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第二話「宗教勧誘にご用心」

2-1 彩芽side

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「んん……なんか重っ……」

 寝起きで開かない目が役に立たないので手探りで布団の中を探ってみる。確実に彩香の頭があるのは分かった。お腹の辺りに柔らかいものが当たっている……。

「……」

 ゆっくりと目を開けながら布団を半分くらいひっくり返すと、私の胸を枕にして寝ている彩香が居た。

「お姉ちゃん……重いって……」

 うぅ……寝起きで声があんまり出ない……。

「彩香ー……」

 寝ぼけながらも彩香の頭をぽんぽん触ってみる。

「彩芽ぇ……ぐっじょぶ~……」

 むにゃむにゃと寝言を言う彩香に呆れて一旦天井を見つめると、少しずつ目が覚めてきた。
 くそ……相変わらずの爆乳が……。居乳にまな板の上で寝られるって皮肉過ぎるでしょ……。

「もー彩香……どいてってばー……」

 頭を押しのけようと試みたけど寝起きで力が出ない……。

「もちょっとだけー……ムフフ……」

 ニヤけながら顔を胸にこすり付けてくる……もしも彩香じゃない居乳にこんなことされたら惨めで死ぬ……。

「彩香、もしかして起きてる?」
「寝てるもーん……」

 起きてるのね……。
 もう一度目を瞑ってため息をつく。

「はぁ……ぺたんこで寝ても何も良くないでしょ……ハッ……」

 自分で言ってしまった……自分から言ってしまったよぉ……。

「彩芽」
「なに……」

 彩香の方に視線を向けると、グーサインをしながらこちらを見つめていた。

「ぺたんこだから良いんだよ! これが堪らんのじゃ」

 胸にこすり付けられる彩香の頬。

「はぁ……」

 ため息しか出ない……。

「……」

 変な時間に起きちゃったかな、今何時だろ。あ、ゲームのログインボーナス貰わなきゃ。

「よこしょ……」
「ムフフ……」

 いやらしくニヤけている彩香を無視し、枕元に置いていたスマホを鷲掴みして天井を向いている自分の目線まで持ち上げる。

「五時……十六分……早すぎでしょ……」

 変な時間に起こされてしまった……。

「ふぅ……」

 もう大学入ってから一週間かぁ。結局お姉ちゃん以外に友達も出来なさそうだし、しばらくの間はアニメとゲームで時間潰すかぁ。

 そういえばあの人どうしてるんだろう。あれ以来会ってないなぁ。変態紳士のワードを知ってたから多分オタクなんだろうな。話したら意外と盛り上がったりするのかなぁ。

「……うっ」

 なんであいつの事を考えてるんだ私……。今はそれよりも目の前の姉をどうにかしないと……でかいのが重くて仕方ない……。「その胸、半分でもいいから頂戴よ……」なんて言うと調子に乗るので絶対に言わない。

「お姉ちゃん、寝れないからどいてくれない?」

 胸元で気持ちよさそうに寝る彩香に問いかけてみるも、反応はいつもと変わらない。

「なんで……そんなこと言うの……」

 涙目で毎回こうして聞き返してくる……。

「もー……隣で寝るだけなら別にいいから……」

 携帯を元の位置に戻して再び布団をかけ直す。温かい……。

「分かったー!」

 はにかむ笑顔で彩香は言うと布団の中でゴソゴソ動いて私の顔の隣で寝息を立て始めた。

「ちょ……足……腕まで……彩香っ……動けん……」
「すー……すー……」
「寝るの早っ!」

 こっちは足絡められて身動きがとれないってのに……胸元にも腕を回されて……私ただの抱き枕になっちゃってるじゃんか。

「すー……すー……」

 横目でチラッと確認しても既に寝息を立てている。
 う、うん、気にしちゃダメだ……。気にせず寝よう。

「……」

 締め付けと乳圧が気になって寝れない……。柔らかい……柔らかすぎるんだよっ。あれか、いわゆる「当ててんのよ」ってやつか……ぺたんこに向かってなんて罰当たりな乳なんだ……。

 あー、別のこと考えるんだ私……。

 今日は一限目から講義で必修科目の英語……。あんまり得意じゃないんだよなぁ。

「すー……すー……」

 くそーっ、こっちが眠れないってのにすやすや寝やがってぇ……。
 ごつんと頭を彩香のおでこにぶつける。

「起きた?」
「いったーい……けど起きてない……」

 目を瞑ったまま痛みと笑顔が混ざって複雑な表情を浮かべる彩香。

「いや、起きてるでしょ……」
「起きてないもーん……」
「ちょっと身動きとれないからもうちょっと優しく」
「ムッフッフー……」

 何か知らないけどご満悦なようで……。

「もー寝れないぃいいいい!」

 身をよじって脱出を試みるが、頑張ってあがいても彩香のがっしりホールドからは抜け出せなかった……。

「ムッフッフー」

 相変わらずニヤける彩香。もう、寝起きでしんどい……朝から無駄な体力を使ってしまった。
 疲れたので嫌味を込めて彩香に呟く。

「朝から随分と楽しそうね……」
「うん」

 目は開けずににんまりとした顔で頷く彩香。

「……これが一番落ち着くもん」
「……」

 優しげに呟いた彩香の顔を見てしまったらもう何も言えなかった。いつもは嫌がらせばっかりする癖に、こうやって微笑む時だけはお母さんに似てるからズルい……。

「むぅ……」
「あれ、諦めたの?」
「知らないっ……」

 抵抗が無くてつまらないのか、物足りなさそうな感じで問いかけてくる彩香に、私は面倒臭いのと恥ずかしいのが混じった返事を返した。
 そんなこと言われたら何も言い返せないってば……。

「フッフッフ……私の勝ちだな」
「はいはい……」

 結局眠れないまま、スマホのゲームを適当に複数スタミナが無くなるまでやり続けた。
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