サトリ系男子の憂鬱な日々

とりのこ

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 付き合い始めてから1ヶ月が経とうとしている。付き合いはじめの頃のぼんやりとした好きという気持ちは今でははっきりと好きだと言えるくらいになっていた。
 俺よりも大きい身体の渋谷が好きだ好きだと懐いてくる姿がなんていうか、大型犬みたいでかわいいんだよな……。 
 でもあれから俺たちの関係に大きな変化があったかというと、さしてなかった。
 登校は流石に目立つから別だが、学校では一緒にいるし帰りも今まで通り俺が部活が終わるのを待って一緒に帰っている。休みの日も渋谷は部活あるし、空いた時間にちょろっと会うくらいだった。

 キスも…しょっちゅうしてはいるけど、軽く触れるくらいのものでそれ以上の所謂ディープキスっていうのはしてはいなかった。
 最初はそれでもすごく恥ずかしかったけど毎日してるとだんだん慣れてくるっていうか、今や挨拶みたいになってしまっている。まあ、嬉しいし、ドキドキするし、気持ちいいんだけどさ。

 付き合うってこういうもん?
 彼女がいたことがないし、周りの友達も彼女持ちがいても何して過ごしてるなんて詳細に聞いたりしないから正直よく分からない。
 今まで友達として過ごしてきたのとあんまり変わんないなぁ……と思う。
 渋谷はこれからどうしたいんだろ……このままでいいのかな。渋谷の心を読んでも両想い幸せ♡みたいなのばっかりで今後の進展を心配する気配はあんまりない。

 渋谷は付き合いだしたらもっとグイグイくるものだと思っていた。何か想像してたのと違うなぁともやもやするのは俺ばかりみたいだ。

「安達?何か考えごとか?」

 ボーッとしながら弁当を食べていると心配そうに顔を覗き込まれた。何やら話しかけていたみたいだが、俺が生返事で心ここにあらずって感じで心配したみたいだ。

 因みに弁当を食べる場所は中庭から屋上前の階段に場所を変えた。中庭は校舎から誰が見てるか分からないし、屋上は鍵が閉まってて誰もこないからイチャついても大丈夫って理由で。イチャつくって言ってもまぁ、軽くキスするくらいなんだけど。

「いや、……うん、少し考えごとしてた」
「何だ?悩みなら何でも聞くぞ」

 ……正直に言っていいものか。えっちなことしたいって誘ってるみたいだよな。でも、俺が動かないとずっとこのままなのかも。

「渋谷、ちゅーしよっか」
「な、何だいきなり。どうした?」
「いいから、目を瞑れって」

 俺から言い出すことがないからか、渋谷は動揺してはいるが内心はかなり喜んでいる。俺のいうことを聞いてちゃんと目を瞑って待っている。
 よし、やるぞ。

 渋谷の肩に手を置いていつもみたいに軽く口付けた。自分からするって結構恥ずかしい。
 顔を離して目を合わせると幸せそうに微笑むのがかわいいと思った。

(安達からしてもらうの、嬉しいな)

 そーいうの聞くと何回でもしてやりたくなるんだけど。
 ちゅっちゅと何回か繰り返し、いつもはそれで終わりだけど今日はちょっと進めたい。渋谷の唇をペロリと舐めると肩が跳ねて頭が離れようとしたから後頭部に手を回してそれを抑えた。

 ペロペロと唇を舐めたりはむはむと食んだりし続けた。これであってるのか分からないけどこれはこれで結構気持ちいい。夢中になっている間に俺は完全に渋谷に乗り上げて抱きついてしまっていた。

(!!?? ど、どうしたんだ!?急に、こんなっ!?)

 あ、やべ。ちょっと引かれたかな?
 がっついて引かれたかと顔を離すと渋谷が真っ赤な顔をしてプルプルと震えていた。

「ふはっ、渋谷。いつも俺のことかわいいとか言うけど、今のお前も充分かわいいよ」
「なっ、なんっ……!」
「俺も健全な男ですし?挨拶みたいなキスだけじゃちょっと物足りなくなってきたというか…………引いた?」

 引いたかと小首を傾げて尋ねると、赤い顔でブンブンと頭を横に振る。

「引いたりなんてしてない。むしろその……」
(堪らないんだが……)

 堪らないのか。良かった。

「安達、その…もっとしていいか?」
「聞くの?今更じゃね?」

 クスクス笑いながらキスすると、今度は渋谷に唇を舐められた。少し口を開けるとすぐさま舌が口内に入り込んでくる。
 ぬめぬめと熱い塊が口の中を縦横無尽に動き回る。

 ヤバい。これは気持ちいい。

 薄ら目を開けると、渋谷のギラギラした目と目があった。
 俺のキス顔、ずっと見てたのか。変態だな。

(安達、安達っ……。ああ…気持ちいい。歯止めが効かなくなりそうだからキスも最低限にしていたのに……考えないようにしていたのに……)

 考えないようにしてたのか。そりゃ俺には分かんないわ。
 でも、そういうのはどうでもよくなるくらい気持ちよくて渋谷とのキスに夢中になった。

 やっと唇が離れたのはどれくらい経ってからだろう。時間なんて本当は短かったかもしれないけど、二人とも初めてのディープキスで息がうまく出来なくてはぁはぁと息を乱していた。
 違和感は他にも感じる。下を見下ろすと、股間が痛いくらいに膨らんでズボンの布を押し上げていた。

「はぁ……ヤバ。勃っちゃった……。このくらいにしとかないと、次の授業行けないな」

 へらっと笑いかけると、渋谷は眉間に皺を寄せて険しい顔をした。

「安達……これ以上煽らないでくれないか」
「え、そんなつもりなかったけど。ごめん」
「いや…すまん。……俺も治りそうになくて」

 そう言われて渋谷の股間を見ると俺と同じ現象に襲われていた。そりゃそうか、気持ちよかったもんな。
 昼休みにするんじゃなかった。せめて放課後にすれば良かった……。
 うーん、どうしよう。ほっといて治るかなぁ。正直なところすぐにでも抜きたいんだけど……。

「渋谷、トイレ行くか」
「えっ!?」
「ほっといてもムズムズするだけだろ。トイレ行こう」

 一回抜けばスッキリするはずと渋谷の手を引っ張って近くのトイレに行こうと誘うと最初は戸惑っていた渋谷も時間が押してると言えばついてきてくれた。

(何で今日はこんなに大胆なんだ)とか思われてるけど、だって勃起したまま授業に出れないだろ。仕方ないじゃん。
 幸いトイレは誰もいなくて、これなら安心(?)して抜けるなと別の個室に入ろうとしたら、何故か渋谷は俺を個室に押し込んで自分も一緒に入って鍵を閉めた。

「え、何してんの。別々の個室で処理するんじゃないの?」
「……安達がすぐ近くでそんなことをしてると考えたら治るものも治らない」
「えぇ~……」
「お願いだから俺にさせてくれ」

 マジか。俺のを渋谷に触らせろと?

 渋谷はすでに俺を逃す気はないらしく軽く抱きしめながら首筋や耳にキスしてくる。

 確かに少し進展したいとは思ったけど、一気にここまでするつもりはなかったんだけど……。俺、もしかして選択間違った?


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