お気に召しませ···(仮)

綾辻

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忍び愛①

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「気をつけて行ってらっしゃい」

 ニコニコ笑いながらママは、修学旅行に向かう私達を見送ってくれた。

「由依、重いだろ?貸せ」

 と良樹が言えば、

「僕、そのリュック持つ!」

 晃樹が張り合って、私は軽々とした身体で歩く。

「楽しみだね!自由行動、合流出来るかなー?」

「させるさ。携帯の持ち込みオッケーだからな」

「携帯···。あぁっ!」

 晃樹が大きな声で叫んだ。

「お前···」

「まさか。あれほど昨日言ったのに!!」

 晃樹は、携帯を家に忘れてきたが、取りに戻る時間はない。

「諦めろ。忘れるお前が悪い」

 つっけんどんに言う良樹。

「公衆電話探すか、友達に借りれば大丈夫だよ」

 晃樹にそう言ってやったが、公衆電話とかあるのかなー?と不安にもなった。

 溜め息をつきつつも、修学旅行で何をするか?の話で盛り上がってる内に、

「じゃぁーねーっ!」

「あとでな!」

「待ってて!」

 それぞれのクラスの集合場所へと向かった。


「おはよ。仲いいね、いつも」

 同じクラスで席も近い花ちゃん。

「おはよ。花ちゃん、どうだった?上手くいった?」

 ちょっと前、花ちゃんは片思いしている吉澤くんに告白をした。

「うん。自由行動、一緒に行けないけどいい?」

 花ちゃんは、ちょっとだけ申し訳ない程度に困った顔をしていた。

「いいよ。良樹達と合流するし」

 周りを見渡すと、なんとなーくだけど···

「修学旅行前に、くっついたカップル多いよ···」

「だからか···」

 いつもは、女の子で固まってるグループは、クラスの男子と話したりしてた。

「それに···」

「なに?」

「この旅行中に、良樹くんに告る子もいるんだって!はら、あそこにも···」

 花ちゃんは、小声で話しながらも、指さしたその先に、優希ちゃんがいた。私よりも背が高くて、おっぱいがおっきな女の子。

「······。」

 良樹が、モテるのは知ってるけど···。なんで、優希ちゃんが?一瞬、優希ちゃんと目があったんだけど、睨まれた?

「あと他にも何人かいるよ。」

「マジ?」

「でもさ、いい機械じゃん。お互いブラコン、シスコン卒業できてさ。ふふっ」

❨違うんだよぉ!シスコンでもブラコンでもないよぉ!❩

 時間近くなると、担任の先生から注意事項とかを聞かされ、ゾロゾロとバスに乗り込んで行く。

「あ···」

 そうだった。佳穂ちゃん、おじいちゃん亡くなってお休みで、席が繰り上がるとか先生言ってたのを思い出した。

「座んないの?後ろ、詰まっちゃうし」

 鏡を見ながら喋る優希ちゃん。

「うん···」

 リュックを上に乗せて、優希ちゃんの隣に腰掛けた。

❨き、気不味い···❩

 席に座ると取り敢えず、携帯をチェック。

»俺ら一組が、トップだ!

 良樹からのメールに、

›私は、三番目だよ。自由行動、楽しみにしてるね!

 と打ち返す。

「彼氏?」

「へっ?」

 優希ちゃんが、笑いながらこっちを見た。

「よ、良樹···」

「ふーん。仲、いんだ。食べる?」

 優希ちゃん、ポッキーを差し出して、1本貰った。

「兄弟、だから···」

 気不味いままでも、ポツポツと話す。

「兄弟か。いいなー。うち、一人っ子だし」

 初めて知った。結構大人びてるから、お姉ちゃんがいるのかと思ってた。

「由依、ちゃん?って呼んでいい?」

「うん。いいけど···」

 名前を呼ばれたのも初めて。今までは、名字だったから。

「良樹くんって···」

「うん?」

「彼女とかいるのかな?」

 スカートの裾を弄りながらも、話す姿の優希ちゃん。

「さ、さぁ···」

「前に、告白した子が言ってたんだ。良樹くん、付き合ってる子がいるからって」

❨告白?初めて聞いた❩

「だからさ、なんか知ってるかなって···」

「聞いたことないし。わかんないや」

❨話が···重い···❩

 そんな話をしつつ、お互いの家族の話、学校の先生の話を前の席の子も交えて話したりしてた。

 途中、サービスエリアに立ち寄ってのトイレ休憩で、良樹にジュースを奢って貰った私。

「晃樹は?」

「アイツ、禁止されてるゲーム持ってきて、今説教中!らしい。高橋が言ってた」

 見ると本当に先生に説教されてる!!

