天才魔術師様はかぁいい使い魔(♂)に萌え萌えですっ

阿月杏

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6. ありのままのおれとデートを

6-6 うきうきメイドカフェ!

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「んふふー……」

 紙袋を手に、るんるんと通りを歩く。
 ブティックでの戦利品をたっぷり詰め込んだ袋。テンションが高いおかげか、重さも全然気にならない。

「いろいろ買っちゃったねぇ! おれのも、アッシュ様のも……着るのが楽しみだよぉ」
「ああ。お前のお墨付きだ、きっと俺にも似合うんだろうな」

 すっごい信頼されてるぅ……。
 何だかプレッシャーだけど、でも、選んだ服がアッシュ様に似合うのは間違いないはず!と己を励ます。何より、アッシュ様がそう言ってくれることが嬉しいよね。おれに心を許してくれてる証っていうか。
 さて、とアッシュ様が切り出す。

「どこかで軽食を取れるといいんだが……何か食べたいものはないか」
「うーん、そうだなぁ……」

 お昼時の街は、今日も賑わっている。
 そうだなぁ。気になるものならいくらでもあるけど、一つに決めなきゃってなると途端に難しい。おれはきょろきょろと辺りを見回して……ふと、一つの看板に目を留めた。
 かわいらしいフォントで書かれた文字――『メイドカフェ メイプル』。

(め、メイドカフェ……!?)

 この世界にも、そういうのあるんだ!? おいおい、盛り上がってきたじゃありませんか。
 おれは思わず、ぐいっとアッシュ様の手を引く。

「ねーねーアッシュ様、あのカフェ入りたい!」
「あのカフェ、って……」

 アッシュ様は、おれが指さす看板に目をやって。

「……メイドなら屋敷にもいるだろう」
「それはそれ、これはこれ! 外で楽しむからいいんじゃん!」

 少々渋い顔をするアッシュ様に、おれは全力で訴える。気になったら止まらない性分でしてね。
 それに……おれの好きなもののこと、アッシュ様にも知ってほしいし!

「……だめ?」

 小首を傾げてお願いすると……アッシュ様の喉から、ぐ、と小さな唸りが聞こえた。
 お、これは手応えアリか?

「分かった、行くか……」
「わぁい!」

 アッシュ様が根負けするとは……。たまには押してみるものだなぁ。
 何だかんだ今日は、見たことのないアッシュ様の姿をいくつも見られているような気がする。


 『メイプル』は『メイドカフェ』と銘打ってはいるけれど、内装は普通のカフェという感じだった。とはいえ清潔感のある落ち着いた店内は、どことなく上品な雰囲気を醸し出している。

「お帰りなさいませ、ご主人様。ごゆっくりお過ごしくださいね」

 スカートをつまんで、優雅なカーテシーをするメイドさん。

(いいねいいねぇ、王道のクラシックメイドだ……!)

 それでいて、お屋敷のメイドさんと比べるとフリルが大きめだったり、リボンがあしらわれていたり……かわいさを引き立てるデザインになっている。実用性と華やかさの両立って感じ。
 せっかくメイドカフェに入れるなら、おれもメイド服着てくればよかったなぁ。や、でもお店の人を混乱させちゃうか。
 おれがうきうきしながら、戻っていくメイドさんの姿を眺めていると。

「……」

 ……またしても視線を感じる。
 メイドさんを見ているおれのことを見ているアッシュ様。もしや、またおれに見蕩れてるって言い出すのか? いやでも……その割には、表情が固いような気も。
 すると、アッシュ様が口を開く。

「お前は、そういうのが好きなのか」
「? えっと、メイド服の話?」

 『そういうの』って、どういうのだ。
 アッシュ様の意図が分からないけど……でも流れ的に、メイドさんとかメイド服とかの話だよね?

「メイド服ってねぇ……奥が深いんだよ。伝統的な衣装でありながら、自由度も高くて。おれが働いてた街のメイドカフェにも、甘ロリ風とか、近未来風とか、和風とか、お店によっていろいろコンセプトがあったんだけど……でも全部『メイド』の概念に集約されてるんだよね! それってすごいことじゃない?」
「そ、そうか……」

 ありゃ? アッシュ様、ちょっと引いてない?
 好きな分野だからって、熱弁しすぎちゃったかな……反省反省。
 すると、アッシュ様は少し間を置いてから口を開く。

「……そういうことではなく。お前の恋愛対象についての話だ」
「あー……」

 なるほど、切り込んできましたねぇ。
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