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第1章
第21話 ケイトへ
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「ケイト君。調子はどうだ」
「はい。ここに来てからゆっくり出来てるので。でもなんで今日はスペルさんがここに?」
「ちょっと渡したい物があってね」
私は首を傾げながらスペルさんの方を向いた。スペルさんは来ていたスーツの内ポケットからなにか取りだし、私の方に差し伸べてきた。
「これは……?」
「バッド君から君に当てた手紙だよ」
「……!」
震える手で私はその手紙を受け取った。
☆☆☆
「やぁ、バッド君。約束通り来たよ」
「あ、スペルさんお疲れ様です。昨日最後に伝えた件なんですけど……」
俺は枕の下に置いておいた手紙をスペルさんに渡した。この手紙は昨日の夜書いたもので宛先はもちろん。
「ケイト君に……かな」
「はい。このまま一旦終わりでも良かったんですけど……やっぱり無理そうで。今の気持ちくらいは伝えたいなって。ケイトが会わないって選択をしたなら会えないなりに伝えさせてください」
俺の最後の頼み。今の気持ちをケイトにしっかりぶつけること。ケイトが最後に残してくれた手紙は俺にちゃんと気持ちをぶつけてくれた。
やられっぱなしじゃだめだ。人生二週目だ、やらないで後悔なんて絶対したくない。
「しっかりと君の気持ち受けとったよ。これは私が責任もってちゃんと彼女に渡すことにするよ」
「ありがとうございます。あ、読んだ感想とか言っててもそれは俺に言わないでください。多分会いたくなっちゃうんで」
「あぁ……分かった」
このあと少し、他愛もない話をした後、スペルさんは中央警察へと戻っていった。
☆☆☆
「これ……今読んでも……」
「あぁ。私はもうすぐ行くよ。ゆっくり部屋で読みなさい」
そう言ってスペルさんは私の頭をポンッと優しく叩き、そのまま何も言わず面会室を出て行ってしまった。
震える手でバッド君からの手紙を握りしめ、自分の寮の部屋に戻った。
ゆっくり封を空け、中の便箋を取り出す。
私は彼からの手紙を読み始めた。
ケイトへ
まず初めに、ケイトに出会えて本当に良かった。ありがとう。
ケイトの手紙は謝罪から始まってたから、俺は感謝から始めようと思います。
本当にケイトには感謝の気持ちしかありません。初めてあったあの日、俺の手を引っ張ってくれたあの時から、毎日毎日俺はケイトのことばっかり考えてました。
次会うのは明後日かーとか、1週間も空くのかーとか、たった1ヶ月なのにこんなにも人の事を思う1ヶ月は初めてでした。
「……ばか」
溢れる涙を堪えながら、2枚目をめくる。
でも、思い返してみれば全部お誘いはケイトの方からで、死ぬほど会いたいのに受け身になってた自分に腹が立ちます。
ケイトと会った最後のあの日。正直、俺の行動が正しいのか未だに分かりません。でも、後悔はしてないよ。
こんなに人を助けたい、力になりたいって思ったのは初めてだから。ケイトは手紙にも書いててくれたよね。会えて嬉しかったって。
俺はどうだったのかなって思った時、本当のこと言っちゃうと嬉しいとか感じる前に家の方に身体が動いてたんだ。でも、ケイトのその発言のおかげで分かったことがあります。
ここで最後の3枚目へと手紙が変わる。
次、会えた時。
絶対に────嬉しいって思えるなって。
ケイトはもう会えないって言ってたけどさ、全く俺は信じてないし、今すぐにでも俺は会いたい。会ってちゃんと話したい。
でも、そこまで俺も馬鹿じゃないからケイトの気持ちだってわかる。
だから、これから先。ケイトの気持ちが変わるのであれば。
───また、いつもの場所にいつもの時間に俺を誘ってよ。
そしたら次は俺がケイトをデートに誘うからさ。また会える日を楽しみにしてます。
バッドより
私は丁寧に手紙をしまい、机に置いた。そして、ベットに飛び込み静かに泣いた。
「本当に……バッド君の……ばか……」
今すぐに会いに行きたいと思ってしまってる自分が憎かった。会ってしまったらバッド君を危険にさらしてしまうかもしれないから。だからもう会わないって、自分で決めたことなのにこんなにもすぐ揺らいでしまうなんて。
「……バッド君……会いたいよ……」
小さく震えた声で独り言をつぶやく。それ以降は何も喋らずただひたすらに泣いた。あの日のことも悔やんだ。あれが本当にいちばん正しい行動だったのかをずっと自分に問い続けた。
