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第5章・それから
5-4 はじめて※
「失礼します、グレン様」
コンコン、とドアが叩かれる音に、俺は思わず居住まいを正した。
――約束の週末、の夜だ。
部屋に入ってきたマシュが、どう見ても冷静ではない面持ちの俺を見て、くすりと笑う。
「ふふっ。もう緊張してるんですか?」
「するだろ、そりゃ……」
前世でも全くの未経験なんだから。しかも俺が抱かれる側(暫定)なんて、想像したこともなかったのに。
これから俺を抱く相手に、どう接すればいいんだよ。なんか……こう……甘い雰囲気とか作らないといけないのか? どうやって?
余計なことばかり考えてしまう俺の隣に、マシュがそっと腰を下ろす。
「まあでも、僕もあなたが初めてなので。おあいこですよ」
「……落ち着き払ってるくせに」
「それは、まあ……何度も妄想してきたことですからねぇ」
そう言いながら、マシュの手が俺の髪を撫でる。ドールの髪を梳くように、それはそれは優しい手つきで。
「あなたを僕のものにしたくて、たまりませんでした」
「っ……」
「ねぇ、グレン様。今日は、僕だけのものになってくれますか?」
その瞳が、俺を正面から捉える。
どろりとした熱を孕んだ視線が、俺に注がれている。
「僕だけを見て、僕だけを感じてくれますか?」
……訂正。落ち着き払ってるなんて嘘だ。
マシュだってドキドキしてる。『初めて』を前に、胸を高鳴らせている。
なんだ、俺と同じじゃないか。
「……ん」
俺は、小さく頷いた。
どう進めれば良いものかと心配していたが、そこはマシュがさりげなくリードしてくれた。
とりとめのない会話に始まって、やがて手を重ねて、キスを交わして――それから、服を脱いでベッドに上がった。暗くなった部屋の中で、二つの裸体がそっと重なり合う。
「んむ……」
舌を入れられるキスは、まだ慣れない。ひたすらマシュにされるがままだ。
でも口の中をゆるゆると擦られるのは、わりと気持ち良くて好きだったりする。
「……身体、触ってもいいですか? グレン様」
「ん……いいよ」
頬に触れるマシュの手の温もりに目を細めながら、俺は許可を出す。
それから……身体を順に降りていくように、愛撫が始まった。
「はぁ……グレン様……」
つうっと肌を撫でる指先。至る所に落とされる唇。
くすぐったくて、でもどこか心地良くて、ぴくんと身体が震える。
首筋から、胸に、腹部に……一つ一つを確かめるように、肌と肌を合わせていく。
「全部可愛いし、全部綺麗ですね」
「う……止めろって、そんなところ……」
終いには太腿の裏側に恭しくキスをされて、何とも恥ずかしい気分になった。俺からも見えないような場所なのに。
風呂場で念入りに洗ってきたとはいえ、ここまで丁寧に体中を検分されるとは思ってもみなかった。どういう顔をすればいいのかさっぱり分からない。
「あぁ、でも……次は、僕にも手伝わせてくれませんか? 隅々まで磨いて差し上げますから」
「それはちょっと……」
「え~?」
え~じゃない。なんでその一押しで行けそうだと思うんだ。俺はそんなんじゃ折れてやらないからな。
なんて考えていると……その指先が遂に、足の間の秘所へと滑らされた。
「ここも、ちゃんと準備してきてくださったんですね」
「あ、っ」
「僕のために、こんな場所を」
完全に油断していたタイミングだったので、思わず声が漏れてしまった。
縁をくるくると撫でてから……つぷ、とその指が中に侵入してくる。
「んんっ……」
準備のために自分で触った場所のはずだが……他人に触られると、感覚が全然違う。いや気持ち良いとかでもないんだけど。俺の中に俺ではないものが入ってるっていう、不思議な感覚だ。
「ふふ。グレン様のナカ……きつくて、温かくて、可愛らしいですね」
「可愛くはないだろ……っ」
たぶんツッコむべきはそこじゃないけど、こんなことしか言えない。頭がすっかり沸騰していて、上手く回らないのだ。
ゆっくり、ゆっくり、馴染ませるように指が動かされる。
「ここに、僕のが入るんですよ」
と、マシュが言うので……つい、そっちに視線が行ってしまう。
シャワールームの時は後ろからだったから、そこまで見ていられなかったけど……正面から見比べると、マシュのモノは結構な質量がある気がする。えっこれ……入る? 本当に?
