妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜

橋本 悠

文字の大きさ
28 / 31
第2章

第26話 リュナさん

しおりを挟む
 リュナさんの家へと向かっている途中のこと。

「そういえば自分、ゴブリンと戦ったんですけど……多分、いや、90パーセントくらいで知性がありました」

 何気なく話題を提示した俺だったのだが……

「ゴブリンに知性が!?!?」

 ストローグさんは足を止め、顔をグイッ、とこちらに近づけてきた。

「は、はい……ちょ、近いです……。てか、そんなに驚くことなんですか?」

 正直ここまでストローグさんが驚くとは思っていなかった。

 俺は生前、ありとあらゆる知性のあるモンスターと対峙したことがあった。

 だから、あまりおかしいとは思わなかった。ここら辺では出ないと言われていたから少し驚いた位だった。

「そうだぞ!  基本モンスターは知性を持たない。知性を持つのは上級、いや、それ以上のモンスター達だけだ。……下級のゴブリンが持ってるとは到底思えねぇよ」

 そんなものなのか?  中央都市とは考え方が少し違うのだろうか。ゴスイを卒業出来たら、そっちの方のダンジョンにでもストローグさんを連れて行ってみよう。

 俺とストローグさんはまた歩き出した。

「ここだな。リュナさんの家は」

 そう言ってストローグさんはドアをコンコン、と2回ノックし、「ストローグです」と、家の中に伝えた。

 その瞬間、家の中からドタバタと音が鳴り、リュナさんが家から飛び出てきた。

「ストローグさん!!  あ、あとバッド君!!  本当にありがとうございました!!」

 外に出てきた途端、土下座をするリュナさんの肩をストローグさんがポンッ、と叩く。

「いえいえ。当たり前のことですよ。シュナちゃんの様態はどうなんですか?」

「さっき一瞬目を覚ましたんですけど……バッド君の心配だけしてまた眠っちゃいました。怪我は太ももの傷だけだったのでチョウさんに。あ、洋服洗って返します……すいません!!」

「あ、全然大丈夫ですよ。シュナさんが無事で良かったです」

 慌ただしいリュナさんにそう返事をすると、凄い形相でこちらに近づいてきた。

「え、えっと……どうかしました……か?」

「……この御恩、どうお返しすればいいのか……ストローグさんから聞きました……バッド君がシュナを見つけて助けてくれたって……」

「い、いや!  ストローグさんが居なかったら俺も危なかったですし……」

「もし良かったら……」

「……?」

「うちの娘を妻に向かい入れてくれませんか!?!?」

「つ、つま!?!?  え、い、いや、ち、ちょっと……」

 いきなり過ぎて驚きを隠せなかった俺を見てストローグさんが話し出した。

「ははははは!!  ごめんなさいねリュナさん。こいつ、好きな女の子いるんですよ」

「あ……そうなんですかごめんなさい!」

「ちょ、す、好きとかじゃないですから!!」

 反射的にストローグさんをポコポコ叩く。

「シュナちゃんも結構可愛いんじゃないのか……?」

「そういうこと言わない……!」

 コソコソ話す俺とストローグさん。そんな中、リュナさんが真面目そうに口を開いた。

「でも、本当にありがとうございました」

 そう言って深く頭を下げ、お礼を言ったリュナさん。
 
 良かった。本当に良かった。助けられて。

「そういえば、リュカ君は大丈夫なんですか?」

「はい。今はシュナの面倒見てくれてます」

「そうなんですね。じゃ、今日はここら辺で帰らせて貰います」

「あ、今度シュナからもお礼を言わせなくちゃだから……また来てくれますか?  バッド君は服の件もありますし」

 ストローグさんがこちらをチラッ、と見つめる。

「はい。もちろんです。歳も近いので仲良くさせてください」

「ありがとうございます!」

 こうして、長かったモンスター討伐も幕を閉じた。

☆☆☆

「うちの子がお世話になってたなんて……バッドの母のイナスと申します。……本当にすいません!」

「あ、いえいえ、俺は全然大丈夫ですし、今回の件は俺が誘っちゃったんで……」

 今、我が家に来ている。そして、ストローグさんがお母さん達に今日の出来事について話している。

「おい……バッド。俺との関係言ってなかったのかよ……」

「はい……そういえば言ってませんでした……」

 コソコソと会話をする俺とストローグさん。目の前には驚いた顔をした両親がいた。

 確かに言ってなかったな……ケイトのことは言ってたけど、そういえばストローグさんの事は全く言ったこと無かった。

「でも、無事でよかったです。ストローグさんも」

「すいませんでした。これからはもっと注意深く接しようと思います。それではここら辺で」

 そう言ってから軽く挨拶をし、ストローグさんは家へと戻って行った。

「バッド……」

「はい……」

「この前のケイトちゃんの家の件もそうだけど、たまたまあなたは無事で居られている。怪我はしてるけどね。でも……でもね」

 お母さんの表情が真剣に変わった。俺は静かに聞く。

「もう、命に関わるような危ないことは極力さけなさい」

「……分かりました」

 確かにそうだ。俺は勘違いしていた。
 今、俺はまだ14歳。まだまだ子どもだ。心は23歳だけどな。

 お母さん達にも、命に関わるようなことはやめてって言いたいけど。やめておこう。

 あとは、もう、危ないことはやめよう。人に心配かけることを。

☆☆☆

 数日後。

「え、えっと……バッドって言います」

「ほら、シュナ。挨拶とお礼」

「しゅ、シュナ……です。この前は……ありがとうございま……した……」

 母親譲りの綺麗な青い髪の毛の彼女。なんだかとても想像とは違った性格の女の子であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

こうしてある日、村は滅んだ

東稔 雨紗霧
ファンタジー
地図の上からある村が一夜にして滅んだ。 これは如何にして村が滅ぶに至ったのかを語る話だ。

処理中です...