「……ごめんね……バッド君……」
バッド君からの手紙を何回も読み直しながら、この日は泣いて泣いて、泣き続けた。
☆☆☆
目覚めてから3日が経ち、俺は今日の夕方、退院出来ることになった。
昨日、ストローグさんがお見舞いに来てくれ、全てを話した。
落ち込む俺を見て、ストローグさんは「俺は馬鹿で鈍感だから」とか言って来週から修行を再開するとか言い始めた。
……ありがとう。ストローグさん。
そして夕方。俺は身支度を済ませ、受付まで向かった。
「何度も何度もすいません。ありがとうございました」
「いえいえ、もう怪我しちゃダメだよ」
仲良くなった看護師に別れを告げ、俺は家へと向かって歩き出した。
☆☆☆
「バッド! 良かった……」
「待っていたぞ……! バッド!」
「ちょ、2人とも……苦しいって……」
両親に抱きつかれた俺は、2人の背中をパンパンと叩き、包囲網から抜け出した。
「……ただいま」
「おかえりなさい」
「ご飯出来てるから、食べましょっか」
「うん」
俺は食卓に着いた。久しぶりの家のご飯。とても美味しかった。
でも、会話は少なかった。お母さんたちも俺に気を使っているのか、あまり話を振ってこなかった。
手紙ではあんなこと書いたけど、やっぱりなんだかんだ辛いことは辛いし悲しいことには変わりなかった。
両親に急に申し訳ない気持ちになる。でも、気が乗らないのも事実だ。あれだけのことがあって、大切なものをひとつ失った。
そのショックはでかい。
……? 失った? 何また変なこと思ってんだ。
失ってなんかいない。まだ、まだ。
俺の人生は1回終わって。もう、これからは失う訳には行かないんだ。
「ごめん! 2人とも!」
「ん! 何よいきなり!」
急に立ち上がった俺に驚いた顔をするお母さんとスープを口から吹き出すお父さん。
「ちょっと元気なかったけど……もう大丈夫!」
俺がそう言うとお母さんとお父さんは、ニコっ、と微笑み、「早く食べなさい」と全然手をつけてなかったご飯をササッとこっちに寄せてくれながら言った。
椅子に座り直し、俺はご飯を食べ始める。
人生をリスタートした俺。形は違えど、もう一度リスタートだ。
やることは決まってる。もう、誰も死なせないし、いじめられないし、魔法科卒業してケイトと結婚する。そして────死なない。
俺の人生の第二章はもう始まってるんだ。
───第1章 完───
「はい。ここに来てからゆっくり出来てるので。でもなんで今日はスペルさんがここに?」
「ちょっと渡したい物があってね」
私は首を傾げながらスペルさんの方を向いた。スペルさんは来ていたスーツの内ポケットからなにか取りだし、私の方に差し伸べてきた。
「これは……?」
「バッド君から君に当てた手紙だよ」
「……!」
震える手で私はその手紙を受け取った。
☆☆☆
「やぁ、バッド君。約束通り来たよ」
「あ、スペルさんお疲れ様です。昨日最後に伝えた件なんですけど……」
俺は枕の下に置いておいた手紙をスペルさんに渡した。この手紙は昨日の夜書いたもので宛先はもちろん。
「ケイト君に……かな」
「はい。このまま一旦終わりでも良かったんですけど……やっぱり無理そうで。今の気持ちくらいは伝えたいなって。ケイトが会わないって選択をしたなら会えないなりに伝えさせてください」
俺の最後の頼み。今の気持ちをケイトにしっかりぶつけること。ケイトが最後に残してくれた手紙は俺にちゃんと気持ちをぶつけてくれた。
やられっぱなしじゃだめだ。人生二週目だ、やらないで後悔なんて絶対したくない。
「しっかりと君の気持ち受けとったよ。これは私が責任もってちゃんと彼女に渡すことにするよ」
「ありがとうございます。あ、読んだ感想とか言っててもそれは俺に言わないでください。多分会いたくなっちゃうんで」
「あぁ……分かった」
このあと少し、他愛もない話をした後、スペルさんは中央警察へと戻っていった。
☆☆☆
「これ……今読んでも……」
「あぁ。私はもうすぐ行くよ。ゆっくり部屋で読みなさい」
そう言ってスペルさんは私の頭をポンッと優しく叩き、そのまま何も言わず面会室を出て行ってしまった。
震える手でバッド君からの手紙を握りしめ、自分の寮の部屋に戻った。
ゆっくり封を空け、中の便箋を取り出す。
私は彼からの手紙を読み始めた。
ケイトへ
まず初めに、ケイトに出会えて本当に良かった。ありがとう。
ケイトの手紙は謝罪から始まってたから、俺は感謝から始めようと思います。
本当にケイトには感謝の気持ちしかありません。初めてあったあの日、俺の手を引っ張ってくれたあの時から、毎日毎日俺はケイトのことばっかり考えてました。
