「あぁ。でも、お母さんは死ぬ覚悟はあったとだけは聞いている」
「それはケイトに頼んだ訳じゃないんですよね?」
「恐らくそれは無いはずだ。加えて、僕がケイト君に話を聞いている時、他に関係者はいるか聞いたんだ」
「そしたらなんて言ったんですか?」
「……言えません、と答えたんだ」
言えません。その言い回し的には、必ず誰かがいることを示唆している。
でも、なんで隠すのだろう。ケイト自身は捕まってしまっているのに。今更隠す意味はあるのだろうか。
それにライトさんの死にたい発言も謎だ。ケイトをあんなに愛していたのに。もし、ケイトが火をつけたって知っていたなら尚更だ。
「それじゃ……誰かがケイトを……?」
「その可能性が高いって話だ。ケイト君の弱みに漬け込んで犯行に及ばせた。口止めもしっかりしてね」
「でも、ケイト以外にあの家を燃やす意味がある人って……」
「そこだ。そこがいまいち分かっていない。犯人を見つけないと分からないんだ」
もし、裏で手を回しているやつがいたとして、目的はなんだ?
ケイトの不幸か? それとも国の滅亡か?
なんでもいいがケイトを操っているってんなら全員敵だ。
「俺に出来ることがあったらなんでも言ってください。力になりたいです」
「ありがとう。でも大丈夫。これは僕たちの仕事だからね。君の結界の話でこれからの調査に意味が出来た」
「でも……!」
「君はまだ子どもだ。学校だって行くんだろう?」
「彼女の為なら学校なんて……」
「だめだ。彼女も言っていた。一緒に学校に通いたかったって」
「だったら尚更!」
「彼女の気持ちになってみろ。もし君が彼女の為に学校に通わないってなったら……こんなに惨めな事、他に無いぞ」
俺は納得してしまった。惨めなのは辛い。惨めなのは俺だけで充分だ。
「じゃあ……もし、俺がゴスイに合格して卒業できたら。その時もまだ謎が解けてなかったら」
「その時まで調査してるかも分からないけどね。まぁ、少なからず僕は協力するよ」
「ありがとう……ございます……!」
こうしてスペルさんからの話は終わった。
「じゃあ私はここら辺で失礼するよ。何か聞いておきたい事とかは……あるかい?」
「聞いておきたいこと……は特にないです。……あ、スペルさん。明日もう一回病院来てくれませんか?」
「あぁ、それは全然大丈夫だが……なにか?」
「ちょっと最後にやりたいことがあって。流石に俺もこのままじゃダメだなって思って……」
「はい。大丈夫です」
「最後はバッド君。君に聞きたくてね」
「は、はい」
「そんな身構えなくて大丈夫だよ。ケイト君のお母さんやお父さんを助けた時、何か気になったこととか、変わった事はあったかな」
俺が家に入って何かおかしかったこと……変わったこと……か。
「えっと……あ、そういえば。お母さんとお父さんのいた部屋に魔力結界のようなものが貼っていました。恐らく、内側から開けられないようになってたと思います。魔法とかも内側からじゃ通用しなさそうでした」
「魔力結界……か」
「はい。多分ですけど……ケイトの物じゃなかったです」
「どうしてそう思ったんだい?」
「魔力量です。ハッキリとは分かりませんけど……今考えてみればあのレベルの結界2つはケイトの魔力量じゃ無理だと思います。彼女もかなりの魔力量だと思いますが、それ以上に」
魔力結界。あの時はなんとも思わなかったが、今思えば不自然だ。あれは確実に殺すための結界だろう。
ケイトがあそこまで用意周到とは思えないし、なんなら仕掛けた様子もなかったと思う。
普段のケイトの魔力とは、感じ方も少し違う気もした。
「……ありがとうバッド君。実は僕も気になることがあってね」
「はい……?」
「その結界の話で少し現実味が増してきたよ」
「と、言うのも?」
「ケイト君の裏で手を回している者がいるかもしれないということだ」
ケイトの裏で……手を回してる……?
「誰なんですか! そいつは!!!」
「落ち着いて! バッド君!」
俺は本能的に叫んでしまった。身体中が痛む。でも、そんなことどうでもいい位に俺は疲弊していた。
「あ……ごめんなさい」
「大丈夫。無理もない。でも、まだ断定出来たわけじゃないんだ」
「どうしてそう思ったんですか?」
「まず、動機だ。お父さんに恨みがあるのなら家を、しかも、大切なお母さんごと燃やすことは無かったんじゃないかな」
「確かに……そういえば、ケイトは家の中にお母さんは居ないと思っていました」
「それについても本人に聞いてみたよ。でも、回答があんまりパッとしなかったんだ。いないと思ってたの一点張りでね」
「じゃあ……誰かがケイトに嘘をついてお母さんも一緒に殺させようとした……?」
「まだ断定は出来ないがその可能性もあるって所だ」
「ライトさんは何も言ってなかったんですよね?」
「あぁ。でも、お母さんは死ぬ覚悟はあったとだけは聞いている」
「それはケイトに頼んだ訳じゃないんですよね?」
「恐らくそれは無いはずだ。加えて、僕がケイト君に話を聞いている時、他に関係者はいるか聞いたんだ」
「そしたらなんて言ったんですか?」
「……言えません、と答えたんだ」
言えません。その言い回し的には、必ず誰かがいることを示唆している。
でも、なんで隠すのだろう。ケイト自身は捕まってしまっているのに。今更隠す意味はあるのだろうか。
それにライトさんの死にたい発言も謎だ。ケイトをあんなに愛していたのに。もし、ケイトが火をつけたって知っていたなら尚更だ。
「それじゃ……誰かがケイトを……?」
「その可能性が高いって話だ。ケイト君の弱みに漬け込んで犯行に及ばせた。口止めもしっかりしてね」
「でも、ケイト以外にあの家を燃やす意味がある人って……」
「そこだ。そこがいまいち分かっていない。犯人を見つけないと分からないんだ」
もし、裏で手を回しているやつがいたとして、目的はなんだ?
ケイトの不幸か? それとも国の滅亡か?
なんでもいいがケイトを操っているってんなら全員敵だ。
「俺に出来ることがあったらなんでも言ってください。力になりたいです」
「ありがとう。でも大丈夫。これは僕たちの仕事だからね。君の結界の話でこれからの調査に意味が出来た」
「でも……!」
「君はまだ子どもだ。学校だって行くんだろう?」
「彼女の為なら学校なんて……」
「だめだ。彼女も言っていた。一緒に学校に通いたかったって」
「だったら尚更!」
「彼女の気持ちになってみろ。もし君が彼女の為に学校に通わないってなったら……こんなに惨めな事、他に無いぞ」
俺は納得してしまった。惨めなのは辛い。惨めなのは俺だけで充分だ。
「じゃあ……もし、俺がゴスイに合格して卒業できたら。その時もまだ謎が解けてなかったら」
「その時まで調査してるかも分からないけどね。まぁ、少なからず僕は協力するよ」
「ありがとう……ございます……!」
こうしてスペルさんからの話は終わった。
「じゃあ私はここら辺で失礼するよ。何か聞いておきたい事とかは……あるかい?」
「聞いておきたいこと……は特にないです。……あ、スペルさん。明日もう一回病院来てくれませんか?」
「あぁ、それは全然大丈夫だが……なにか?」
「ちょっと最後にやりたいことがあって。流石に俺もこのままじゃダメだなって思って……」
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