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しおりを挟むいつまでもしゃくり上げる葉人の背中を、光彦は辛抱強く繰り返し繰り返し優しく撫で続けた。
「っ…ぅ………なんでオレ…っ……あんなことされて…脅されなきゃ…ぅ…ならない…のかわかんな…っ…」
「…ごめんな……無理に聞いたな…」
誰に言うでもなく繰り返す葉人の言葉に、何度もうなずく。
やがて部屋の中に薄暗さが満ちる頃、泣き腫らした顔で葉人は顔を上げた。
「…ぅぅー……」
「すごい顔になってるぞ」
「…だっ…だって……ぅ…」
光彦は、落ち着いたとは言えまだ時折しゃくり上げる葉人に笑いかけ、何か食べたいものがあるか尋ねた。
「……うどん…食べたいです…」
「あったかい?冷たい?」
「…ぅ…あったかい…」
葉人の細い体を一度ぎゅっと抱き締めると、コンビニへと買い物に出掛けていった。
窓から、駐車場で車に乗り込む光彦に小さく手を振ると、こちらを見て微かに笑顔を作った。
「あっ……母さんに連絡…」
母に連絡を…と携帯を取り出すと、着信が何件も残っていた。
──威からの…
着信履歴を埋め尽くすその名前に、胸の痛みを感じて目を閉じ、自問自答する。
光彦に告げたことを、威に話せるか…?
「……………」
頼る頼らないや、信用するしないではなく、ただ威に知られたくなかった。
「………むりだ…」
ぐっと唇を噛み締めて母へのメールを送ると、携帯を放り投げてベッドへと倒れ込む。
鼻先を、微かに光彦の匂いがよぎったのに気づいて目を閉じた。
「………先生…まだかな…」
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