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第2章 少年期 剣術・魔術成長編

番外編 新しい家族 リューネ・ストラス①

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 私の名前はリューネ・ストラス。
 訳あってバルコット家の家族となった。その訳も正直あんまり覚えていない。うっすらとした記憶しか。

 家の第一印象は、愛想の良いお父さん、優しいお母さん、気の利くメイドと言った感じで割と好印象だった。
 ──彼が現れるまで。

「エイミー説明ありがとう。俺の名前はグラリス。今年で五歳だ。魔力属性は……あんまり使いこなせてなくて言いたくはないが【全属性】だ。とりあえずこれからよろしくね」

 彼が私に向かって手を伸ばし握手を求めてきた。

 こんな時間まで寝てて【全属性】?  こんなポンコツ見たいな男が?  信じられない。私なんか……

「こんな時間に起きるなんてその【全属性】が勿体ないわね」

 気が付いたら私はこんなことを言ってしまっていた。
 でも、本当に思っている。

 多分街の人に私と彼が二人で「私たちどっちかが【全属性】なんです!  どっちだと思いますか?」見たいな街頭インタビューをしたらぜっっっっったいに!  私が全ての票を勝ち取るはずだわ。

 なのに私は【風属性】。本当に彼と取り替えて欲しいくらいだわ。

「ま、まぁリューネちゃん。うちは部屋が少なくてグラリスの部屋とエイミーの部屋どっちかに2人で寝てもらおうと思うんだけど……」

「エイミーさんでお願いします」

 私は即答した。誰がなんと言おうとこれは即答だ。

 それからなんやかんやあって、私は一人でエイミーさんの部屋で寝ることになった。

 あのポンコツの彼はとても悲しそうな顔をして居たが、正直何も思うことは無かった。

 ──────

 ──これは……夢?

 私の目の前には1人の女性がいた。その女性の表情は暗かった。

 なぜだろう。とても不安になった。悲しくなった。そして、怖くなった。

 どんどん離れていくその女性に手を伸ばした。でも届かない。さらに離れていく。

 その女性は微笑みながら泣いていた。そして、何か話していた。

 だめ……待って……行っちゃだめ! 

 お母さ───

「……!  良かった……夢……」

 最近になって同じ夢を何回も見るようになった。
 夢を見ている時は夢だとは気付かない。でも、目を覚ますとまたこれか、となる。

 でも、夢に出てくる女性が誰なのかは未だに分からない。

 私の中に眠る古い記憶──

 ……まぁ、でも、こんな出来事あったことないし、女性も誰か覚えていない。

 私は両親が亡くなったことを覚えていない。ショックで記憶を失ってしまったと伝えられ、両親の死もその時知った。

 ……あんまり思い出そうとしても良くないかな。

 今の時刻は6時半。あーあ、今日もあまり眠れなかったわ。

 ──────

 私は今、グラディウスさんに剣術を習っている。
 私は【風属性】。普通の魔法使いになんてなれやしない。

 だから私は魔剣士を目指すことにした。

「よ~し。まず剣術からだな。グラリス、リューネ2人で実力を確かめ合ってみろ」

「……と言いますと?」

「2人で決闘だ!!」

「決闘……?  ですか?」

 決闘……いいじゃない。このポンコツに格の違いを見せつけてやるわ。
 けちょんけちょんにしてやるわ。

「いいですよ。いい機会です。分からせてあげます」

 こうして決闘は始まった。
 始まって直ぐに、彼はなにか仕掛けようとしていた。

 木刀での試合で魔力を発生させようとしている?
 彼は一体何を……!

「おりゃぁぁぁあ!!」

 私が考えていると、彼は【風属性】の魔法を駆使し、ものすごいスピードで私に近付いてきた。

 私は咄嗟に木刀で彼の攻撃を受け流した。

 今のは少し危なかったわ。でもそんなことができるなんで……くそっ!  知らなかったじゃない!  悔しいわ!!

 彼は「す、すまん」と、何故か謝ってきたがもうそんなのどうでもいい!

「……あなた思ったよりもやるみたいね」

 私よりのは初めて見た。だから、その分悔しかった。

 彼はさっき【風属性】の魔法を足元に発生させていた。
 ……やってみる価値しかないわ。

 私は彼の見よう見まねで足元に魔力を発生させた。
 すると、彼は何か話していたが、ものすごいスピードで一発、仕返しをすることに成功した。

「……なるほど。こうやってあなたは使ったのね」

 私の攻撃をもろに受け、みぞおちを抑えながら彼は立ち上がった。

「ちょ、ちょっといきなり過ぎませんか?」

「なによ、あなただってそうだったでしょ。つくづくあなたには勿体ない魔力属性だわ」

 その力があれば私だって……今そんなこと考えても仕方がない!

   今私……少し……楽しんでる!!

 私は興奮していた。そして、また、足元に魔力を発生させる。さっきよりもたくさんの魔力を。

 私は彼の周りを猛スピードでまわり続けた。

 これで……終わりよ!!

 猛スピードで後ろから彼に近付き、木刀を振り下ろした……が、彼は私が近付くと、それと同時に振り返り、私の木刀に彼の木刀が振り下ろされた。

 その時、ガコンッ!!  っと大きな音が鳴り響いた。

「この決闘、武器破損により、グラリスの負け。勝者リューネ!!」

 ……危ないところだった。

 完全に私の攻撃は読まれていた。あのスピードを読まれるなんて……彼、本当は……

 私は心の中でガッツポーズをしてしまっていた。
 多分笑っていたと思う。何年ぶりに笑っただろうか。そんなの数えてないから分からない。

「あなた、本当に少しだけ意外とやるじゃない。褒めてあげるわ。ふふ」

 ──グラリス・バルコット
 彼はとんでもない実力を持っているわ。

 ──────

 次はエイミーさんに魔法を教えて貰っていた。

 私はそこで現実を思い出す。そう、私の魔力属性は
【風属性】なのだ。

「分かってるわ……さっき見たもの。でも、そーゆー使い方があるなんて気付けなかったのが悔しいの。こんなポンコツ見たいなやつに負けた気分だったわ」

 悔しくて、でもどうな風に言えばいいのか分からなくて。
 私はこんなことを言ってしまった。

「リューネ様!! ポンコツは言い過ぎですよ!! リューネ様もとっても優秀でございますが!! 魔法ならうちのグラリス様も負けてません!! そこまで言うなら勝負です!!」

 分かってるわよ!!  グラリスが十分凄いのなんて!!

「リューネ。俺と魔法での勝負、受けてくれるのか?」

「……いいわ。やってあげる」

 こんなのどっちが勝つかやる前から決まってる。
 絶対にグラリスだ。

 あの底知れない魔力。私が勝てるわけない。

 案の定、私の魔法は負けてしまった。完敗だった。

「リューネ!  これで一体一だな」

「……そうね……で、でも……まだ私はあなたを認めたわけじゃないから!」

 いーや?  そんなことありませんよリューネさん?
 私はまたこんな嘘をついてしまった。

 私の前に一つとても大きな目標が現れたのだった。
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