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第2章 異世界の始まり
第七話『言葉』
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夜。
机に伏せたままのカイルは、勉強の疲れからか小さな寝息を立てていた。
毛布をそっと掛けてやると、ハルトは静かに本を閉じる。
――その時、扉が開く音がした。
「ただいま」
帰ってきたのはエリナだった。
鎧の擦れる音を響かせながら、ほっとした表情で家に入ってくる。
ハルトは一瞬迷ったが、口を開いた。
「……おかえり」
その瞬間、エリナの足が止まった。
「えっ……!? しゃ、喋った!?」
大きく目を見開き、ハルトを凝視する。
「……言葉、覚えた」
拙いながらも、ハルトは確かに言葉でそう答えた。
エリナは唖然としたまま口を開けていたが、次の瞬間、驚きが言葉となって溢れた。
「いくらなんでも早すぎ……」
言いかけて、彼女の視線は寝ているカイルに向いた。
「えっ……ちょ、ちょっと待って! その子……誰!?」
その声は家の外にまで響いたのだろう。
防具を脱いでいたアレンとダリオが慌てて飛び込んでくる。
アレンとダリオは寝ているカイルを見て、顔色を変えた。
「お、おい……服ボロボロじゃねぇか!」
「怪我は!? 大丈夫なの!?」
エリナも慌ててカイルに駆け寄り、振り返ってハルトに詰め寄る。
「ねえ! どういうこと!? ハルト、この子をどこで……!?」
三人に一気に囲まれ、ハルトは固まった。
頭をフル回転させるが、言葉のストックはまだ少ない。
何をどう説明していいのか、まったく浮かばない。
「え、えっと……」
焦るあまり、ハルトの口から出てきたのは――
「オレ、コトバ、ワカンナイ」
……場が一瞬凍りついた。
エリナ「……いや今、喋ったじゃん!」
アレン「完全に会話してんぞ!?」
ダリオ「それ言い訳のボキャブラリーだけ妙に増えてない!?」
三方向から同時にツッコミが飛んでくる。
ハルトは頭を抱えて「ち、ちがう……!」と弁解しようとするが、またも語彙不足で撃沈した。
その騒がしさに――
「……んん……」
ベッドの上でカイルが目を擦りながら起き上がった。
「……? なんでこんなにうるさいの?」
(※もちろん現地語なのでハルト以外はちゃんと理解)
三人が「大丈夫!?」と駆け寄る中、ハルトは待ってましたと言わんばかりに振り返り――
「カイル! オレ、コトバ、ワカンナイ! オマエ、セツメイ!」
丸投げ。完全なる責任転嫁。
エリナ「人任せかぁぁぁ!?」
アレン「説明義務を子どもに押しつけるな!」
ダリオ「説明放棄すんな!」
ツッコミ三連撃をくらって、ハルトは肩をすくめるしかなかった。
カイルは、ハルトに促されるように三人の前に座った。
まだ幼い声ながらも、ゆっくりと言葉を選びながら話し始める。
「……僕、男の人に連れていかれて……」
小さな拳が膝の上でぎゅっと握られる。
「怖くて……でも、この人(ハルト)が来て……助けてくれたんだ」
エリナたちは真剣な面持ちで耳を傾けていた。
アレンが低く息を吐き、ダリオも腕を組んでうなずく。
「なるほど……それで服もボロボロだったのか」
「だからハルトは説明できなかったのね。言葉もまだ不自由だし……」
エリナの視線が少し柔らかくなる。
一通り話を聞いた後、エリナはカイルに優しく問いかけた。
「……カイル、あなたのお家には帰らないの?」
一瞬、カイルは俯いた。
けれど、やがて顔を上げ、震える声で言った。
「……帰れない。僕……両親に、あの人に売られたんだ」
エリナたちの表情が一斉に強張った。
その言葉の重さに、部屋の空気が一気に冷え込んだ。
エリナ、アレン、ダリオの三人は顔を見合わせ、やがて小さな声で話し合いを始める。
「……でも、私たちには二人も養い続ける余裕なんてないわ」