「良樹?告白されたことある?」

 いきなり聞いたら、

「あー、あるって言えばあるな。けど、俺はお前が好きだから、断ってる。じゃな」

「うん。ありがと」

 貰ったジュースを飲み干して、バスに向かった。

「あれ?優希ちゃんは?」

「あぁ、なんか先生と話してるの見たよ」

 しばらくすると、優希ちゃん戻ってきたけど、機嫌悪かった。

「···のばかっ!」

「······。」

❨なんだろ?お家でなんかあったのかな?❩

 バスは、1組の1号車を先頭に走り出していった。

「あのバスガイド、メイク濃いよね」

 優希ちゃんが、チラッと見ながら言った。

「確かに···」

 うちのママは、メイク薄いからかな?

「由依ちゃんは、メイクとかする?」

「したことない。怒られるし」

「今度教えてあげるよ。絶対、今より可愛くなるから」

 優希ちゃん、表情がコロコロ変わる。さっきも携帯見ながら、ぶつくさ言ってたし。

「優希ちゃんは、彼氏いるの?」

「彼氏···。んー、今はいないかな?どうして?由依ちゃん、いるの?」

 逆に突っ込まれた。

「いないよ、まだ」

「そっか。いたらいたで、楽しいけど、寂しいよ···」

 優希ちゃんが、なんとなく大人っぽく見えた。

 お昼は、バスの中で食べるから先生が、みんなにお弁当を配る後ろで、バスガイドさんがお茶とお菓子の入った袋を配って行く。

「小宮···」

「ありがとうございます」

「優希···」

「······。」

「優希ちゃん?お弁当···」

 優希ちゃんは、ジッと外を見ていた。

「優希、弁当。ほら···」

 先生が差し出しても、優希ちゃん外を見るだけで受け取らない。

「優希!いい加減にしろ!小宮、渡しとく」

「はぁ···」

❨優希ちゃん、さっきはご機嫌だったのに···❩

 先生は、後ろまで配り終えて、チラッとこっちを見たけど、優希ちゃんは先生を見ることはなかった。

「はい、優希ちゃん」

 お弁当を差し出しても、何か考えてて···

「あ、ありがと」

 お弁当を食べだした。

「なんかあったの?さっきから、窓ばっか見てる」

 そう言っても、別にと返された。

 お弁当食べて、お菓子食べて、中で歌ったり遊んだりして、ホテルサンルートに着いた···

 先生から客室割り振りを聞かされても、どことなく優希ちゃん···

❨くーらーいー!❩

「花ちゃん!」

「一緒一緒!!」

 花ちゃんの他に、1組の愛美ちゃん、5組の咲ちゃん、弥生ちゃん、愛川さんの6人だった。

「懐かしいね」

「なかなか、会えないよねぇ」

 それもその筈、この6人は小学3年までずっと同じクラスだったから。

「由依ーっ!」

 名前を呼ばれた方向を見ると、

「良樹くんだ!また伸びたねぇ」

「えっ?その横、晃樹?」

 ざわつく女子···

「なに?」

 駆け寄った二人に群がる女子···

「妬かない、妬かない」

 花ちゃんになだめられるわ、二人には笑われるわ。

「夕飯の後、自由行動少しあるけどどうする?」

「どうするって···。夜は怖いから、部屋にいるよ」

 なんとなく、良樹の後ろ···少し離れた所から睨んでる女子軍団···

「あれ?優希ちゃんは?」

 見れば少し離れたとこで、また先生と何かを見ながら話してた。

❨あ、笑ってる。良かった❩

「じゃ、みんなでゲームしない?」

「わ、私は、ちょっと···」

 って言う子が、4人!!

