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先生
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しおりを挟む長い間、そうしていた。
時折、ひくりと体を震わしながら、唇を引き結んで握り込みすぎて強張ってしまった拳を開き、携帯を開いた。
カチ……カチ…
履歴から威の番号を探して通話ボタンを押す。
『葉!?』
呼び出し音は一瞬しか鳴らなかった。
ずっと、連絡を待っていたのだろうな…と思い、胸に痛みが走る。
『葉、ごめんな?着信すごいことになってなかったか?』
「…うん。…びっくりした」
『昨日全然連絡が取れなくて…何かあったのか?俺心配で…』
困ったかのような威の顔が脳裏に浮かぶ、こう言う声を出す時の威の仕草も、すべて分かる。
「なんで?」
『葉…?』
「威に心配なんかされなくても、小学生じゃないんだからいいだろ」
戸惑ったような間があり、威の感情を抑えたような声が聞こえて来る。
『…何があった?何かされてるのか?』
「着信、13件もあったね」
『ごめん、亜矢子との事がうまくいかなくて…話がしたかったんだ』
「迷惑」
『え?』
かしゃんと携帯を取り落とす音がして、威の声音が動揺していた。
「止めようよ。そう言うの、すげー迷惑」
『…何を…言ってるんだ…?』
「保健室でさ。ノリで言ったけど、好きとかさぁ…本気じゃないでしょ?オレもそうだし」
威が電話の向こうで取り乱すのが分かる。
『葉、今から会えないか?』
「無理。って言うかさ、もう関わらないでくれる?」
『…』
「威は幼馴染だけど、そこ止まりなんだよね。彼女と別れるからとか、重い事言われても困るよ」
一気にしゃべり、しゃくりが出ないようにゆっくりと息を吐き出す。
『葉っ!!』
大声にぎゅっと身をすくませると、玄関の方からカチャカチャと鍵を開ける音が響いてくる。
「ただいま、小田切?」
「お…お互いモトサヤでいいでしょ?ごめん、彼が戻ってきたんだ、切るね。じゃ、学校で」
何か言葉を紡ごうとした気配を感じたが、声が聞こえる前に通話を切った。
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