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6. ありのままのおれとデートを
6-10 おれたちの答え
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その言葉を聞いて……おれは反射的に、アッシュ様に詰め寄っていた。
「……言って」
「は?」
「言って! ちゃんと言って! アッシュ様の『答え』!」
「いや、言っただろう」
「言ってないよ!? 『口に出さなくとも分かるだろう』みたいなのじゃなくて! ちゃんと宣言してよ!」
めんどくさいことを言っているのは自覚している。
でも、こうやって子どもみたいに駄々をこねてしまうのは……おれがまだ、不安だから。
「……ああ」
それを、アッシュ様も分かってくれたみたいだ。
一つ、ゆっくりと息を吐いて。
「俺は……お前のことが好きだ。どんな格好をしていようと、男だろうと関係なく。『メグム』を愛している」
アッシュ様は――そう宣言した。
「これでいいか」
「……っ……」
声が、喉に引っかかる。でもこれは、苦しみでも悲しみでもない。
それは、もしかしたら。
おれがずっと、元の世界にいた頃からずっと……求めていた言葉だったのかもしれない。
「……ありがとう、アッシュ様」
おれは、ふにゃりと微笑んだ。笑っているはずなのに、何故だか涙が溢れてしまいそう。
ありのままのおれを、まるごと受け入れてもらえることが――こんなに嬉しいことなんて。
(アッシュ様は……いつだって、おれに欲しいものをくれるんだな)
だったら。
おれがするべきことは、もう決まっている。
「あのね。おれの気持ち……まだ、はっきり固まったわけじゃない。たぶん、アッシュ様と同じ気持ちとは限らないんだと思う。でも」
おれは、アッシュ様の目を見つめる。
ルビーの双眸は、夕日を受けて、炎が灯ったような光を纏っていた。
「『愛してる』って言われて、すごく嬉しかった。……きっとこれが、おれの『答え』なんだね」
アッシュ様の愛は――おれが元々思っていたよりも、ずっと深いもので。それをおれが受け止められるのかって、不安な気持ちは確かにあった。
でも……だけど。これだけたくさんの『嬉しい』をもらったんだから。
応えなくちゃ。――ううん。応えたいんだ。
おれは、一歩アッシュ様に近付いて……そっと囁く。
「好きだよ。アッシュ様」
「……!」
その瞳孔がぱっと開くのを、おれは至近距離で目撃して。……そのまま、すとんと元の距離感に戻る。
決して近くはない距離。キスをするにも、手を繋ぐにも、ちょっぴり遠い距離……だけど。
「っあー……なんか、すっごいドキドキしてる……」
アップテンポな鼓動は、歩き回って疲れたせいじゃないし。
頬が熱いのは、夕日のせいじゃない。
ほんと、なんでアッシュ様はごく平静な顔で『好き』とか『愛してる』とか言えちゃうんだろう。おれは、たった一言口にするだけで、こんなにも心をかき乱されているっていうのに。……敵わないなぁ。
「……メグム」
「っ、はい!」
そうこうしている間に、名前を呼ばれて……おれは我に返った。
アッシュ様がおれをまっすぐに見つめながら、ゆっくりと歩み寄る。端整な顔が、近付いてくる。
「……あ、」
ごく、と喉が鳴る。
そうだ。そうだよ。今のアッシュ様とおれは、想いが通じ合った二人なわけで。そして今いる場所は、外とはいえど、人通りのほとんどない道端なわけで。
つまり、つまり……これはもしかして……。
おれが緊張の中、アッシュ様の次の行動を待っていると。
――ぽむん、と頭に手が乗せられた。
「……」
おれは一瞬、呆気に取られて……ふっと吹き出す。
「んふふっ……アッシュ様」
「何だ」
大きな手が、おれの頭を撫でている。
予想外の驚きと、不思議な安心感とで、ぴくぴくと猫耳が動いた。
やっぱり、アッシュ様はアッシュ様だ。関係が変わったとしても、やることは変わらないんだなぁ。
「なんでもなーいっ」
そう言って、おれは目を細める。
アッシュ様の優しい眼差しと、少しくすぐったい感触に浸りながら……おれは、じんわりと胸に広がる温かさを感じていた。