次会うのは明後日かーとか、1週間も空くのかーとか、たった1ヶ月なのにこんなにも人の事を思う1ヶ月は初めてでした。
「……ばか」
溢れる涙を堪えながら、2枚目をめくる。
でも、思い返してみれば全部お誘いはケイトの方からで、死ぬほど会いたいのに受け身になってた自分に腹が立ちます。
ケイトと会った最後のあの日。正直、俺の行動が正しいのか未だに分かりません。でも、後悔はしてないよ。
こんなに人を助けたい、力になりたいって思ったのは初めてだから。ケイトは手紙にも書いててくれたよね。会えて嬉しかったって。
俺はどうだったのかなって思った時、本当のこと言っちゃうと嬉しいとか感じる前に家の方に身体が動いてたんだ。でも、ケイトのその発言のおかげで分かったことがあります。
ここで最後の3枚目へと手紙が変わる。
次、会えた時。
絶対に────嬉しいって思えるなって。
ケイトはもう会えないって言ってたけどさ、全く俺は信じてないし、今すぐにでも俺は会いたい。会ってちゃんと話したい。
でも、そこまで俺も馬鹿じゃないからケイトの気持ちだってわかる。
だから、これから先。ケイトの気持ちが変わるのであれば。
───また、いつもの場所にいつもの時間に俺を誘ってよ。
そしたら次は俺がケイトをデートに誘うからさ。また会える日を楽しみにしてます。
バッドより
私は丁寧に手紙をしまい、机に置いた。そして、ベットに飛び込み静かに泣いた。
「本当に……バッド君の……ばか……」
今すぐに会いに行きたいと思ってしまってる自分が憎かった。会ってしまったらバッド君を危険にさらしてしまうかもしれないから。だからもう会わないって、自分で決めたことなのにこんなにもすぐ揺らいでしまうなんて。
「……バッド君……会いたいよ……」
小さく震えた声で独り言をつぶやく。それ以降は何も喋らずただひたすらに泣いた。あの日のことも悔やんだ。あれが本当にいちばん正しい行動だったのかをずっと自分に問い続けた。
「……ごめんね……バッド君……」
バッド君からの手紙を何回も読み直しながら、この日は泣いて泣いて、泣き続けた。
☆☆☆
目覚めてから3日が経ち、俺は今日の夕方、退院出来ることになった。
昨日、ストローグさんがお見舞いに来てくれ、全てを話した。
落ち込む俺を見て、ストローグさんは「俺は馬鹿で鈍感だから」とか言って来週から修行を再開するとか言い始めた。
……ありがとう。ストローグさん。
そして夕方。俺は身支度を済ませ、受付まで向かった。
「何度も何度もすいません。ありがとうございました」
「いえいえ、もう怪我しちゃダメだよ」
仲良くなった看護師に別れを告げ、俺は家へと向かって歩き出した。
☆☆☆
「バッド! 良かった……」
「待っていたぞ……! バッド!」
「ちょ、2人とも……苦しいって……」
両親に抱きつかれた俺は、2人の背中をパンパンと叩き、包囲網から抜け出した。
「……ただいま」
「おかえりなさい」
「ご飯出来てるから、食べましょっか」
「うん」
俺は食卓に着いた。久しぶりの家のご飯。とても美味しかった。
でも、会話は少なかった。お母さんたちも俺に気を使っているのか、あまり話を振ってこなかった。
手紙ではあんなこと書いたけど、やっぱりなんだかんだ辛いことは辛いし悲しいことには変わりなかった。
両親に急に申し訳ない気持ちになる。でも、気が乗らないのも事実だ。あれだけのことがあって、大切なものをひとつ失った。
そのショックはでかい。
……? 失った? 何また変なこと思ってんだ。
失ってなんかいない。まだ、まだ。
俺の人生は1回終わって。もう、これからは失う訳には行かないんだ。
「ごめん! 2人とも!」
「ん! 何よいきなり!」
急に立ち上がった俺に驚いた顔をするお母さんとスープを口から吹き出すお父さん。
「ちょっと元気なかったけど……もう大丈夫!」
俺がそう言うとお母さんとお父さんは、ニコっ、と微笑み、「早く食べなさい」と全然手をつけてなかったご飯をササッとこっちに寄せてくれながら言った。
椅子に座り直し、俺はご飯を食べ始める。
人生をリスタートした俺。形は違えど、もう一度リスタートだ。
やることは決まってる。もう、誰も死なせないし、いじめられないし、魔法科卒業してケイトと結婚する。そして────死なない。
俺の人生の第二章はもう始まってるんだ。
───第1章 完───
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