完璧地球人は魔法無しで異世界を救う

前方に瓜

文字の大きさ
48 / 60
第8章『最大都市アルディナ帝国』

第四十九話『注目』

しおりを挟む
「ハルトさん。次はどこへ行くんですか?」
歩きながら問いかけてきたリヴィアに、ハルトは少し先を見据えて答えた。
「アルディナ帝国に行こうと思う」
「いいですね」
「冒険者ランクを上げたくてな」

その言葉に、ルドが感慨深そうに笑う。
「ハルトも、とうとうランク6かぁ」
「まだわからないけどな」
「いや、ハルトならなれると思うぜ」

ハルトは少し間を置いてから、続けた。
「それに、ルドのランクも上げたくてな」
「俺も、とうとうランク4かぁ」
「実力だけならランク5でもおかしくない。ただ、魔力量と状況に応じた錬金が、もう一段あればな。このままいけば来年にはランク5だ。まぁ少なくとも、もうランク3の実力は超えてる」

「リヴィアに追いつくのも時間の問題だな」
そう言われて、リヴィアは少し胸を張る。
「そのころには、私はランク6になってますよ」

ハルトは苦笑しながら首を振った。
「白魔導士はサポート役だから、冒険者ランクが上がりにくいし、評価もされにくい。実際、白魔導士が入ってるパーティーは少ない。軽い回復魔法なら誰でも使えるし、ポーションもあるからな」

「じゃあ、どうしたらいいんですか?」
「リヴィアは他の白魔導士より、使える術のレパートリーが多いし、魔力量も多い。正直、リヴィアがいなければ、俺はここまで強くなれてない。……まあ、いずれにしても、ランクにとらわれないことだ」
「……なんか、複雑です」

「戦闘は接近戦がハルト、遠距離は俺って感じだよな?」
ルドが軽く肩を回す。

「ああ。そうだな。それ以外のサポートは頼むぞ、リヴィア」

そう言われて、リヴィアは少し照れながら言った。
「もう……仕方ないですね。これからも、私についてきなさい!」
「なんでリヴィアがリーダーみたいになってんだよ」
そんなやり取りをしながら、三人は歩いていく。
舞台は、光の栄光と秩序の国――アルディナ帝国へと移る。


アルディナ帝国――ついにその広大な領土に足を踏み入れた。

高くそびえる城壁、石畳に反射する太陽、どこまでも続く街並み。その壮麗さに、思わず足が止まる。

街角からは商人や兵士の声が混ざり合い、帝国全体が呼吸しているかのようだった。威圧的な美しさと、その裏に潜む冷たい秩序の気配に、胸がわずかに高鳴る。     

リヴィアは目を輝かせて言った。
「ここが世界最大の国、アルディナ帝国! 一度来てみたかったんですよねぇ」

「そうだな。でもまずはギルドだ」
ハルトは景色から視線を切り、現実に引き戻すように続ける。

「ここに来た理由はそれだろ」
ルドも頷き、地図を片手に道を探った。

石畳の広場を抜け、商店や人々の賑わいを横目に進んでいくと、街の中心に目的の建物が見えてくる。

威厳ある石造りの建物。その大きな扉には「冒険者ギルド」の文字が刻まれていた。

入口の前では冒険者たちが行き交い、軽く挨拶を交わしている。
街の喧騒とは少し異なる、落ち着いた活気。

ここが、数多の冒険者たちの拠点であり、情報と任務が集まる場所なのだ。

ハルトはひとつ深呼吸をして、扉に手をかけた。
「よし、行くぞ」

ルドとリヴィアも続き、三人はギルドの中へ足を踏み入れた。

中は想像以上の活気に満ちていた。広いホールにはさまざまな冒険者が集まり、武器の手入れをする者、次の依頼について話し合う者の姿がある。

掲示板には、新しい依頼書が隙間なく貼られていた。

三人はそのままカウンターへ向かう。

受付の女性は慣れた手つきで書類を整理しながら、ちらりと三人を見て軽く告げた。
「ランク5が二人と、ランク3が一人ね。まずは掲示板を確認して、気になる依頼を選ぶといいわ」

その言葉に、近くにいた冒険者たちの間でひそひそと声が交わされる。
「ランク5……? あんな若いやつが?」

空気が、わずかに変わった。
「いや、田舎のギルドだから算定が低いのかも……」
「それでもランク5だぞ」
「あんな小さな子供も連れてる」
「見慣れない武器を持っているな」
周囲のひそひそ声を背に、ハルトは静かに掲示板へ視線を向けていた。

アルディナで初めてのギルド。緊張と期待が入り混じる中でも、その表情は変わらない。

しばらくして、ハルトは一枚の依頼書に手を伸ばし、再び受付へ向かった。
「これにしよう」

指さしたのは、森の奥に潜む魔獣の討伐依頼。
危険度は高く、通常ならランク5でも慎重になる案件だった。

受付の女性は書類を置き、ゆっくりと顔を上げる。
「……これ、ランク5でも簡単な依頼じゃないわよ。油断すれば命に関わることもある」

その声は自然と周囲に届き、冒険者たちのざわめきが広がった。
「心配してくれてありがとうございます。大丈夫です」

あまりに落ち着いた返答に、受付は一瞬言葉を失い、結局は書類を手渡すしかなかった。

翌日。

報告に戻ってきた三人は、疲労らしい疲労も見せず、依頼を完璧に成功させていた。

「一晩でやり遂げたのか……」
「うそだろ……もう終わったのか?」
「ランク5で、あんなにあっさり……」
ギルド内には驚きの声が広がり、受付の女性も思わず苦笑いを浮かべる。

初めてのギルドで、しかも重めの依頼を軽々と成し遂げた三人。
その瞬間、周囲の見る目がはっきりと変わった。

それからも三人は、依頼を次々とこなしていった。
魔物討伐、護衛、探索。
どれも容易な仕事ではなかったが、互いに補い合い、安定して成果を出し続ける。

やがて、ギルド内では自然と噂が広がっていった。
「また、あの三人が依頼を終えたらしい」
「ランク5で、あそこまでやれるとはな」
以前なら埋もれていた存在は、いつしか冒険者たちの注目を集める存在へと変わっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

処理中です...