17 / 75
2. ご主人様はクールで過保護
2-5 はじめての接客
しおりを挟む
「……そういえばメグム、ローレルの使い魔とは顔を合わせたんだったか」
空っぽになったお皿を重ねて片付けていると、アッシュ様にそんなことを投げかけられた。
「うん、ファーくんのことだよね? それがどうかしたの?」
「明日、ローレルが尋ねてくる予定なんだが。簡単な接客でもしてもらおうかと」
「お!」
接客! 元の世界でもやってたお仕事だから、得意分野ですよっ。
多種多様な個性を持つ『ご主人様』たちを相手にしていたこともあるんだから、アッシュ様のご友人ときたら朝飯前ですよ。……ってのは、調子に乗りすぎかな?
でも、アッシュ様から直々に授かった初めてのお仕事だもんね。張り切っちゃうのも無理はないっていうか。
「あいつは寛容な男だ。お前のことを見ても変な顔はしないだろうからな」
「あは……そこまで配慮してもらわなくても、おれは平気だけどね?」
でも正直、その気遣いはありがたい。
この世界ではおれらしく生きる、って決意したけど……どうしても迷ったり、揺らいだりすることはあるから。
……ご主人様、なんだかんだ優しいんだなぁ。
ということで、日は移りまして。玄関でローレル様とファーくんをお出迎えです。
「おや、君は……」
木の杖と大きな鞄を持ったローレル様が、おれの顔を見てそう呟く。それとほぼ同じタイミングで、ファーくんがおれの方を見てぱっと笑った。
「メグムくん!」
「はい。アッシュ様の使い魔の、メグムです」
「そうか、君が。ふふ、随分と可愛らしい格好をしているんだね」
ローレル様が、おれの方を見下ろして優しく笑いかける。
おお……銀髪イケメンお兄さんの爽やか笑顔。これはキュンとしちゃうぜ。
「僕はローレル。一応、アッシュくんの友人をやらせてもらってるよ」
「ええ、お話は聞いてます」
近くで話をするのは初めてだけど……丁寧で優しそうな人だなぁ、ローレル様。これで魔術師としても優秀だって話だよね? きっと女の子たちからモテモテなんだろうな。
なんて言ってないで、お仕事お仕事……っと。
「アッシュ様のお部屋にご案内しますね。こちらへどうぞー」
二人に声をかけて、玄関から上がってもらう。
「ファー、荷物を」
「はいっ!」
ローレル様に言われて、鞄と杖を預かるファーくん。自分のポシェットと、ローレル様の荷物と……彼の体格じゃ、なかなか重そうだけど。おれも何か持ってあげた方がいいんだろうか。
そう思ってファーくんの方をちらりと見ると、
「あ、大丈夫ですよメグムくん! いつもこのくらい持ってますから!」
「そうー……?」
まあ、本人が大丈夫って言うならいいか。おれもおれで、二人のことを案内するって仕事があるしね。
廊下をてくてくと歩きながら、おれは二人に質問してみる。
「お二人は、出会ってから長いんですか?」
「そうだね、数年くらいかな。魔術師の中じゃ、まだまだ新米の主従だよ」
「え、数年で新米……?」
「そう。使い魔は、そう簡単に生成できるものじゃないからね。初めての使い魔とは、自然と長い付き合いになるものなんだ」
そういうものなんだ……。
ローレル様とファーくんが新米って言うなら、アッシュ様とおれなんてひよっこもひよっこじゃない?
実際、アッシュ様とおれの関係は、まだまだ手探りの状態なわけですが。
「えへへ。ローレル様は、ボクにすっごく優しくしてくださって! 最高のご主人様なんですよ!」
「ふふ……まったく。照れちゃうじゃないか」
キラキラの目でローレル様のことを見上げるファーくんと、はにかむローレル様。仲良しなんだなぁ。
アッシュ様とおれも、いつかはこんな風になれるのかな?
