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6. ありのままのおれとデートを
6-4 決戦は休日に
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そして、決戦の日はやってきた。
「……」
鏡の中に映っているのは、あの日のシャツとスラックスを纏ったおれ。
ちょっと童顔で中性的な顔、だけど――それでも、シンプルな格好をすると、やっぱり男だって分かる。
「変じゃないかな……」
何だかやけに不安になってしまう。
むしろ元の世界では、こういう服装がデフォルトで……その上で、メイドカフェでは違う自分に『変身』していたわけだけど。今はがらっと雰囲気が変わってるけど、いつもの格好とも地続きな感じがするから……こんなにそわそわするのかな?
いつものメイド服も、この姿も、どっちも『おれ』だ。……それだけ分かっていれば、きっと大丈夫。
(……あ、でも)
アッシュ様に買ってもらったシュシュ……これだけは付けていこう。
髪を一つにくくって、シュシュでまとめる。これでワンポイントになるし、動きやすくもなるし、いい感じじゃない?
おれは改めて鏡を見つめて。
「……よし……!」
自分に言い聞かせるように、小さく呟いた。
「お待たせ、ご主人様ぁ」
広間に出ると、アッシュ様はもう準備を済ませて待っていた。
おれの方をちらりと見やって、
「……メグム?」
珍しく驚いた表情を見せるアッシュ様。
そりゃ、驚かれるよねぇ。お仕事について行くにも、会合のお供をするにも、いつもメイド服だったおれが……召喚以来初めて、シンプルな男っぽい出で立ちになっているわけだから。まあ、このくらいの反応は、想定内ですけど。
「いつもの格好じゃないのか」
「うん……今日は何となく、こういう気分で?」
……嘘です。
何となく、なんかじゃない。強い決意を持ってここに来たんだ。
だけどそれを顔には出さずに、おれはにこりと微笑んでみせる。
「かっこいい系のおれも、たまにはいいかなって」
「……そうか」
アッシュ様は、そう言ったきり……それ以上のことは聞いてこないようだった。こういう時に不用意に踏み込まないでいてくれるの、安心するなぁ。
するとアッシュ様は、少しだけ考える素振りを見せたかと思うと。
「俺からも、一つ要望を出しても良いだろうか」
「な、何でしょう」
要望……なんて言われるの、初めてだな。
つい畏まってしまったおれに、アッシュ様が告げたのは。
「『デート』の間は、『ご主人様』は禁止だ」
「えっ」
急だなぁ!?
まあ確かに、今日は主従じゃなくて恋人(仮)ですからね。妥当といえば妥当なのか。
「……じゃあ、何て呼べばいいの?『アッシュ様』?」
「ああ、それでいい」
希望が叶ったと言わんばかりに、一つ頷くご主人様――じゃない、アッシュ様。
(ふーん……?)
名前で呼んでほしかったってこと? かわいいところあるじゃん、アッシュ様ってば。
せっかくなので、とびきり甘い声でサービスしてあげましょうか。
「アッシュ様♡ おれのこと、いっぱい楽しませてくださいね♡」
「……そういうわざとらしいのはいい」
ありゃ、不発。男心ってのは難しいぜ。
まあ、でも。
「……いっぱい楽しみたいってのは、本当だよ?」
そう言って、おれはアッシュ様の顔を見上げてみる。
いつもの美麗な顔立ち、いつものシャツにベスト、いつものそっけない態度。見かけはいつも通りのアッシュ様、だけど。
「そうか。……俺も同じだ」
内心は……うきうきしてるのかな? そうだといいな。
そうして――おれたちのとびきりの休日は、幕を開けたのだった。
「……」
鏡の中に映っているのは、あの日のシャツとスラックスを纏ったおれ。
ちょっと童顔で中性的な顔、だけど――それでも、シンプルな格好をすると、やっぱり男だって分かる。
「変じゃないかな……」
何だかやけに不安になってしまう。
むしろ元の世界では、こういう服装がデフォルトで……その上で、メイドカフェでは違う自分に『変身』していたわけだけど。今はがらっと雰囲気が変わってるけど、いつもの格好とも地続きな感じがするから……こんなにそわそわするのかな?
いつものメイド服も、この姿も、どっちも『おれ』だ。……それだけ分かっていれば、きっと大丈夫。
(……あ、でも)
アッシュ様に買ってもらったシュシュ……これだけは付けていこう。
髪を一つにくくって、シュシュでまとめる。これでワンポイントになるし、動きやすくもなるし、いい感じじゃない?
おれは改めて鏡を見つめて。
「……よし……!」
自分に言い聞かせるように、小さく呟いた。
「お待たせ、ご主人様ぁ」
広間に出ると、アッシュ様はもう準備を済ませて待っていた。
おれの方をちらりと見やって、
「……メグム?」
珍しく驚いた表情を見せるアッシュ様。
そりゃ、驚かれるよねぇ。お仕事について行くにも、会合のお供をするにも、いつもメイド服だったおれが……召喚以来初めて、シンプルな男っぽい出で立ちになっているわけだから。まあ、このくらいの反応は、想定内ですけど。
「いつもの格好じゃないのか」
「うん……今日は何となく、こういう気分で?」
……嘘です。
何となく、なんかじゃない。強い決意を持ってここに来たんだ。
だけどそれを顔には出さずに、おれはにこりと微笑んでみせる。
「かっこいい系のおれも、たまにはいいかなって」
「……そうか」
アッシュ様は、そう言ったきり……それ以上のことは聞いてこないようだった。こういう時に不用意に踏み込まないでいてくれるの、安心するなぁ。
するとアッシュ様は、少しだけ考える素振りを見せたかと思うと。
「俺からも、一つ要望を出しても良いだろうか」
「な、何でしょう」
要望……なんて言われるの、初めてだな。
つい畏まってしまったおれに、アッシュ様が告げたのは。
「『デート』の間は、『ご主人様』は禁止だ」
「えっ」
急だなぁ!?
まあ確かに、今日は主従じゃなくて恋人(仮)ですからね。妥当といえば妥当なのか。
「……じゃあ、何て呼べばいいの?『アッシュ様』?」
「ああ、それでいい」
希望が叶ったと言わんばかりに、一つ頷くご主人様――じゃない、アッシュ様。
(ふーん……?)
名前で呼んでほしかったってこと? かわいいところあるじゃん、アッシュ様ってば。
せっかくなので、とびきり甘い声でサービスしてあげましょうか。
「アッシュ様♡ おれのこと、いっぱい楽しませてくださいね♡」
「……そういうわざとらしいのはいい」
ありゃ、不発。男心ってのは難しいぜ。
まあ、でも。
「……いっぱい楽しみたいってのは、本当だよ?」
そう言って、おれはアッシュ様の顔を見上げてみる。
いつもの美麗な顔立ち、いつものシャツにベスト、いつものそっけない態度。見かけはいつも通りのアッシュ様、だけど。
「そうか。……俺も同じだ」
内心は……うきうきしてるのかな? そうだといいな。
そうして――おれたちのとびきりの休日は、幕を開けたのだった。
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