エリナが苦しそうに言うと、アレンも頷いた。
「そうだな。二人をずっと面倒見るなんて無理だ」
「俺も同じ意見だ」ダリオが短く答える。
その言葉に、ハルトは眉を寄せた。
「三人、仕事、何?」
唐突な質問に三人は目を瞬かせたが、エリナが答えた。
「私たちは“冒険者”。三人でパーティーを組んで、依頼を受けて生計を立ててるの」
「冒険者……」
ハルトはその言葉を繰り返し、少しの沈黙の後に口を開いた。
「俺も……入りたい」
三人の目が一斉に大きく開かれる。
「はあっ!?」
「お前、何言ってんだ!」
「素人が簡単に首を突っ込んでいい仕事じゃないぞ!」
アレンが声を荒げ、ダリオも真剣な表情で続ける。
「冒険者は命懸けだ。危険に遭えば死ぬかもしれない。それを理解してないやつに任せられるわけがない」
エリナも険しい顔で首を振った。
「……あなたには無理よ。断るわ」
三人の反対を聞き終えると、ハルトはしばらく黙り込んだ。
やがて、ゆっくりと口を開く。
ハルトは続けた。
「なら……俺が家、出る。カイル……三人、お願い。」
エリナが目を丸くする。
「ちょっと……あなた、何を言ってるの?」
アレンは一言だけ短く告げた。
「……死ぬぞ」
だが、ハルトは目を逸らさずにアレンを見返し、静かに、しかしはっきりと告げた。
「……死なない。三人が教えてくれたら、俺は死なない」
その断言には不思議な迫力があり、三人は一瞬、言葉を失った。
「それでも無理だって言ってんの!」
「バカ言え! お前みたいな素人が一人で冒険者だと? 不可能だな」
エリナとダリオが同時に首を振る。
その結論に、場の空気は重く沈んだ。
だが、アレンが手を上げてその場を収めるように言った。
「……わかった。詳しいことは明日話そう」
短く、それでいて強い声音だった。
エリナとダリオは顔を見合わせ、従うように頷いた。
「さぁ、メシだメシ!」とダリオが空気を切り替えるように声を張る。
「作るのは私でしょ!」とエリナがすかさずツッコミを入れ、二人のやりとりに場が少し和んだ。
机に伏せたままのカイルは、勉強の疲れからか小さな寝息を立てていた。
毛布をそっと掛けてやると、ハルトは静かに本を閉じる。
――その時、扉が開く音がした。
「ただいま」
帰ってきたのはエリナだった。
鎧の擦れる音を響かせながら、ほっとした表情で家に入ってくる。
ハルトは一瞬迷ったが、口を開いた。
「……おかえり」
その瞬間、エリナの足が止まった。
「えっ……!? しゃ、喋った!?」
大きく目を見開き、ハルトを凝視する。
「……言葉、覚えた」
拙いながらも、ハルトは確かに言葉でそう答えた。
エリナは唖然としたまま口を開けていたが、次の瞬間、驚きが言葉となって溢れた。
「いくらなんでも早すぎ……」
言いかけて、彼女の視線は寝ているカイルに向いた。
「えっ……ちょ、ちょっと待って! その子……誰!?」
その声は家の外にまで響いたのだろう。
防具を脱いでいたアレンとダリオが慌てて飛び込んでくる。
アレンとダリオは寝ているカイルを見て、顔色を変えた。
「お、おい……服ボロボロじゃねぇか!」
「怪我は!? 大丈夫なの!?」
エリナも慌ててカイルに駆け寄り、振り返ってハルトに詰め寄る。
「ねえ! どういうこと!? ハルト、この子をどこで……!?」
三人に一気に囲まれ、ハルトは固まった。
頭をフル回転させるが、言葉のストックはまだ少ない。
何をどう説明していいのか、まったく浮かばない。
「え、えっと……」
焦るあまり、ハルトの口から出てきたのは――
「オレ、コトバ、ワカンナイ」
……場が一瞬凍りついた。
エリナ「……いや今、喋ったじゃん!」
アレン「完全に会話してんぞ!?」
ダリオ「それ言い訳のボキャブラリーだけ妙に増えてない!?」
三方向から同時にツッコミが飛んでくる。