「入るんですよ?」
「わ、分かったって……」
念を押された。何が何でも成功させるという、確固たる意思を感じる。
……まあでも、そうだよな。こんな二人きりの夜、そうそうあるものじゃないんだから。
「――……」
素肌に触れるシーツのくすぐったさとか、暗がりに浮かぶ裸身のシルエットとか、マシュの優しい体温とか。恥ずかしさや戸惑いで塗りつぶさないで……この『初めて』だらけの時間を、噛みしめていたいと思った。
コンコン、とドアが叩かれる音に、俺は思わず居住まいを正した。
――約束の週末、の夜だ。
部屋に入ってきたマシュが、どう見ても冷静ではない面持ちの俺を見て、くすりと笑う。
「ふふっ。もう緊張してるんですか?」
「するだろ、そりゃ……」
前世でも全くの未経験なんだから。しかも俺が抱かれる側(暫定)なんて、想像したこともなかったのに。
これから俺を抱く相手に、どう接すればいいんだよ。なんか……こう……甘い雰囲気とか作らないといけないのか? どうやって?
余計なことばかり考えてしまう俺の隣に、マシュがそっと腰を下ろす。
「まあでも、僕もあなたが初めてなので。おあいこですよ」
「……落ち着き払ってるくせに」
「それは、まあ……何度も妄想してきたことですからねぇ」
そう言いながら、マシュの手が俺の髪を撫でる。ドールの髪を梳くように、それはそれは優しい手つきで。
「あなたを僕のものにしたくて、たまりませんでした」
「っ……」
「ねぇ、グレン様。今日は、僕だけのものになってくれますか?」
その瞳が、俺を正面から捉える。
どろりとした熱を孕んだ視線が、俺に注がれている。
「僕だけを見て、僕だけを感じてくれますか?」
……訂正。落ち着き払ってるなんて嘘だ。
マシュだってドキドキしてる。『初めて』を前に、胸を高鳴らせている。
なんだ、俺と同じじゃないか。
「……ん」
俺は、小さく頷いた。
どう進めれば良いものかと心配していたが、そこはマシュがさりげなくリードしてくれた。
とりとめのない会話に始まって、やがて手を重ねて、キスを交わして――それから、服を脱いでベッドに上がった。暗くなった部屋の中で、二つの裸体がそっと重なり合う。
「んむ……」
舌を入れられるキスは、まだ慣れない。ひたすらマシュにされるがままだ。
でも口の中をゆるゆると擦られるのは、わりと気持ち良くて好きだったりする。
「……身体、触ってもいいですか? グレン様」
「ん……いいよ」
頬に触れるマシュの手の温もりに目を細めながら、俺は許可を出す。
それから……身体を順に降りていくように、愛撫が始まった。
「はぁ……グレン様……」
つうっと肌を撫でる指先。至る所に落とされる唇。
くすぐったくて、でもどこか心地良くて、ぴくんと身体が震える。
首筋から、胸に、腹部に……一つ一つを確かめるように、肌と肌を合わせていく。
「全部可愛いし、全部綺麗ですね」
「う……止めろって、そんなところ……」
終いには太腿の裏側に恭しくキスをされて、何とも恥ずかしい気分になった。俺からも見えないような場所なのに。
風呂場で念入りに洗ってきたとはいえ、ここまで丁寧に体中を検分されるとは思ってもみなかった。どういう顔をすればいいのかさっぱり分からない。
「あぁ、でも……次は、僕にも手伝わせてくれませんか? 隅々まで磨いて差し上げますから」
「それはちょっと……」
「え~?」
え~じゃない。なんでその一押しで行けそうだと思うんだ。俺はそんなんじゃ折れてやらないからな。
なんて考えていると……その指先が遂に、足の間の秘所へと滑らされた。
「ここも、ちゃんと準備してきてくださったんですね」
「あ、っ」
「僕のために、こんな場所を」
完全に油断していたタイミングだったので、思わず声が漏れてしまった。
縁をくるくると撫でてから……つぷ、とその指が中に侵入してくる。
「んんっ……」
準備のために自分で触った場所のはずだが……他人に触られると、感覚が全然違う。いや気持ち良いとかでもないんだけど。俺の中に俺ではないものが入ってるっていう、不思議な感覚だ。
「ふふ。グレン様のナカ……きつくて、温かくて、可愛らしいですね」
「可愛くはないだろ……っ」
たぶんツッコむべきはそこじゃないけど、こんなことしか言えない。頭がすっかり沸騰していて、上手く回らないのだ。
ゆっくり、ゆっくり、馴染ませるように指が動かされる。
「ここに、僕のが入るんですよ」
と、マシュが言うので……つい、そっちに視線が行ってしまう。
シャワールームの時は後ろからだったから、そこまで見ていられなかったけど……正面から見比べると、マシュのモノは結構な質量がある気がする。えっこれ……入る? 本当に?
「入るんですよ?」
「わ、分かったって……」
念を押された。何が何でも成功させるという、確固たる意思を感じる。
……まあでも、そうだよな。こんな二人きりの夜、そうそうあるものじゃないんだから。
「――……」
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