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第1章 エリック・ブラッドストーンの目覚め
1-6 生存戦略、始めよう!
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その夜。
屋敷の自室に戻った俺は、ノートに今の状況を書き留めていた。
……どうやらルイエリ路線の開拓は、難儀なものになりそうだ。
まず、男ルイーズ……ルイスと仲良くなれるのかが分からない。彼は何というのか……ふわふわしているというか、掴み所がないというか、そういうイメージを受けたからだ。
(まあ、ルイーズもあんな感じの性格だったしな)
おっとり気弱かと思いきや、メンタルは強い。ゆったりした喋り方をする割に、臆さず相手に切り込んでいく高い行動力を持つ。
心優しくもしたたかな『主人公』。それがルイーズであり、ルイスというわけだ。
しかしながら……彼と仲良くなるために何よりも苦労しそうなのは、俺の喋り方だ。
どうしても悪役令嬢らしい、上品ながら刺々しい口調になってしまう。『俺』の意思だけではどうにもコントロールしきれないのだ。
アレか? シナリオの強制力ってやつなのか?
(俺は、どうしても悪役令嬢ポジションから逃れられないのか……)
ルイスにはそこまで響いていなさそうだったのが、不幸中の幸いだが……。この調子では周囲からの誤解が積み上がっていくばかりなんじゃないか?
……うーん、不安。
とはいえ、何も出来ないということはないはずだ。ひとまず余計な火種を生み出さないように、気を付けて行動するようにしよう。
あと、セオドアな。
他にも攻略対象者はいるが、エリカと関わりが深いのはセオドアだけ……だったはず。こいつを敵に回さないように、気を付けていかないといけない。
(俺が悪の道に進んだりしたら、切り捨てられるのは目に見えてるもんな……)
婚約者であること、長い付き合いであること……それらの要因によって何とか低空飛行している関係性だ。今はまだ周囲への毒舌という、比較的害のないもので済んでいるが……原作のように俺がルイスに嫌がらせを始めたりしたら、もう絶対に墜落する。そう断言できる。
セオドアとも仲良く……というのは、昼間の態度を見る限りちょっと難しそうなので。
まあ、捨てられない程度に関係を保ちたいところだな。関係改善が出来なくとも、せめて現状維持くらいは。
(あと、そうだな。まだ見ぬ攻略対象者たちもいるわけだが……)
……これに関しては、出会ってから考えればいいだろう。そもそも俺はセオドアルートしか詳しく知らないんだし。現時点では対策も立てようがない。
ということで、大体の優先事項は決まったな。
俺は手元のノートに視線を落とす。思考を整理するために思ったことを書き散らしていたせいで、紙の上はまるで暗号のようになっていた。
……うん。ちょっと改めて、これから気を付けるべきことをまとめてみるか。
俺はノートをめくって、新しいページに文字を記した。自分用ではあるけれど、できるだけ簡潔に、分かりやすく。
「……よし……!」
【その1 ルイス(ルイーズ)との親交を深め、信頼関係を築く
その2 セオドアとの関係もなるべく良好にする
その3 なるべく善良な振る舞いを心掛ける】
……とりあえずは、この三箇条でいいか。
俺は小さな達成感とともに、ノートを閉じて――ふと思い立ち、表紙に文字を書き加える。
――『生存戦略ノート』。
そうだ。エリック・ブラッドストーンは決して断罪されたりしない。もがいて、あがいて、生き残ってやるんだ。
(そして……ルイエリほのぼの日常ルートを実現させる……!)
……結局はそれなんだけどな。
いいだろ、原動力がそんな感じでも。こじれ百合厨の執念、見せつけてやろうじゃないか!
屋敷の自室に戻った俺は、ノートに今の状況を書き留めていた。
……どうやらルイエリ路線の開拓は、難儀なものになりそうだ。
まず、男ルイーズ……ルイスと仲良くなれるのかが分からない。彼は何というのか……ふわふわしているというか、掴み所がないというか、そういうイメージを受けたからだ。
(まあ、ルイーズもあんな感じの性格だったしな)
おっとり気弱かと思いきや、メンタルは強い。ゆったりした喋り方をする割に、臆さず相手に切り込んでいく高い行動力を持つ。
心優しくもしたたかな『主人公』。それがルイーズであり、ルイスというわけだ。
しかしながら……彼と仲良くなるために何よりも苦労しそうなのは、俺の喋り方だ。
どうしても悪役令嬢らしい、上品ながら刺々しい口調になってしまう。『俺』の意思だけではどうにもコントロールしきれないのだ。
アレか? シナリオの強制力ってやつなのか?
(俺は、どうしても悪役令嬢ポジションから逃れられないのか……)
ルイスにはそこまで響いていなさそうだったのが、不幸中の幸いだが……。この調子では周囲からの誤解が積み上がっていくばかりなんじゃないか?
……うーん、不安。
とはいえ、何も出来ないということはないはずだ。ひとまず余計な火種を生み出さないように、気を付けて行動するようにしよう。
あと、セオドアな。
他にも攻略対象者はいるが、エリカと関わりが深いのはセオドアだけ……だったはず。こいつを敵に回さないように、気を付けていかないといけない。
(俺が悪の道に進んだりしたら、切り捨てられるのは目に見えてるもんな……)
婚約者であること、長い付き合いであること……それらの要因によって何とか低空飛行している関係性だ。今はまだ周囲への毒舌という、比較的害のないもので済んでいるが……原作のように俺がルイスに嫌がらせを始めたりしたら、もう絶対に墜落する。そう断言できる。
セオドアとも仲良く……というのは、昼間の態度を見る限りちょっと難しそうなので。
まあ、捨てられない程度に関係を保ちたいところだな。関係改善が出来なくとも、せめて現状維持くらいは。
(あと、そうだな。まだ見ぬ攻略対象者たちもいるわけだが……)
……これに関しては、出会ってから考えればいいだろう。そもそも俺はセオドアルートしか詳しく知らないんだし。現時点では対策も立てようがない。
ということで、大体の優先事項は決まったな。
俺は手元のノートに視線を落とす。思考を整理するために思ったことを書き散らしていたせいで、紙の上はまるで暗号のようになっていた。
……うん。ちょっと改めて、これから気を付けるべきことをまとめてみるか。
俺はノートをめくって、新しいページに文字を記した。自分用ではあるけれど、できるだけ簡潔に、分かりやすく。
「……よし……!」
【その1 ルイス(ルイーズ)との親交を深め、信頼関係を築く
その2 セオドアとの関係もなるべく良好にする
その3 なるべく善良な振る舞いを心掛ける】
……とりあえずは、この三箇条でいいか。
俺は小さな達成感とともに、ノートを閉じて――ふと思い立ち、表紙に文字を書き加える。
――『生存戦略ノート』。
そうだ。エリック・ブラッドストーンは決して断罪されたりしない。もがいて、あがいて、生き残ってやるんだ。
(そして……ルイエリほのぼの日常ルートを実現させる……!)
……結局はそれなんだけどな。
いいだろ、原動力がそんな感じでも。こじれ百合厨の執念、見せつけてやろうじゃないか!
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