天才魔術師様はかぁいい使い魔(♂)に萌え萌えですっ

阿月杏

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4. ただでさえ顔がいいのにおめかししたらそりゃもう

4-7 ご主人様を探して

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「ええっと……」

 廊下を進んで、やって来たのは広いホール。
 煌めくシャンデリア、上品な白い壁。……うーん、さすが王都の建物。お城の一角みたいだ。
 ホールにはまだそれなりに人が残っていて、各々挨拶をしていたり、お喋りに花を咲かせていたり。

(ご主人様、いるかな……)

 アッシュ様と同じ『正装』――白いローブを纏っている人ばっかりで、見分けがつきにくい。うう、白ばっかりの空間で目がチカチカしてきた……。
 このまま眺めていても埒が明かないので、おれはホール内に向けて呼びかける。

「アッシュ様ー……!」

 耳をぴんと立てて返事を待ってみるけれど、アッシュ様の声は聞こえない。
 仕方がないのでおれは、ホールの端の辺りをぐるりと回ってみることにした。正装の魔術師たちの中、猫耳尻尾の使い魔は何となく肩身が狭い。おまけにメイド服ですしね。場違いどころの話じゃありませんよ。
 でも、やっぱりアッシュ様の姿は見当たらない。
 歩きながら視線を左右にうろうろさせていると……人とぶつかりそうになってしまった。

「わわ、すみません……」

 直前に気付いたから、問題はなかったけど。
 おれの目の前にいたのは、数人の魔術師だった。40~50代くらいの、恰幅のいいおじさんたちだ。

「何だ、使い魔じゃないか。こんなところでどうしたんだ?」
「ええっと、人を探してまして……」

 おれがそう、声を発すると……途端に魔術師さんたちは顔を見合わせ、どっと笑った。

「おいおい、男なのかお前さん! 変わった格好してるんだなぁ!」
「見た目と声が合わないなぁ、ええ? あれか、使い魔も多様性の時代ってやつか」
「……」

 ああ、やっぱりこういう反応をされるんだな。
 でも、今日のおれはくじけない。おれが一際変わった格好をしてるのは事実だけど、使い魔はみんな違ってみんないい子なんだから。何を言われたって気にしない。

「……あの! アッシュ様がどこにいるか、ご存知ないですか?」

 おれがそう声を上げると、魔術師さんたちの笑い声は波が引くように収まって。

「アッシュ……ってあれか。あの生意気な金髪の小僧か」
「お前さん、あいつの使い魔なのかい」
「は、はい……」
「ほー。変わったやつのところには変わった使い魔が引き寄せられるのかねぇ」

 うーん、だいぶ好き勝手言われている。おれはともかく、アッシュ様にまで『変わったやつ』って言うのは止めてほしいんだけどな……。
 今は、そんなことを言っている場合じゃない。アッシュ様について情報を聞き出さないと。

「会合には出てたらしいって聞いてるんですけど。その後、姿を見ていませんか?」
「どうだったかねぇ……」

 腕組みをして考え込む魔術師さんたち。

「うーむ……もうホールには残っていないと思うがな」
「そもそもあいつ、人の多いところに留まったりしないだろ。人付き合いも悪いし」
「なぁ」

 やっぱり好き勝手言われている。事実と言えなくもないのが、余計タチが悪いんですよねぇ……。
 ともかく、手がかりはなさそうだ。アッシュ様は、会場を出て……それからどこに行ったんだろう?
 おれは、魔術師さんたちに向けてぺこりと頭を下げた。

「……ありがとうございました。会場の外、探してみます」
「あっ……おい! 無闇に歩き回らない方がいいと思うぞ!」

 ……そう言われたって。心配なものは、心配じゃんか。
 おれは廊下に駆け出した。廊下にもぽつぽつと、お喋りしている人たちがいる。

(『人の多いところは苦手』って、アッシュ様、言ってたよね)

 だったら、人の少ないところにいるかもしれない。ホールから離れた場所、静かな場所。
 歩き回って乱れた髪が、頬に張り付く。

「ああ、もうっ……!」

 もどかしいや。
 おれは雑にさっと髪をまとめて、手首のシュシュで一つに束ね――再び、歩みを進め始めた。
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