ハルトは頭を抱えて「ち、ちがう……!」と弁解しようとするが、またも語彙不足で撃沈した。
その騒がしさに――
「……んん……」
ベッドの上でカイルが目を擦りながら起き上がった。
「……? なんでこんなにうるさいの?」
(※もちろん現地語なのでハルト以外はちゃんと理解)
三人が「大丈夫!?」と駆け寄る中、ハルトは待ってましたと言わんばかりに振り返り――
「カイル! オレ、コトバ、ワカンナイ! オマエ、セツメイ!」
丸投げ。完全なる責任転嫁。
エリナ「人任せかぁぁぁ!?」
アレン「説明義務を子どもに押しつけるな!」
ダリオ「説明放棄すんな!」
ツッコミ三連撃をくらって、ハルトは肩をすくめるしかなかった。
カイルは、ハルトに促されるように三人の前に座った。
まだ幼い声ながらも、ゆっくりと言葉を選びながら話し始める。
「……僕、男の人に連れていかれて……」
小さな拳が膝の上でぎゅっと握られる。
「怖くて……でも、この人(ハルト)が来て……助けてくれたんだ」
エリナたちは真剣な面持ちで耳を傾けていた。
アレンが低く息を吐き、ダリオも腕を組んでうなずく。
「なるほど……それで服もボロボロだったのか」
「だからハルトは説明できなかったのね。言葉もまだ不自由だし……」
エリナの視線が少し柔らかくなる。
一通り話を聞いた後、エリナはカイルに優しく問いかけた。
「……カイル、あなたのお家には帰らないの?」
一瞬、カイルは俯いた。
けれど、やがて顔を上げ、震える声で言った。
「……帰れない。僕……両親に、あの人に売られたんだ」
エリナたちの表情が一斉に強張った。
その言葉の重さに、部屋の空気が一気に冷え込んだ。
エリナ、アレン、ダリオの三人は顔を見合わせ、やがて小さな声で話し合いを始める。
「……でも、私たちには二人も養い続ける余裕なんてないわ」
エリナが苦しそうに言うと、アレンも頷いた。
「そうだな。二人をずっと面倒見るなんて無理だ」
「俺も同じ意見だ」ダリオが短く答える。
その言葉に、ハルトは眉を寄せた。
「三人、仕事、何?」
唐突な質問に三人は目を瞬かせたが、エリナが答えた。
「私たちは“冒険者”。三人でパーティーを組んで、依頼を受けて生計を立ててるの」
「冒険者……」
ハルトはその言葉を繰り返し、少しの沈黙の後に口を開いた。
「俺も……入りたい」
三人の目が一斉に大きく開かれる。
「はあっ!?」
「お前、何言ってんだ!」
「素人が簡単に首を突っ込んでいい仕事じゃないぞ!」
アレンが声を荒げ、ダリオも真剣な表情で続ける。
「冒険者は命懸けだ。危険に遭えば死ぬかもしれない。それを理解してないやつに任せられるわけがない」
エリナも険しい顔で首を振った。
「……あなたには無理よ。断るわ」
三人の反対を聞き終えると、ハルトはしばらく黙り込んだ。
やがて、ゆっくりと口を開く。
ハルトは続けた。
「なら……俺が家、出る。カイル……三人、お願い。」
エリナが目を丸くする。
「ちょっと……あなた、何を言ってるの?」
アレンは一言だけ短く告げた。
「……死ぬぞ」
だが、ハルトは目を逸らさずにアレンを見返し、静かに、しかしはっきりと告げた。
「……死なない。三人が教えてくれたら、俺は死なない」
その断言には不思議な迫力があり、三人は一瞬、言葉を失った。
「それでも無理だって言ってんの!」
「バカ言え! お前みたいな素人が一人で冒険者だと? 不可能だな」
エリナとダリオが同時に首を振る。
その結論に、場の空気は重く沈んだ。
だが、アレンが手を上げてその場を収めるように言った。
「……わかった。詳しいことは明日話そう」
短く、それでいて強い声音だった。
エリナとダリオは顔を見合わせ、従うように頷いた。
「さぁ、メシだメシ!」とダリオが空気を切り替えるように声を張る。
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