完璧地球人は魔法無しで異世界を救う

前方に瓜

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第5章『魔法都市マギステリア』

第二十六話『世界一の爆炎魔法』

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巨大な門扉をたたく音「すいませーん。魔力認証が壊れててそちらから開けられませんか?」

門扉の向こう側から、落ち着いた女の声が響いた。

「すまない。こちら側も魔力認証が作動していない。今からこの門扉を破壊する。申し訳ないが、そこを離れていてくれ」

白魔道士はぽかんと口を開ける。

「これを……? どうやって? いや、無理でしょ……」

小声で漏らしたつもりが――

「無理じゃない。この門扉を爆破させる。危ないから、本当に離れていてくれ」

「え、聞こえるの!? 耳よすぎじゃん……怖っ」

そんな彼女のつぶやきをよそに、門の内側では上級国民たちが騒いでいた。

「我々に爆炎魔法を使えというのか。無理だ。爆炎魔法自体が高騰技術。魔力も膨大に必要になる。平民は打つことすらもできない。これだから魔力弱者は…」

「誰が爆炎魔法を使えって言いました? 上級国民さん?」

ハルトの淡々とした声が割って入る。

「どういうことだ」

「だから――今からみんなで作るんですよ。世界で一番の爆炎魔法を」

さらりと笑いながら、ハルトは取り出した魔法陣の紙にペンを走らせ始める。

上級国民は眉をしかめた。

「見たことのない魔法陣だ……」

「だから言ってるじゃないですか。今、作ってるんですよ。魔法を」

「失敗したらどうする。死ぬじゃないか!」

「言いすぎですよ。ちょっと重めの火傷程度ですよ」

「そんなものに協力できるか!」

ハルトは顔だけ上げ、静かに言い放つ。

「ならどうします?
この“開くことのない門扉”の前で、魔法の効かない反乱軍に殺されるのを待つか。
――それとも火傷覚悟で、世界で一番の爆炎魔法を撃つか」

重い沈黙。やがて上級国民は舌打ちする。

「……失敗したら必ずお前を殺してやる」

「上級国民さんは怖いですねぇ。――はい、できました!」

ハルトは完成した魔法陣を配り始めた。

「この紙を一人一枚持ってください。門扉に向けて構えて。合図で全力の炎魔法を同時に撃つ。いいですか?」

「くそ……魔力弱者の言うことを聞く時が来るとはな」

ハルトは深く息を吸い――

「放て!」

──その刹那。

門の外では白魔道士が距離を取りながら首をかしげていた。

「離れてろって……どのくらい? このへんでいいかな……?」

次の瞬間、世界が震えた。

凄まじい衝撃。爆風が空気をえぐり、砂塵が舞い上がる。

白魔道士は思考を奪われたように呆然と立ち尽くした。

――門扉は跡形もなく吹き飛び、百メートル先の地面が巨大な火柱を上げていた。

爆心地を見つめる平民たちと上級国民たちは――

「……」

しばし、言葉を失って立ち尽くした。

十秒後。

「「……っ!!」」

歓声が一斉に爆発し、平民も上級国民も抱き合って歓喜し始めた。

「私、あんな大きな炎魔法撃ったの初めて……! すごい……!」

「私もだ。間違いなく世界で一番の魔法だ……!」

興奮する彼らの視線が、一斉にハルトに向けられる。

平民の一人が駆け寄ってきた。

「ありがとう、兄ちゃん! あんた名前は?」

「ハルトです」

「おーい! こいつ、ハルトって名前だってよ!」

「ありがとうハルト!」「すげえぞハルト!」「お前のおかげで生き延びた!」

上級国民すら目を丸くする。

「本当にすごいぞハルト。……だが魔力弱者がどうやってこんな魔法を知っている?」

「いやぁ、好きで独学で勉強してまして。やったことはなかったですけど、できそうだなぁと思って……」

「上級国民じゃなくても、これだけの魔法を使えるってわかったら……俺も魔法もっと勉強しようかと思ったぜ!」

ハルトは手を軽く振る。

「まぁまぁ、話はそこまで。急いで逃げてください。行ってください」

そう言うと、平民の一人が振り返った。

「おい兄ちゃん、あんたはどうするんだ?」

「俺は……この反乱を止めていきます」

上級国民は鼻で笑う。

「ははっ。いくらお前がすごい奴でも、たった一人でこの規模の反乱を阻止できたら、この国の英雄になれるわ。悪いことは言わない、逃げろ。死ぬぞ。……まあ魔力弱者が一人死のうと、我々には関係ないが」

「お前……まだそんなこと言うか!」

平民が胸ぐらをつかみかかる。

だがハルトは笑った。

「はは。心配してくれてありがとう。でも――俺は死なないよ」

その目はまっすぐだった。

そこへ、凛とした声が割り込む。

「私が、死なせません」

ハルトが振り向く。

「……あんたは?」

「門の外にいました。リヴィアと言います。白魔道士です」

「どうも、ハルトです。一応冒険者です」

「私も冒険者です。ランクは4です」

そこへ平民が叫んだ。

「おいあんた! 白魔道士だろ! こいつを治してくれ!」

上級国民に焼かれた平民が横たわっている。

ハルトとリヴィアが駆け寄る。

リヴィアはすぐに手をかざした。

「……ひどいやけど。これは時間がかかるかも」

「まず服を脱がそう」

「服!? 服なんか脱がしてどうするんだ!」

ハルトは服を外しながら短く言った。

「いいから脱がすんだ。治癒魔法に全部任せちゃダメなんだよ」

(この世界は医療知識がほぼゼロだ。すべて治癒魔法に頼るせいで、回復効率が酷く落ちている)

「服を脱がせたら――水魔法で体全体を薄く覆って」

「わ、わかった!」

「リヴィア、そこに治癒魔法を重ねて」

「了解!」

淡い光が傷口を包む。
リヴィアは目を見張った。

「……すごい。さっきよりずっと治りが早い……!」

ハルトは心の中でうなずく。

(やっぱりだ。応急処置をしただけで治癒魔法の効きが格段に良くなる)

「よし……一通り終わったわ」

平民は深く頭を下げた。

「ありがとう……後は俺らでやるよ」

ハルトは立ち上がり、リヴィアを見る。

「リヴィア、行こう」

「ええ……急ぎましょう」

二人は魔法省へ向けて、夜の街を駆け出した――。
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