なれたらいいな、なんて思う。
空っぽになったお皿を重ねて片付けていると、アッシュ様にそんなことを投げかけられた。
「うん、ファーくんのことだよね? それがどうかしたの?」
「明日、ローレルが尋ねてくる予定なんだが。簡単な接客でもしてもらおうかと」
「お!」
接客! 元の世界でもやってたお仕事だから、得意分野ですよっ。
多種多様な個性を持つ『ご主人様』たちを相手にしていたこともあるんだから、アッシュ様のご友人ときたら朝飯前ですよ。……ってのは、調子に乗りすぎかな?
でも、アッシュ様から直々に授かった初めてのお仕事だもんね。張り切っちゃうのも無理はないっていうか。
「あいつは寛容な男だ。お前のことを見ても変な顔はしないだろうからな」
「あは……そこまで配慮してもらわなくても、おれは平気だけどね?」
でも正直、その気遣いはありがたい。
この世界ではおれらしく生きる、って決意したけど……どうしても迷ったり、揺らいだりすることはあるから。
……ご主人様、なんだかんだ優しいんだなぁ。
ということで、日は移りまして。玄関でローレル様とファーくんをお出迎えです。
「おや、君は……」
木の杖と大きな鞄を持ったローレル様が、おれの顔を見てそう呟く。それとほぼ同じタイミングで、ファーくんがおれの方を見てぱっと笑った。
「メグムくん!」
「はい。アッシュ様の使い魔の、メグムです」
「そうか、君が。ふふ、随分と可愛らしい格好をしているんだね」
ローレル様が、おれの方を見下ろして優しく笑いかける。
おお……銀髪イケメンお兄さんの爽やか笑顔。これはキュンとしちゃうぜ。
「僕はローレル。一応、アッシュくんの友人をやらせてもらってるよ」
「ええ、お話は聞いてます」
近くで話をするのは初めてだけど……丁寧で優しそうな人だなぁ、ローレル様。これで魔術師としても優秀だって話だよね? きっと女の子たちからモテモテなんだろうな。
なんて言ってないで、お仕事お仕事……っと。
「アッシュ様のお部屋にご案内しますね。こちらへどうぞー」
二人に声をかけて、玄関から上がってもらう。
「ファー、荷物を」
「はいっ!」
ローレル様に言われて、鞄と杖を預かるファーくん。自分のポシェットと、ローレル様の荷物と……彼の体格じゃ、なかなか重そうだけど。おれも何か持ってあげた方がいいんだろうか。
そう思ってファーくんの方をちらりと見ると、
「あ、大丈夫ですよメグムくん! いつもこのくらい持ってますから!」
「そうー……?」
まあ、本人が大丈夫って言うならいいか。おれもおれで、二人のことを案内するって仕事があるしね。
廊下をてくてくと歩きながら、おれは二人に質問してみる。
「お二人は、出会ってから長いんですか?」
「そうだね、数年くらいかな。魔術師の中じゃ、まだまだ新米の主従だよ」
「え、数年で新米……?」
「そう。使い魔は、そう簡単に生成できるものじゃないからね。初めての使い魔とは、自然と長い付き合いになるものなんだ」
そういうものなんだ……。
ローレル様とファーくんが新米って言うなら、アッシュ様とおれなんてひよっこもひよっこじゃない?
実際、アッシュ様とおれの関係は、まだまだ手探りの状態なわけですが。
「えへへ。ローレル様は、ボクにすっごく優しくしてくださって! 最高のご主人様なんですよ!」
「ふふ……まったく。照れちゃうじゃないか」
キラキラの目でローレル様のことを見上げるファーくんと、はにかむローレル様。仲良しなんだなぁ。
アッシュ様とおれも、いつかはこんな風になれるのかな?
なれたらいいな、なんて思う。
0
あなたにおすすめの小説
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる
ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。
この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。
ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
【連載版あり】「頭をなでてほしい」と、部下に要求された騎士団長の苦悩
ゆらり
BL
「頭をなでてほしい」と、人外レベルに強い無表情な新人騎士に要求されて、断り切れずに頭を撫で回したあげくに、深淵にはまり込んでしまう騎士団長のお話。リハビリ自家発電小説。一話完結です。
※加筆修正が加えられています。投稿初日とは誤差があります。ご了承ください。
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる