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第一話「面倒なパーティ」

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「まったくもう……どうして男の人はこうもえっちなとこばっか見てくるかなぁ……」

 ビオリスがゴーレム討伐時を振り返る手前、頬をぷくっと膨らませたマリアが呟く。

 胸を両手で隠しながらのマリア。

 ビオリスは率直な感想を口に口にする。

「まぁ、それは生まれ持った武器だから大切にしろよ」

 むにゅっ。

「なにゃっ……!」

 小さい見た目に可愛さと巨乳のバランス、それに加えて獣人というおまけ付き。

 あどけなさも相まって彼女の人気は計り知れないものがある。

 そんな彼女の胸を指で確認するビオリス。

「夜道に気を付けてな」
「あーもう! そうやって子ども扱いばっかり!」

 怒ったマリアがビオリスの胸をポカポカと叩く。

「おい、やめろやめろ……」

 この時、無意識の内にマリアの胸が交互に当たっていることを、ビオリスは黙って見過ごしていた。

 ぽよん、ぽよんと優しく当たる胸。その素晴らしい弾力を体で味わっていたビオリス。

「もうっ……とーにーかーくー!」

 マリアは腰に手を当てて大げさに口動かす。

「ん?」
「はぁ……、今日は助けてくれたから私のおごりでいいよ……」
「悪いな」
「そんなこと思ってもないくせに……」

 ジト目で的を射た言葉を吐くマリアに、ビオリスが顔を背けた。

「ごほん……」

 その様子にふふっと口元に手を添えて笑うマリア。

「とにかく、また酒場に寄ってね!」

 マリアが後ろ手を組みながら、にっこりと可愛らしい笑みを向ける。

 やはり、無意識に向けられる透けた胸。

「今度来たときはちょっとだけサービスするからー!」

 身をひるがえして笑顔で去ろうとするマリア。

「……」

 ふわりと浮かんだ給仕服の白と黒の配色が見事なスカート。その下からはピンク色のパンツがビオリスの目に映っていた。

「あ、ああ……」

 パンツに釘付けにされていたビオリスが辛うじて手を振って見送る。

 暗い町に一人きり。

 石造りの町並み、灯りのともる家からは晩飯の良い香りが、ビオリスの鼻腔へと入り込んでいく。

 一発やらしてくれねぇかな……。

 あれは誘われているのかもしれないと、男が持つ特有の勘違いによりその場に立ち尽くすビオリス。

「はぁ……」

 己の浅はかな考えに首を横に振る。

「久しぶりに行くか……」

 大人の街、大人の遊び場。

 エアリエルを囲むように造られた町。その南西にあるのは――――

 ビオリスはそのまま、パーティの家ではなく、自身の家でもなく、歓楽街へと足を運んでいったのだった。
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