 結局、他のクラスのあぶれた女の子や男の子と合流して、シアタールームで映画を観る事に決まった。

「後でね!!」

 先生が、集合の合図をして、集まり始めた。

「由依ちゃん。自由行動どうする?」

「みんなで、シアタールームいく」

 そう言ったら、

「じゃぁさ、私···いた事にしてくれない?」

「えっ?」

「私、ちょっと会いたい人がいるからさ」

 アリバイ?とやらをお願いされた。

「じゃね!」

 優希ちゃんは、他の子と一緒に展望レストランへ行った。

「おい、行くぞ!」

 先生の声に我返り、後についていった。

 
かくして1時間後···

「お腹いっぱい!」

「だねぇ!!」

「じゃ、よろしく」

「時間までに帰るからね」

 とそれぞれが、別の方向へと消えていった。

「行っちゃった···」

「お前も頼まれた口か?」

「うん···」

 修学旅行前に出来たカップルやら、もともとのカップルやらで私以外にもアリバイを頼まれた人が何人もいた。

「晃樹は?」

「ほれ、あそこ」

 良樹が、指差す方向に晃樹は他の女の子と何かを話してた。

「誰?」

「たぶん、転校生だろ?来た話は聞いてるから」

❨私、聞いてないよ?❩

「行こっ!みんな待ってるし!!」

 良樹の腕を掴んで、シアタールームへと向かう。後ろから、晃樹が慌てて駆け寄ってきた。

「新しく来た子で、少し話してただけだから」

 と言ってたけど、あんな笑顔見たことなかった。

「由依、後でメールする」

 良樹が、小声で言って他の子と合流。男女八人だとちょっときつかったけど、良樹の隣だったから、良かった。

 それが終わって、お風呂の時間になっても、優希ちゃん帰って来なかった。お風呂は、クラス毎だから···

「······。」

「なーに黙ってんの?」

「だって···」

 お風呂は、みんな裸になるから、胸やお尻ってか大事なとこを隠さない。

「花ちゃん、ボインだった」

「由依だって、その内大きくなるって」

 パジャマに着替えながら、みんなと身体の話になった。

「どうしたら、おっきくなるの?」

 の問に、何故か何人かが困った笑い方をする。

「由依は、彼氏いる?」

「いない、けど···」

「てっとり早く言うと···」

「男に揉んで貰うのが、1番かな」

「······。」

❨女の子でも、下ネタはするのよ!!❩

「焦らない、焦らない!」

 と1番ボインな積木さんが言った。

「この中で、彼氏いないのって···もしかして?」

 揃って私を見た。

「ショックだ···」

 私達がお風呂から出ると、優希ちゃんが走ってきた。

「ま、間に合った?」

「うん···。お風呂急がないと」

「ありがと!」

 互い違いに出入りして、部屋に戻った。

❨なんだろ?あの匂い···❩

 点呼があるから、揃って廊下に出て並ぶ。他の客から見たら、驚くだろうけど···

「5041号、6人!よし!」

 の合図で、部屋に戻るとまた騒ぎ始める。

 も、やはり疲れが出てるせいか揃って寝る。

»寝た?

›うん。

»6128号室横の収納庫にきて。待ってるから

 良樹からのメールで、カードキー片手にコッソリと部屋を出て、急いで向かった。


「ここかな?」

 ドアは、少し開いてて中は真っ暗。

「良樹?」

 顔を入れたら、手を引っ張られて···

「おーそーい」

 抱き締められた。

「驚いた?」

「うん。でも、どうして?ここ···」

「鍵が挟まってた」

 良樹の匂い···

「大好き」

 ンッ···ンゥッ···

 キスをしながら、ベッドマットレスに押し倒され、パジャマを脱がされていく。

「由依···」

 首筋を吸われ、乳房を吸われて、段々と···

 はうっ!!

「気持ちいい···」

 良樹の息も舌も気持ちいい···

 ピチャピチャとした軽く湿った音と一緒に、ゴソゴソという音···

「ゴムつけたから···」

 グチュグチュとしたその場所に、良樹のが当てられ、

 ズンッ···

 あぁっ···

 私のが良樹のを飲み込んでいく。

「良樹···」

「由依···」

 良樹は、私の腰を支えるといつもより強く突いてきた。

 パンッパンッパンッ···

 あっ···んっ···んっ···んっ!

「気持ちいい···もっと」

 言葉が自然と洩れる。

 パンッパンッパンッ···

「愛してる···。誰にも渡さない」

 あっ···ふぁっ···

 良樹の腕を掴むと、良樹はその手を背中に回す。

「愛してる、愛してる···」

 んっ!んっ!

「良樹···」

 あっ、あっ、あっ、はうっ!!!

 場所も違うし、いつもより強い突き方に、私の方が先にイッた。

「俺も···」

 パンッ···パンッ···パンッ!!

 グリグリと打ち付けるように突いた良樹は、そのまま私に覆いかぶさり唇を塞ぐ。

「愛してる···」

 終わってから、ちゃんと着替えて、コッソリと慌ててお互い部屋に戻った。
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