今日からおれたちは、ただの主従ではなく――ちょっとだけ特別な関係になったのだ。
「……言って」
「は?」
「言って! ちゃんと言って! アッシュ様の『答え』!」
「いや、言っただろう」
「言ってないよ!? 『口に出さなくとも分かるだろう』みたいなのじゃなくて! ちゃんと宣言してよ!」
めんどくさいことを言っているのは自覚している。
でも、こうやって子どもみたいに駄々をこねてしまうのは……おれがまだ、不安だから。
「……ああ」
それを、アッシュ様も分かってくれたみたいだ。
一つ、ゆっくりと息を吐いて。
「俺は……お前のことが好きだ。どんな格好をしていようと、男だろうと関係なく。『メグム』を愛している」
アッシュ様は――そう宣言した。
「これでいいか」
「……っ……」
声が、喉に引っかかる。でもこれは、苦しみでも悲しみでもない。
それは、もしかしたら。
おれがずっと、元の世界にいた頃からずっと……求めていた言葉だったのかもしれない。
「……ありがとう、アッシュ様」
おれは、ふにゃりと微笑んだ。笑っているはずなのに、何故だか涙が溢れてしまいそう。
ありのままのおれを、まるごと受け入れてもらえることが――こんなに嬉しいことなんて。
(アッシュ様は……いつだって、おれに欲しいものをくれるんだな)
だったら。
おれがするべきことは、もう決まっている。
「あのね。おれの気持ち……まだ、はっきり固まったわけじゃない。たぶん、アッシュ様と同じ気持ちとは限らないんだと思う。でも」
おれは、アッシュ様の目を見つめる。
ルビーの双眸は、夕日を受けて、炎が灯ったような光を纏っていた。
「『愛してる』って言われて、すごく嬉しかった。……きっとこれが、おれの『答え』なんだね」
アッシュ様の愛は――おれが元々思っていたよりも、ずっと深いもので。それをおれが受け止められるのかって、不安な気持ちは確かにあった。
でも……だけど。これだけたくさんの『嬉しい』をもらったんだから。
応えなくちゃ。――ううん。応えたいんだ。
おれは、一歩アッシュ様に近付いて……そっと囁く。
「好きだよ。アッシュ様」
「……!」
その瞳孔がぱっと開くのを、おれは至近距離で目撃して。……そのまま、すとんと元の距離感に戻る。
決して近くはない距離。キスをするにも、手を繋ぐにも、ちょっぴり遠い距離……だけど。
「っあー……なんか、すっごいドキドキしてる……」
アップテンポな鼓動は、歩き回って疲れたせいじゃないし。
頬が熱いのは、夕日のせいじゃない。
ほんと、なんでアッシュ様はごく平静な顔で『好き』とか『愛してる』とか言えちゃうんだろう。おれは、たった一言口にするだけで、こんなにも心をかき乱されているっていうのに。……敵わないなぁ。
「……メグム」
「っ、はい!」
そうこうしている間に、名前を呼ばれて……おれは我に返った。
アッシュ様がおれをまっすぐに見つめながら、ゆっくりと歩み寄る。端整な顔が、近付いてくる。
「……あ、」
ごく、と喉が鳴る。
そうだ。そうだよ。今のアッシュ様とおれは、想いが通じ合った二人なわけで。そして今いる場所は、外とはいえど、人通りのほとんどない道端なわけで。
つまり、つまり……これはもしかして……。
おれが緊張の中、アッシュ様の次の行動を待っていると。
――ぽむん、と頭に手が乗せられた。
「……」
おれは一瞬、呆気に取られて……ふっと吹き出す。
「んふふっ……アッシュ様」
「何だ」
大きな手が、おれの頭を撫でている。
予想外の驚きと、不思議な安心感とで、ぴくぴくと猫耳が動いた。
やっぱり、アッシュ様はアッシュ様だ。関係が変わったとしても、やることは変わらないんだなぁ。
「なんでもなーいっ」
そう言って、おれは目を細める。
アッシュ様の優しい眼差しと、少しくすぐったい感触に浸りながら……おれは、じんわりと胸に広がる温かさを感じていた。
今日からおれたちは、ただの主従ではなく――ちょっとだけ特別な関係になったのだ。
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